キイトスゲ Carex alterniflora  Franch.
 var. fulva  Ohwi
  山地・林床の植物 カヤツリグサ科 スゲ属 ヌカスゲ節
Fig.1 (兵庫県但馬地方・風衡地の低木林下 2014.6/15)

Fig.2 (兵庫県但馬地方・岩壁直下の林縁草地 2014.6/15)

山地や山頂付近などに生育する多年草。
まばらに叢生し、短い匍匐根茎がある。有花茎は高さ20〜35cm、上部はざらつき、下部は平滑。
基部の鞘は長さ1〜3cm、黄色〜黄褐色。葉は有花茎と同長または短く、幅1.5〜3mm。苞の葉身は葉状で、鞘は短く1〜2cm。
頂小穂は雄性、線形で、長さ1.5〜3.5cm、柄は長さ1〜6cm。雄鱗片は淡黄色〜黄褐色、鈍頭または鋭頭。
側小穂は雌性で、線柱形、長さ1.5〜3.5cm。下方のものは離れてつくことが多く、まれに根生する。雌鱗片は淡褐色〜褐色、鈍頭または短芒。
果胞は雌鱗片よりも長く、倒卵形、長さ2.7〜3mm、幅1〜1.3mm、無毛、上部はしだいに狭まってくちばしとなり、縁は細鋸歯、口部は2小歯。
痩果は果胞に密に包まれ、卵形、長さ1.9〜2.1mm、幅0.9〜1.3mm、頂部に盤状付属体がある。柱頭は3岐。

シロイトスゲC. alterniflora)は葉幅1.5〜3.5mm、基部の鞘は緑白色〜淡褐色、雄鱗片は半透明で有芒、果胞は狭卵形で長さ2.8〜3mm。本州、九州。
ベニイトスゲ(var. rubrovaginata)は葉幅1.5〜2.5mm、基部の鞘は赤紫色〜紫色、雄鱗片、雌鱗片ともに赤紫色〜紫色、果胞は倒卵形で長さ2.8〜3mm。本州(近畿以西)、四国、九州。
チャイトスゲ(var. aureobrunnea)は葉幅1.5〜3mm、基部の鞘は褐色、雄鱗片は淡褐色、果胞は狭卵形で長さ2.8〜3mm。本州(関東)、四国、九州。
クジュウスゲ(var. elongatula)は葉幅1.5〜3mm、基部の鞘は淡褐色、雄鱗片は淡色で鈍頭または短芒、果胞はくちばしが長く長さ3.5〜4mm。本州(近畿・中国地方)、四国、九州。
アリマイトスゲ(var. arimaensis)は葉幅1.5〜2mm、基部の鞘は黄褐色〜淡褐色、雄鱗片、雌鱗片ともに緑白色、果胞は卵形で長さ2.5〜3mm。本州(近畿・中国地方)、四国。
近縁種 : シロイトスゲ、 ベニイトスゲ、 チャイトスゲ、 クジュウスゲアリマイトスゲイトスゲ

■分布:本州(近畿・中国地方)、四国
■生育環境:山地や山頂付近など。
■果実期:5〜7月

Fig.3 全草標本。(兵庫県但馬地方・風衡地の低木林下 2014.6/25)
  匍匐根茎があり、有花茎は高さ20〜35cm。

Fig.4 基部の鞘は黄色〜黄褐色。(兵庫県但馬地方・風衡地の低木林下 2014.6/25)

Fig.5 葉の拡大。(兵庫県但馬地方・風衡地の低木林下 2014.6/25)
  葉は幅1.5〜3mm、縁はややざらつく。

Fig.6 有花茎。(兵庫県但馬地方・風衡地の低木林下 2014.6/25)
  頂小穂は雄性、線形で、長さ1.5〜3.5cm、柄は長さ1〜6cm。側小穂は雌性で、線柱形、長さ1.5〜3.5cm。

