ヒロハノセンニンモ | Potamogeton leptocephalus Koidz | ヒルムシロ科 ヒルムシロ属 |
沈水植物 |
Fig.1 (滋賀県・湖沼 2011.8/28) 湖沼に生育する多年草で、沈水植物。センニンモとヒロハノエビモの種間雑種。 基準産地の鹿児島県鰻池では絶滅したとされ、現在は琵琶湖のみで生育している。 葉は線形、長さ1.5〜3.5cm、幅5〜8mm、鈍頭、両縁が内側に湾曲して向き合う。 茎の下部では葉の基部が葉鞘となるが、上部ではそうならない。開花は稀。 エビモ(P. crispus)は葉が広線形、多数の鋸歯が目立つ。花穂の長さ5〜12mm。3〜4心皮。結実は稀で、葉腋や茎頂に肥厚した殖芽をつくる。 センニンモ(P. maackianus)は葉が線形で鋸歯があり、基部は葉鞘となり、先は凸状。開花は稀で、花穂の長さ4〜10mm。2心皮。 ヒロハノエビモ(P. perfoliatus)は葉が広卵形〜披針形、円頭〜鈍頭、葉身基部は茎を半周以上抱く。葉縁は波打つ。托葉は早くに腐朽する。 オオササエビモ(P.anguillanus)は葉が狭披針形〜狭長楕円形、多少ともねじれ、鋭頭。葉縁はこまかく波打つ。花穂は長さ2〜3cm。4心皮。結実は稀。 サンネンモ(P. biwaensis)は葉が線形、鋭頭、鋸歯があり、基部には長さ1〜3mmの葉鞘がある。花穂の長さ7〜11mm、5〜6個の花がつき、花は2(稀に3)心皮。 近似種 : エビモ、 センニンモ、 サンネンモ、 ヒロハノエビモ、 オオササエビモ ■分布:琵琶湖水系、鹿児島県鰻池(絶滅?) ■生育環境:湖沼。 ■花期:6〜9月 ■西宮市内での分布:琵琶湖にのみ生育し、滋賀県では絶滅危惧増大種とされている。 |
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↑Fig.2 根茎。(滋賀県・湖沼 2011.8/28) ヒルムシロ属に共通する1節置きに茎が出る性質がある。第1節間は短い。 |
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↑Fig.3 草体。(滋賀県・湖沼 2011.8/28) 葉はサンネンモよりも短く、両縁が内側に湾曲して向き合う。水中茎の節間はふつうサンネンモよりも詰まる。 |
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↑Fig.4 分枝の多いもの。(滋賀県・湖沼 2011.8/28) |
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↑Fig.5 葉。(滋賀県・湖沼 2011.8/28) 葉先は鈍頭、葉縁には細鋸歯があり、下方の葉の基部は托葉と合着して茎を抱く。 |
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↑Fig.6 葉先の拡大。(滋賀県・湖沼 2014.9/8) |
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↑Fig.7 葉縁の細鋸歯。(滋賀県・湖沼 2014.9/8) |
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↑Fig.8 Potamogeton近縁6種。(滋賀県・湖沼 2011.8/18) ヒロハノセンニンモがヒロハノエビモとセンニンモの雑種であることがよく解る。 |
他地域での生育環境と生態 |
Fig.9 ヒロハノセンニンモの生育環境。(滋賀県・湖沼 2011.8/28) ヒロハノセンニンモは湖岸の水深1〜2m付近の沈水植物群落中のヒロハノエビモやサンネンモの間に生育している。 個体数はそれほど多くはなく、背丈は10〜40cm程度で、サンネンモとほぼ同じ高さになる。 この背丈の高さは湖床の湧水の水温が影響する高さで、水中に入っていると足元付近が表層よりもかなり冷たく感じられる。 ヒロハノエビモの無花茎やセンニンモもこのような湧水の影響が及ぶ低層に好んで生育している。 |
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【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 大滝末男, 1980. センニンモ. 大滝末男・石戸忠 『日本水生植物図鑑』 244〜245. 北隆館 角野康郎, 1994 ヒルムシロ科ヒルムシロ属. 『日本水草図鑑』 32〜50. 文一統合出版 角野康郎, 2014 ヒルムシロ科ヒルムシロ属. 『日本の水草』 110〜136. 文一統合出版 浜端悦治 2005. 琵琶湖の沈水植物群落. 琵琶湖研究所記念誌 22:105〜119. 最終更新日:9th.Nov.2014 |