アキノウナギツカミ Persicaria sieboldii  (Meisn.) Ohki. タデ科 イヌタデ属
湿生植物
Fig.1 (西宮市・休耕田 2006.9/18)

主に休耕田や中栄養な溜池畔・湿地に生育する1年草。日当たりのよい場所を好む。
茎は分枝し、下部は地表を這って発根し、上部は斜上、または直立し、長さ20〜100cmになる。
茎や葉柄、葉裏中肋に下向きに曲がった刺があり、これで他の植物に絡まって生長する。
葉は長い披針形で長さ5〜10cm、鈍頭または鋭頭で、基部は矢じり形となる。葉裏中肋以外は両面とも無毛。
花茎の上部に付く葉は葉柄が短く、茎を抱いたように見える。葉の質は薄い。
葉鞘は斜め切形で無毛、長さ7〜10mm。
花は枝先に頭状に密集。花被は上部が紅色〜紅紫色を帯び、長さおよそ2.5mmで、5裂する。
果実は花被につつまれた3稜形の痩果で、長さ約3mm、径2mm内外、黒色で光沢がない。
近似種 : ホソバノウナギツカミナガバノウナギツカミサデクサヤノネグサミゾソバタニソバナガバノヤノネグサ

■分布:北海道、本州、四国、九州、朝鮮半島、中国、シベリア
■生育環境:休耕田、用水路脇、中栄養な湿地、池畔
■花期:7〜10月
■西宮市内での分布:市内北部に広がる水田周辺、とくに休耕田で群生が見られることが多い。

Fig.2 開花中のアキノウナギツカミ。(兵庫県香美町・湿地 2009.9/21)
  花被は5深裂し、長さ約3mm、下部は白色、上部は紅色〜白色。雄蕊は8個。花柱は3個。

Fig.3 花序の様子。(西宮市・農道脇の湿った荒地 2006.9/25)
  花序枝には刺はなく、無毛。果実形成期に花被は紅色を帯びる。

Fig.4 茎は断面が4角形で、その稜上にはまばらに下向きの刺が生える。(西宮市・用水路脇 2007.10/28)

Fig.5 托葉鞘。(西宮市・休耕田 2008.7/7)
  托葉鞘は膜質で数脈あり、口部は斜め切形。下部に小突起が散生するが、無毛。

Fig.6 花茎最上部の葉の葉柄は短く、葉鞘が茎を抱く。(西宮市・用水路脇 2007.10/28)

Fig.7 果実期の花被(上左)と種子(上右)。(西宮市・用水路脇 2007.10/28)
  種子は3稜形で長さ3mm、面の部分はふくらみ、上部は嘴状に突出して、先端は鈍頭。表面には縦方向に細かい縮緬状の皺がある(下)。

Fig.8 本葉を展開した幼苗。双葉の状態だとヤノネグサと殆ど区別がつかない。(西宮市・休耕田 2007.5/17)

Fig.9 茎の下部に付く葉は長い披針形で、基部は矢尻形となり、葉柄がある。(西宮市・休耕田 2007.8/5)
  托葉鞘は膜質、長さ5〜10mmで先端は斜め切り形。

Fig.10 成長期のアキノウナギツカミ。(西宮市・休耕田 2005.8/6)
  まだ花茎を上げないこの時期のものは、葉には明瞭な柄があり、葉鞘は茎を抱く。
  緑濃い水田雑草の中で淡い緑の葉が目立っていた。

西宮市内での生育環境と生態
Fig.11 棚田の水路脇で生育するアキノウナギツカミ。(西宮市・用水路脇 2009.9/22)
周辺の土手から湧水がにじみ出す水路脇で生育していた。
群生しているように見えるが、本種は匍匐茎を長く伸ばし、分枝して広がるので実際は数株だろう。
周辺にはミゾソバ、アメリカセンダングサ、ドクダミ、キツネノボタン、シラヤマギク、ショウジョウバカマ、ミズギボウシ、ムカゴニンジン、
ウシクグ、カワラスガナ、ヒメヒラテンツキ、ゴウソ、オニスゲ、タニガワスゲなど幅広い植生が見られる。

他地域での生育環境と生態
Fig.12 溜池畔に生育するアキノウナギツカミ。(兵庫県小野市・溜池畔 2011.7/31)
台地上にある、やや富栄養な溜池畔のチゴザサ群落中にアキノウナギツカミが混生し、開花していた。
この溜池では水面にヒシが多く生育し、水中にはオオトリゲモが生育し、ヒメガマ、マコモなどが抽水状態で生育する。
アキノウナギツカミは中栄養〜やや富栄養な溜池畔の湿地で見られることが多い。

Fig.13 休耕田に群生するアキノウナギツカミ。(兵庫県加西市・休耕田 2012.10/14)
溜池土堤直下の休耕田でサワヒヨドリとともに群生していた。
休耕田内には近縁種のミゾソバ、ヤノネグサも見られるが、アキノウナギツカミの個体数が圧倒的に多い。
休耕田内では他にチゴザサ、オニガヤツリ、アゼスゲ、タヌキマメ、ツルマメ、セリなどが生育していた。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
北川政夫, 1982. タデ科イヌタデ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本2 離弁花類』 p.19〜24. pls.16〜22. 平凡社
北村四郎, 2004 タデ科タデ属. 北村四郎・村田源『原色日本植物図鑑 草本編(U) 離弁花類』 p.299〜316. pl.65. 保育社
牧野富太郎, 1961 アキノウナギツズル. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 120. 北隆館
長田武正・長田喜美子, 1984 タデ科. 『野草図鑑 8 はこべの巻』 154〜160. 保育社
林辰雄. 2001. タデ科イヌタデ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 600〜616. 神奈川県立生命の星・地球博物館
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. アキノウナギツカミ. 『六甲山地の植物誌』 111. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. アキノウナギツカミ. 『近畿地方植物誌』 119. 大阪自然史センター
黒崎史平・高野温子・土屋和三 2001. アキノウナギツカミ. 兵庫県産維管束植物3 タデ科. 人と自然12:111. 兵庫県立・人と自然の博物館

最終更新日:3rd.Mar.2014

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