ヒロハノエビモ Potamogeton perfoliatus  L. ヒルムシロ科 ヒルムシロ属
沈水植物  兵庫県RDB Aランク種
Fig.1 (滋賀県・小河川の河口部 2014.8/31)

Fig.2 (滋賀県・湖沼 2012.9/7)

Fig.3 (京都府・溜池 2013.8/19)

湖沼、まれに河川などに生育する多年草で、沈水植物。
北日本の湖沼では比較的ふつうの水草であり、汽水域にも生育するが、西日本では稀な種。
自然池沼には普通であるのに対し、水位変動のある溜池にはほとんど出現しない。
水中茎は水深によって長さ2mに達することもある。
葉は無柄で広卵形〜披針形までさまざまな形をとり、先端も円頭〜やや鋭頭と一定しないが、いずれの場合も葉身基部が茎を半周以上抱く。
葉身は長さ1,5〜9cm、幅(5〜)10〜25mm、ふちは波打ち、1細胞からなる目立たない鋸歯がある。
托葉は膜質で長さ7〜30mm、すぐに腐朽して残らない。花茎は2〜5(〜12)cm。花穂は長さ8〜25mm。花は4心皮からなる。
果実は長さ2.5〜3mm、幅2〜2.5mm、背面の稜は全縁、側面中心部がやや窪むことが多い。
秋になると地下茎の先端が肥大して殖芽となり、越冬する。

エビモP. crispus)は葉が広線形、多数の鋸歯が目立つ。花穂の長さ5〜12mm。3〜4心皮。結実は稀で、葉腋や茎頂に肥厚した殖芽をつくる。
センニンモP. maackianus)は葉が線形で鋸歯があり、基部は葉鞘となり、先は凸状。開花は稀で、花穂の長さ4〜10mm。2心皮。
オオササエビモP.anguillanus)は葉が狭披針形〜狭長楕円形、多少ともねじれ、鋭頭。葉縁はこまかく波打つ。花穂は長さ2〜3cm。4心皮。結実は稀。
サンネンモP. biwaensis)は葉が線形、鋭頭、鋸歯があり、基部には長さ1〜3mmの葉鞘がある。花穂の長さ7〜11mm、5〜6個の花がつき、花は2(稀に3)心皮。
ヒロハノセンニンモP. leptocephalus)は葉が線形、鈍頭、葉身は両側が内側に湾曲して向き合う。茎下部では葉基部が葉鞘となるが、上部ではそうならない。
近似種 : エビモセンニンモサンネンモヒロハノセンニンモオオササエビモ

■分布:北海道、本州、四国、九州 ・ 南米大陸を除く全世界
■生育環境:湖沼・河川など。
■花期:6〜9月
■西宮市内での分布:市内では見られない。兵庫県では最近自生地が発見された。琵琶湖には多産する。

Fig.4 水中部標本。(滋賀県・小河川の河口部 2011.8/18)

Fig.5 葉身。(滋賀県・小河川の河口部 2011.8/18)
  葉は無柄で広卵形〜披針形と変異が多く、先端も円頭〜やや鋭頭と一定しないが、いずれの場合も葉身基部が茎を半周以上抱く。

Fig.6 鋸歯。(滋賀県・小河川の河口部 2011.8/18)
  葉縁は波打ち、1細胞からなる目立たない鋸歯がある。

Fig.7 葉先の拡大。(滋賀県・湖沼 2014.9/8)

Fig.8 托葉。(滋賀県・湖岸 2011.8/18)
  矢印部分。托葉は膜質で長さ7〜30mm、すぐに腐朽して残らない。

Fig.9 水中で花穂を上げ始めた個体。(滋賀県・湖沼 2012.9/7)
  花穂直下の葉は対生し、花茎と次に花穂をつける枝を出す。花茎は花穂が水面上に出るまで伸びる。

Fig.10 花茎と花穂。(滋賀県・湖岸 2011.8/18)
  つぼみをつけた花穂と、花後の花穂。花茎は2〜5(〜12)cm。花穂は長さ8〜25mm。

Fig.11 開花中の穂状花序。(滋賀県・小河川の河口部 2011.8/18)
  花に萼片と花弁はなく4個の葯隔付属物が花被片状に発達する。雌蕊は4個あり、4心皮。
  花序の上部の花は葯室が開いて花粉を放出しており、開花中である。

Fig.12 結実した花序。(滋賀県・湖岸 2007.11/8)

Fig.13 果実。(滋賀県・湖岸 2011.9/28)
  果実背面の稜は全縁、側面中心部がやや窪むことが多いが、画像のものは窪んでいない。

Fig.14 殖芽。(自宅植栽 2013.12/11)
  秋に根茎の先に殖芽をつくり越冬する。

Fig.15 Potamogeton近縁6種。(滋賀県・湖沼 2011.8/18)

他地域での生育環境と生態
Fig.16 琵琶湖のヒロハノエビモ。(滋賀県・湖岸 2011.8/28)
琵琶湖では水深1〜2m程度の場所に多く見られ、水中茎は長く伸び、花序のつく茎頂付近は節間が長く伸びて水面に達し開花する。
花序のつかない無花茎は、水深が深い場所でも、長さ10〜30cm程度のものが多い。
これに対して、河川で生育するものは無花茎も有花茎同様に伸びているのを見かける。
画像のヒロハノエビモの生育する周辺ではクロモ、サンネンモ、ヒロハノセンニンモ、オオササエビモ、ホザキノフサモが生育している。

Fig.17 水深1.2m付近のヒロハノエビモ。(滋賀県・湖岸 2011.8/28)
サンネンモ(画像左下)、クロモ(画像中央左)などとともに沈水植物群落をつくる。

Fig.18 溜池に見られたヒロハノエビモ。(京都府中丹地方・溜池 2013.6/25)
谷戸際奥にある渓流が流入する水の澄んだ溜池の岸辺にイトモとともに打ち寄せられていた。
水位変動のある溜池に生育することは非常に稀で、渓流の流入があるため水抜きされることがほとんど無かったのだろう。
この溜池ではイトモの個体数は非常に多いが、ヒロハノエビモの個体数はわずかであった。
琵琶湖で生育するものよりも草体も葉も大きく、最初はオオササエビモかと思うほどの大きさだった。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
大滝末男, 1980. ヒロハノエビモ. 大滝末男・石戸忠 『日本水生植物図鑑』 240〜241. 北隆館
山下貴司, 1982. ヒルムシロ科ヒルムシロ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)『日本の野生植物 草本T 単子葉類』
       p.10〜12. pls.6〜9. 平凡社
角野康郎, 1994 ヒルムシロ科ヒルムシロ属. 『日本水草図鑑』 32〜50. 文一統合出版
角野康郎, 2014 ヒルムシロ科ヒルムシロ属. 『日本の水草』 110〜136. 文一統合出版
内山寛. 2001. ヒルムシロ科ヒルムシロ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 178〜183. 神奈川県立生命の星・地球博物館
村田源. 2004. ヒルムシロ科. 『近畿地方植物誌』 199〜200. 大阪自然史センター
角野康郎, 2007. 兵庫県新産の水生植物2種. 水草研究会会報 86:33〜34
浜端悦治 2005. 琵琶湖の沈水植物群落. 琵琶湖研究所記念誌 22:105〜119

最終更新日:8th.Nov.2014

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