オオササエビモ Potamogeton anguillanus  Koidz. ヒルムシロ科 ヒルムシロ属
水生植物 > 沈水植物
Fig.1 (滋賀県・湖沼 2012.9/7)

湖沼、河川、水路などで沈水状態で生育する多年草。
ササバモとヒロハノエビモの雑種を起源とする種とされている。
水中茎の長さは1mを超えることもある。葉は無柄、葉身基部は茎を半周ほど抱くのがふつう。
葉身は狭披針形〜狭長楕円形で長さ6〜16cm、幅6〜12mm、多少ともねじれ、葉縁は細かく波打つ。
母親種がササバモの場合は浮葉をつくるが、ヒロハノエビモが母親の場合は浮葉をつくらない。
先はやや鋭頭または鈍頭で、ササバモのように突出しない。
花茎は長さ4〜11cm、花穂は長さ2〜3cmで、花が密につき、4心皮。結実はきわめて稀。
冬期には水中茎は枯れ、根茎の先に殖芽をつくり越冬する。

【メモ】 『日本の水草』によると、琵琶湖産のオオササエビモには27の遺伝子型が確認されたという。
ササバモP. malaianus)は葉柄があり、葉先は鋭頭で芒状に突出し、浮葉を生じることがある。
サンネンモP. biwaensis)は葉の基部が托葉と合着し、長さ1〜3mmの葉鞘となって茎を抱く。
ガシャモクP. biwaensis)は葉幅1.2〜2.5cmと幅広く、葉先はときに芒状に突出し、宿存性の托葉がある。
近似種 : ササバモサンネンモヒロハノセンニンモ センニンモヒロハノエビモ、 ガシャモク、インバモ
■分布:本州(関西以西)、四国、九州 
■生育環境:湖沼や河川、水路など。
■花期:7〜9月
■西宮市内での分布:市内では見られず、兵庫県からも記録がない。琵琶湖ではふつうに見られる。

Fig.2 全草標本。(滋賀県・湖沼 2011.8/28)
  葉は互生してしてつき、花茎のつく上部では対生する。
  サンネンモに似るが、サンネンモのように茎の節間は詰まらない。

Fig.3 葉。(滋賀県・湖沼 2011.8/28)
  葉は無柄。葉身は狭披針形〜狭長楕円形で長さ6〜16cm、幅6〜12mm、多少ともねじれ、葉縁は細かく波打つ。

Fig.4 葉先の拡大。(滋賀県・湖沼 2011.8/28)
  先はやや鋭頭または鈍頭で、ササバモのように芒状に突出しない。

Fig.5 葉身基部と托葉。(滋賀県・湖沼 2011.8/28)
  葉身基部は茎を半周ほど抱くのがふつう。托葉は大きいが腐朽しやすい。

Fig.6 有花茎上部と花茎。(滋賀県・湖沼 2011.8/28)
  有花茎上部の花茎のつく節では、ふつう葉が対生する。
  花茎は長さ4〜11cmで、深い場所に生育するものほど長く伸びる。
  花後の花穂が見えるが、結実は稀である。

Fig.7 花穂。(滋賀県・湖沼 2011.8/28)
  花穂は長さ2〜3cmで、花が密につき、4心皮。

Fig.8 4心皮の花。(滋賀県・湖沼 2011.8/28)

Fig.9 果実期。(滋賀県・湖沼 2014.9/8)

Fig.10 結実した花序。(滋賀県・湖沼 2014.9/8)
  波静かな浅瀬で結実した個体が見られた。結実はまばら。

Fig.11 果実。(滋賀県・湖沼 2014.9/8)
  花柱は宿存し、大きさや形状はササバモとほとんど変わらない。

Fig.12 浮葉形。(滋賀県・河川 2014.9/8)
  浮葉をつけるのはササバモが母親になった場合といわれる。ヒロハノエビモが母親の場合は浮葉を形成しないらしい。

Fig.13 Potamogeton近縁6種。(滋賀県・湖沼 2011.8/18)

他地域での生育環境と生態
Fig.14 琵琶湖に生育するオオササエビモ。(滋賀県・湖沼 2011.8/28)
オオササエビモは琵琶湖ではふつうに見られる水生植物で、湖岸の比較的浅い水深60〜200cmの場所に多く生育している。
水深1mよりも深い場所では水面に花穂をあげることなく、水中で開花しているものが多く見られ、そのため結実が稀なのかもしれない。
単独で純群落をつくることは少なく、ヒロハノエビモ、サンネンモ、ヒロハノセンニンモ、センニンモ、クロモ、ホザキノフサモとともに見られることが多い。
画像の沈水植物群落ではサンネンモが最も多く見られ、オオササエビモはヒロハノセンニモやクロモとともに点在していた。

Fig.15 河川にササバモとともに生育するオオササエビモ。(滋賀県・河川 2014.9/8)
ここでは母親種であるササバモのすぐ隣で水面上で浮葉を形成していた。右の小さな浮葉がオオササエビモ。大きな浮葉はササバモ。
河川内にはクロモ、エビモ、セキショウモなどの沈水植物のほか、岸近くではミクリ群落が発達していた。

Fig.16 琵琶湖の浅瀬に生育するオオササエビモ。(滋賀県・湖沼 2014.9/8)
砂泥質の遠浅な浅瀬に他の水草とともに沈水植物群落を形成しており、開花中のものや結実しているものが見られた。
ここではヒロハノエビモ、サンネンモ、ネジレモ、コカナダモ、オオトリゲモとともに生育している。
サンネンモとオオササエビモは中間的なものも見られ、交雑が起こっている可能性がある。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
角野康郎, 2014. ヒルムシロ科ヒルムシロ属. 『日本の水草』 110〜136. 文一統合出版
角野康郎, 1994. ヒルムシロ科ヒルムシロ属. 『日本水草図鑑』 32〜50. 文一統合出版
角野康郎, 1984. ヒルムシロ属同定の実際 (2)広葉性の沈水植物. 水草研究会会報 16:6〜11
浜端悦治 2005. 琵琶湖の沈水植物群落. 琵琶湖研究所記念誌 22:105〜119.

最終更新日:8th.Nov.2014

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