ササバモ | Potamogeton malaianus Miq. | ヒルムシロ科 ヒルムシロ属 |
水生植物 > 浮葉〜沈水植物 西宮市絶滅種 |
Fig.1 (西宮市・市街の側溝 2007.7/12) |
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Fig.2 (滋賀県・湖沼 2011.9/28) 湖沼、河川、水路などに生育する多年草で、生育形は沈水〜浮葉、ときに陸生形をとり適応範囲は広い。 比較的流れのある場所を好むようで、流水中に生育するものの水中茎は、長さ3mを超えることがある。 根茎は径約2mmで白色円柱状、地中を横走し、各節からひげ根を多数出して水中茎を生じる。 水中茎は円形、多少分枝し、葉は互生するが、花茎をあげる節からは葉を偽対生する。 葉柄は長さ2〜15cm、沈水葉の葉身は長楕円状線形〜狭披針形、長さ5〜30cm、幅1〜2.5cm、 先端はふつう急に狭くなり、鋭頭で、芒状に突出する。葉縁には1細胞からなる鋸歯がある。托葉は長さ3〜8cm。 浅水域などでは、時に上部の葉が浮葉化する。 浮葉は長さ6〜15cm、幅1.5〜3cm、しばしば表皮のクチクラ層は不完全。 水が干上がると、陸生形となって生存。冬期には根茎の先端に殖芽を形成して越冬する。 花期は夏。花茎は長さ4〜11cm、花穂の長さ2〜5cm、暗緑色。花は4心皮からなり、雌蕊柱頭は4個。 果実は堅果で、広卵形、長さ3〜3.5mm、幅2〜3mm。 似たものに利根川水系の湖沼と九州北部の溜池に稀産するガシャモク(P. dentatus)がある。 かつては琵琶湖内湖にも分布していたが、現在では絶滅したとされる。 ササバモに似るが、葉身は狭長楕円形で長さ5〜12cm、幅1.2〜2.5cmで、葉柄はほとんどないか、1cm以下と短い。 干上がっても陸生形はつくらず、浮葉も出さない。 ササバモとガシャモクが混生する場所では種間雑種のインバモ(ヒロハノササバモ)(Potamogeton × inbaensis)が見られることがある。 インバモは両種の中間的な形質をもつ。 近似種 : ヒルムシロ、 フトヒルムシロ、 オヒルムシロ、 エビモ、 ヤナギモ、 オオササエビモ ■分布:北海道、本州、四国、九州 ・ アジア東部、インド、ニューギニア ■生育環境:湖沼・用水路・河川と、その生育環境は幅広い。 ■花期:7〜9月 ■西宮市内での分布:市街地の側溝1ヶ所で生育していたが、2010年の春に暗渠化されて絶滅した。 武庫川対岸の水路に見られることから、武庫川から取水する市内の水路を調べてみたが、発見できなかった。 |
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↑Fig.3 ササバモの沈水形の標本。(滋賀県・湖沼 2011.9/28) 葉は互生し、葉柄があり、花茎の出る節では偽対生する。 |
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↑Fig.4 ササバモの沈水葉。(岡山県真庭市・用水路 2006.9/27) 葉先は鋭頭で、先端は芒状に突出する。 |
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↑Fig.5 浅水域で見られる浮葉。(西宮市・市街の側溝 2006.8/20) 浮葉のクチクラ層は不完全であることが多い。 葉先は沈水葉と同様、先端が芒状に突出することにより、ヒルムシロと区別できる。 |
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↑Fig.6 陸生形。(滋賀県・琵琶湖湖岸 2007.11/4) 干上がった湖沼や溜池の岸辺では陸生形となって生き残る。 表土がひび割れるほど乾燥しなければ、根茎をのばして繁殖することもできる。 |
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↑Fig.7 開花したササバモ。(滋賀県・琵琶湖湖岸 2008.9/8) 湖岸に漂着していた切れ藻でやや新鮮さに欠けるが、花茎の様子などは明瞭に判る。 花茎は細長く、茎の先端近くの葉腋から出る。 |
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↑Fig.8 結実した花穂。(滋賀県・琵琶湖湖岸 2011.8/18) 結実率は良く、堅果が多数つく。 |