Fig.7 有花茎上部の拡大。(兵庫県但馬地方・風衡地の低木林下 2014.6/25)
  上向きの小刺が並び、ざらつく。

Fig.8 苞と側小穂。(兵庫県但馬地方・風衡地の低木林下 2014.6/25)
  苞の葉身は葉状で、有鞘。鞘は短く1〜2cm。側小穂は下方のものは離れてつき、下方の側小穂の柄は長い。

Fig.9 根生する側小穂。(兵庫県但馬地方・風衡地の低木林下 2014.6/25)
  ときに最下の側小穂は根生し、長い柄を持つ。

Fig.10 頂小穂と雄鱗片。(兵庫県但馬地方・風衡地の低木林下 2014.6/25)
  頂小穂は雄性、線形で、長さ1.5〜3.5cm、柄は長さ1〜6cm。雄鱗片は淡黄色〜黄褐色、鈍頭または鋭頭。

Fig.11 側小穂の拡大。(兵庫県但馬地方・風衡地の低木林下 2014.6/25)
  雌鱗片は淡褐色〜褐色、鈍頭または短芒。果胞は雌鱗片よりも長く、無毛、口部は2小歯。
  画像の鱗片はまだ褐色を帯びていない、やや未熟なもの。

Fig.12 果胞と雌鱗片。(兵庫県但馬地方・風衡地の低木林下 2014.6/25)
  果胞は雌鱗片よりも長く、倒卵形、長さ2.7〜3mm、幅1〜1.3mm、無毛、上部はしだいに狭まってくちばしとなり、口部は2小歯。

Fig.13 乾燥時の果胞。(兵庫県但馬地方・風衡地の低木林下 2014.6/25)
  脈が明瞭。くちばしはクジュウスゲよりも短く、くちばしの縁はわずかに鋸歯縁。

Fig.14 痩果。(兵庫県但馬地方・風衡地の低木林下 2014.6/25)
  痩果は果胞に密に包まれ、卵形、長さ1.9〜2.1mm、幅0.9〜1.3mm、頂部に盤状付属体がある。

Fig.15 痩果の拡大。(兵庫県但馬地方・風衡地の低木林下 2014.6/25)
  頂部の盤状付属体はやや大きく、稜は張り出している。

--------------クジュウスゲとの果胞・痩果の比較--------------
Fig.16 果胞の比較。(兵庫県但馬地方・風衡地の低木林下 2014.6/25)
  クジュウスゲの果胞は長さ3.5〜4.5mmでくちばしは長い。キイトスゲの果胞は長さ2.7〜3mmでくちばしは短い。

Fig.17 痩果の比較。(兵庫県但馬地方・風衡地の低木林下 2014.6/25)
  キイトスゲは盤状付属体が大きく、稜が張り出している。

生育環境と生態
Fig.18 風衡地の低木林下で群生するキイトスゲ。(兵庫県但馬地方・風衡地の低木林下 2014.6/25)
稜線の低木林下の半日陰地でキイトスゲがまばらに群生していた。
キイトスゲの群生に接してナガミヒメスゲ、コハリスゲが生育し、同所的にショウジョウバカマ、トウゲシバ、コバノイシカグマ、シノブカグマ、
ミゾシダ、ヤマソテツなどが見られた。

Fig.19 岩壁直下の林縁草地に生育するキイトスゲ。(兵庫県但馬地方・林縁草地 2014.6/15)
岩壁直下の麓屑面に広がる多湿な草地の林縁部にキイトスゲが生育していた。
5月中まで残雪のある場所で、同所的にメアオスゲ、ショウジョウスゲ、オシダ、ジュウモンジシダ、トウゲシバ、オオバノヨツバムグラ、
サンインシロカネソウ、チョウジギク、ダイモンジソウ、ミヤマカラマツ、オニシモツケなどが生育していた。


最終更新日:12th.July.2014

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