ナガハシスミレ | Viola rostrata Pursh | ||
低山・林床・林縁の植物 | スミレ科 スミレ属 |
Fig.1 (兵庫県豊岡市・林道脇斜面 2017.4/4) |
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Fig.2 (兵庫県豊岡市・沿海の林道脇 2017.4/14) 主に日本海側の低山の林縁、落葉広葉樹林の林床などに生育する多年草。 根茎は木化して肥厚し、横走して分枝し、全草無毛。茎は高さ15cm程度になる。 根生葉は円心形、急にとがり、長さ2〜4cm、基部は深い心形、鋸歯は低い。 葉柄は長さ2〜5cm。托葉は狭卵状長楕円形、長さ約1cm、幅の狭い裂片に羽裂し、乾くと赤褐色となる。 花柄は根生、または茎上に腋生し、花は淡紫色、平たくつぶれたような形に咲く。 萼片は広披針形。花弁は長さ12〜14mm、側弁は無毛、距は細長くて斜上し、長さ10〜30mm。 花が純白のものはシラユキナガハシスミレ(f. albiflora)とされる。 北アルプス北部の蛇紋岩地に生育するものは変種ミヤマナガハシスミレ(var. alpina)とされ小型で茎を伸ばさず、花は濃紫紅色となる。 アワガタケスミレ(V. awagatakensis)は葉面に光沢があり、基部は切形となり、新潟県にのみ知られている。 【メモ】 ナガハシスミレは関西では日本海側の海岸に近い低山の林縁に他のスミレ類とともに比較的よく見られる。 近縁種 : タチツボスミレ、 ナガバノタチツボスミレ、 ニオイタチツボスミレ、 イソスミレ、 ツヤスミレ、 オオタチツボスミレ ■分布:北海道、本州(島根県以北)の日本海側 ・ 北米 ■生育環境:日本海側の林縁、2次林の林床など。 ■花期:4〜5月 |
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↑Fig.3 開花期の葉。(兵庫県豊岡市・林道脇斜面 2017.4/4) 根生葉は円心形、急にとがり、やや厚味と光沢があり、長さ2〜4cm、基部は深い心形、鋸歯は低い。葉柄は長さ2〜5cm。 中脈は明瞭だが、側脈はあまり明瞭ではないものが多く、葉身は中央部を中心にして漏斗状になる傾向があり、あまり平面的にならない。 |
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↑Fig.4 越冬した根生葉。(兵庫県豊岡市・林道脇斜面 2017.4/4) 根生する越冬葉は暗緑色〜濃緑色で大きくて幅広く、厚味があり、鋸歯は低く、葉縁近くにはまばらな短毛が見られた。 |
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↑Fig.5 托葉。(兵庫県豊岡市・林道脇斜面 2017.4/4) 托葉は狭卵状長楕円形、長さ約1cm、幅の狭い裂片に羽裂し、乾くと赤褐色となる。 |
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↑Fig.6 開花したナガハシスミレ。(兵庫県豊岡市・林道脇斜面 2017.4/4) スミレ類の中では比較的開花が早く、また開花期も比較的長いと感じる。 花は淡紫色、平たくつぶれたような形に咲き、タチツボスミレやナガバノタチツボスミレよりもやや小さい。 |
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↑Fig.7 花の中心部。(兵庫県豊岡市・林道脇斜面 2017.4/4) 側弁は無毛、柱頭基部は張り出さずカマキリの頭状にはならない。 |
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↑Fig.8 距。(兵庫県豊岡市・林道脇斜面 2017.4/4) 距は著しく長く伸び、その先は様々な方向に向いたり、膨らむこともあればしだいに細くなるものもある。 |
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↑Fig.9 萼片は広披針形、無毛。(兵庫県豊岡市・林道脇斜面 2017.4/4) 萼片の縁には白色〜半透明な部分が見られる。 |
生育環境と生態 |
Fig.10 林道脇の表土の少ない急な斜面に生育するナガハシスミレ。(兵庫県豊岡市・林道脇斜面 2017.4/4) ナガハシスミレは日本海沿岸部の低山で見られ、特にリアス式海岸のような急斜面のある薄い表土のある林縁部の斜面に見られることが多い。 表土の多い場所で半日陰の場所ではナガバノタチツボスミレと混生し、日当たり良い崩壊地ではニホンカイタチツボスミレ(仮称)や、タチツボスミレや ニオイタチツボスミレと混生することがある。 |
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Fig.11 スギ植林地の林縁に生育するナガハシスミレ。(兵庫県豊岡市・植林地林縁 2017.4/4) 但馬地方の多くの植林地はシカの食害に対しては無防備で、林床にはシカの忌避植物以外は地表を匍匐するような草本しか残っていない。 スミレ類も貧相な個体が多く、このような環境での普通種であるナガバノタチツボスミレと同様、ナガハシスミレも花茎をようやく1本あげるような 弱々しい個体しか見られない。 |
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Fig.12 崩壊地斜面に生育するナガハシスミレ。(兵庫県豊岡市・林道脇斜面 2017.4/4) ここではナガバノタチツボスミレやタチツボスミレと混生しており、距が長いながら様々な花色と大きさを持つ個体が見られ、交雑していることを思わせる。 被植は少なく、スミレ類以外ではニガナやヤクシソウが見られ、このような場所を好むコスギゴケがやや安定した表土を覆っている。 |