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↑Fig.9 果実。(滋賀県・琵琶湖湖岸 2011.8/18) 堅果は広卵形、長さ3〜3.5mm、幅2〜3mm、表面に網目模様がある。 画像の果実表面の緑色部分は、淡水カイメンが付着している。 |
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↑Fig.10 Potamogeton近縁6種。(滋賀県・琵琶湖湖岸 2011.8/18) オオササエビモに似るが、より大型で葉先は芒状に突出する。 |
西宮市内での生育環境と生態 |
Fig.11 市街の側溝でかろうじて生き残るササバモ。(西宮市 2006.11/19) 現在のところ、市内で唯一、ササバモが確認できた場所である。 市街地のこのような側溝は、雨後に大量の雨水が奔流となって流れ下り、秋期の渇水期には干上がることが多く、 水草にとっては過酷な環境であり、生育基盤は脆弱だと言わざるをえない。 渇水時には陸生形や殖芽を形成することによりかろうじて生き残っているのだろう。 側溝は3面コンクリで固められているが、底面のコンクリートは改修されたことがないようでかなり古く、老朽化してひび割れた隙間があり、 ササバモはその割れ目から茎を伸ばしている。 台風や大雨などで大水が出て水中茎が流されても、やがて復活するのは、おそらく底面のコンクリートの下で、 かなりの量の根茎が横走しているためだろう。 底面の表土が剥き出しになっていれば、根茎ごと流されたはずである。 このような場所でササバモが生き残るのための条件が、奇跡的に揃っているということになる。 2009年2月現在、この側溝は暗渠化の工事が進行中で、もはやこのササバモも消滅寸前となっている。 いまのところ、市内では他に個体群を発見できていない。西宮最後のササバモは風前のともしびである。 この集団は2010年春に、水路の暗渠化により絶滅した。 |
他地域での生育環境と生態 |
Fig.12 湧水起源の清流で生育するササバモ。(滋賀県 2008.9/8) ササバモは清流からやや冨栄養な環境まで幅広く見られる水草である。 ここではセンニンモ(上の赤味を帯びた草体)とともに生育していた。 |
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Fig.13 陸生形で群生するササバモ。(滋賀県 2008.9/8) Fig.7と同一河川内の干上がった部分に見られた。 同じ流水中で見られたセンニンモではこのような陸生形は形成せず、地上部は枯れてしまい地下の根茎で耐え忍ぶ。 |
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【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 大滝末男, 1980. ササバモ. 大滝末男・石戸忠 『日本水生植物図鑑』 242〜243. 北隆館 山下貴司, 1982. ヒルムシロ科ヒルムシロ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)『日本の野生植物 草本T 単子葉類』 p.10〜12. pls.6〜9. 平凡社 北村四郎, 2004 ヒルムシロ科ヒルムシロ属. 北村四郎・村田源・小山鐡夫 『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 p.411〜418. pls.106〜107. 保育社 角野康郎, 1994 ササバモ. 『日本水草図鑑』 p.37. pls.39. 文一統合出版 内山寛. 2001. ヒルムシロ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 178〜183. 神奈川県立生命の星・地球博物館 村田源. 2004. ササバモ. 『近畿地方植物誌』 199. 大阪自然史センター 角野康郎, 1984. ヒルムシロ属同定の実際 (2)広葉性の沈水植物. 水草研究会会報 16:6〜11 角野康郎, 1983. 手賀沼にもあったヒロハノササバモ. 水草研究会会報 14:15. 角野康郎, 1985. 冬期の水位低下がササバモとコウガイモの殖芽に及ぼす影響. 水草研究会会報 19:13〜14 松岡成久, 2010. ササバモ. 西宮市産植物補遺、並びに西宮市内に生育する要注目種(その2). 兵庫県植物誌研究会会報 85:5. 兵庫県植物誌研究会 角野康郎・高野温子 2007. ササバモ. 兵庫県産維管束植物9 ヒルムシロ科. 人と自然18:89. 兵庫県立・人と自然の博物館 最終更新日:11th.Oct.2011 |