ジュウニヒトエ | Ajuga nipponensis Makino | ||
里山・山地・林床・林縁の植物 | シソ科 キランソウ属 |
Fig.1 (兵庫県養父市・林縁 2015.4/30) 丘陵〜山地の林床や林縁に生育する多年草。 茎は数本束生し、高さ10〜25cm、全体に長白毛が多く、白緑色を帯びる。基部の数対の葉は鱗片状となる。 葉は2〜4対あり、倒卵状さじ形〜長楕円状で鋭頭〜円頭、まばらな鈍歯牙縁、長さ3〜5cm、幅1.5〜3cm、基部は狭くなって翼のある葉柄となる。 花は淡紫白色で多数が密につき、頂生の長さ4〜8cmの花穂をつくる。 花筒は背面で長さ約9mm。上唇は小さく、下唇は開出して長さは花筒とほぼ同長。分果は長さ1.5〜1.8mm。 【メモ】 キランソウとの間に雑種ジュウニキランソウ(A. × mixta)をつくる。 近縁種 : ツクバキンモンソウ、 ニシキゴロモ、 キランソウ、 オウギカズラ ■分布:本州、四国。 ■生育環境:丘陵〜山地の林床や林縁など。 ■花期:4〜5月 |
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↑Fig.2 基部から数本の茎を束生する。(兵庫県養父市・林縁 2015.4/30) |
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↑Fig.3 茎。(兵庫県養父市・林縁 2015.4/30) 茎は数本束生し、全体に開出気味の長白毛が多く、白緑色を帯びて見える。 画像のように赤紫色を帯びるものもあるが、そうでないものもある。 |
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↑Fig.4 葉。(兵庫県養父市・林縁 2015.4/30) 葉は2〜4対あり、倒卵状さじ形〜長楕円状で鋭頭〜円頭、まばらな鈍歯牙縁で、基部は狭くなって翼のある葉柄となる。 葉縁や脈上には軟毛が生えている。 |
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↑Fig.5 葉裏。(兵庫県養父市・林縁 2015.4/30) 葉裏は紫色を帯びていない。脈上には軟毛が生える。 |
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↑Fig.6 日向に生育する個体の葉脈は赤紫色を帯びるものが多い。(兵庫県養父市・林縁 2013.5/8) |
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↑Fig.7 花穂。(兵庫県養父市・林縁 2015.4/30) 茎に頂生した花穂には多数の花が密につく。 |
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↑Fig.8 花。(兵庫県養父市・林縁草地 2015.4/30) 花は淡紫白色。花筒は背面で長さ約9mm。上唇は小さく、下唇は開出して長さは花筒とほぼ同長。 |
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↑Fig.9 向陽地で生育する個体。(兵庫県養父市・渓流畔の草地 2015.4/30) 節間が詰まり、林床で見るものよりも背丈は低く、花数が多く感じられる。 |
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↑Fig.10 花後に倒伏した花茎。(兵庫県養父市・林縁 2015.5/14) 花後には花茎を倒伏する個体が多く、花冠は宿存している。葉は開花時よりも大きくなっている。 |
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↑Fig.11 分果。(兵庫県養父市・林縁 2015.6/17) 分果は1花に1〜2個結実しているものが多く、全く結実しない花も数多く見られた。 分果は楕円形〜卵形、長さ1.5〜1.8mm、表面には隆起した不規則な網目模様がある。 |
生育環境と生態 |
Fig.12 林縁の斜面に点在するジュウニヒトエ。(兵庫県養父市・林縁 2015.4/30) スギの植林地の乾いた半日陰の林縁斜面に多くのジュウニヒトエが点在していた。 周辺にはスズメノヒエ、ヌカボシソウ、タチツボスミレ、ナガバノタチツボスミレなどが見られるが草本の被植度は少ない。 |
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Fig.13 温帯林下に生育するジュウニヒトエ。(兵庫県養父市・林床 2015.4/30) 沢筋の温帯林の斜面林床に多数のジュウニヒトエが生育していた。 ここでは渓流に面しているため適湿で、ジュウモンジシダ、ヒロハイヌワラビ、オクマワラビ、ミヤマナルコユリ、ミヤマイラクサ、ミスミソウ、 トキワイカリソウ、イワハタザオ、ラショウモンカズラ、オウギカズラ、キッコウハグマなど、豊富な植生が見られた。 兵庫県ではジュウニヒトエは丘陵部で見られることは稀で、温帯林下部でもっともよく見られる。 |