ナガバノヤノネグサ Persicaria breviochreata  (Makino) Ohki
  里山・林縁・林床の植物 タデ科 イヌタデ属
Fig.1 (西宮市・農耕地の草地 2010.10/14)

Fig.2 (兵庫県篠山市・溜池土堤林縁 2011.9/24)

丘陵〜山地の湿った林縁や林床に生育する1年草。
茎は根元から分枝して斜上し、ときに1列の下向きの剛毛があり、高さ30〜50cm。
葉には短い柄があり、長楕円状披針形、先は鋭形、基部は浅い矢じり形で、耳部は三角形、長さ2〜7cm、幅1〜2cm、縁毛がある。
托葉鞘は短く、長さ2〜6mm、長い縁毛がある。
花は短い総状花序をなし、まばらに1〜3個の花をつける。萼(花被)は5深裂し、外面先端は淡紅色を帯びた、淡黄緑色〜白色、長さ3〜4mm。
花柄には上部に毛がある。痩果は広楕円状卵形で、3稜形ときにレンズ形、黄褐色で光沢があり、長さ2.5〜3mm。

【メモ】 西宮市内では林下で見たことはなく、農耕地の草地や湿った林縁で生育しているが個体数は少ない。
     兵庫県下の摂津・阪神地方では稀な種である。播磨地方では記録が多い。
近縁種 : ヤノネグサナガバノウナギツカミホソバノウナギツカミアキノウナギツカミ

■分布:本州(関東以西)、四国、九州 ・ 朝鮮半島
■生育環境:丘陵〜山地の湿った林縁や林床など。
■花期:9〜10月

Fig.3 全草標本。(西宮市・林縁用水路脇 2010.10/14)
  茎は根元付近で分枝し、中部以上は斜上する。葉は茎に互生してまばらにつく。
  茎は細く、近似種の中では最も繊細な印象を受ける。1年草であるためか、根の発達は悪い。

Fig.4 茎の様子。(西宮市・林縁用水路脇 2010.10/14)
  茎には隆条があって、それは時に翼状となる。痛みの少ない新鮮な茎では、1列の下向きの剛毛がごくまばらに並ぶ。

Fig.5 ナガバノヤノネグサの葉。(西宮市・林縁用水路脇 2010.10/14)
  葉には短い葉柄があり、葉身は表面無毛、長楕円状披針形で、基部は矢じり形で三角状の耳を持つ。
  新鮮な葉は基部寄りの中央脈周辺が白味を帯びる。

Fig.6 葉裏(上)とその上部の拡大(下)。(西宮市・林縁用水路脇 2010.10/14)
  葉裏はほとんど無毛に近いが、葉身上部の中央脈上には上向きの毛が見られた。毛の基部は瘤状となっている。
  また葉縁には短毛が密に並んでいる。

Fig.7 茎下部につく葉。(西宮市・農耕地の草地 2010.10/14)
  茎下部につく葉は小さく、基部は矢じり状とならず、全体に丸みを帯びる。

Fig.8 托葉鞘。(西宮市・林縁用水路脇 2010.10/14)
  鞘部は膜質で、伏毛があり、まばらに脈があり、突出した脈が鞘部と同長かやや短い縁毛となって伸びる。

Fig.9 花序と花。(西宮市・農耕地の草地 2010.10/14)
  花序は総状で、1〜3個の花がまばらにつく。そのため開花期であっても近縁種と比較すると目立たない。
  花被は5深裂し、内側は淡黄緑色〜白色で、外面先端部は淡紅色を帯びていることが多い。

Fig.10 花序の腺毛。(西宮市・農耕地の草地 2010.10/14)
  花序直下の茎や花序枝には上半が斜上気味となる腺毛が生えるが、腺毛先端の腺体は早期に機能を失い、腺体のない毛となって残る。

Fig.11 痩果。(西宮市・林縁用水路脇 2010.11/1)
  痩果は卵円形、橙褐色、横断面はほぼ円形で、先端部はわずかに3稜となり、長さ2.8mm前後、平滑で、強い光沢がある。

Fig.12 発芽。(兵庫県篠山市・溜池土堤 2011.4/21)
  双葉は有柄で楕円形。本葉第1葉は卵形で、基部のやじり状部は目立たず、葉縁には微短毛が生え、中部付近がやや反曲している。

Fig.13 若い草体。(西宮市・農耕地の草地 2009.7/25)
  花序が出る前のもの。開花前のものは葉の白斑がよく目立つ。

生育環境と生態
Fig.14 段々畑の草地に生育するナガバノヤノネグサ。(西宮市・農耕地の草地 2010.10/14)
畑地の脇にある草地に生育しており、用水路から引水した散水用の蛇口がすぐ傍にあるため、適度な湿り気がある。
畑地周りであるため、頻繁な刈り込み遭っており、画像の草体は地を這うように生育しているが、草刈りの間隙を縫って結実しているようであり、毎年生育が見られる。
ナガバノヤノネグサとともに生育していたものは、ノビル、ゲンノショウコ、イヌガラシ、イヌタデ、ヒメヤブラン、ヨモギ、ヘビイチゴ、オヘビイチゴなどであった。


最終更新日:18th.Nov.2011

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