オランダガラシ | Nasturtium officinale R. Br. | アブラナ科 オランダガラシ属 |
湿生〜抽水植物・帰化植物 要注意外来生物 |
Fig.1 (西宮市甲山町・渓流沿い 2007.4/20) 比較的都市近郊の日当たりの良い、渓流沿いの流れのゆるやかな場所や、岸辺に繁茂する多年草の帰化植物。 茎は中空で水に浮かび、分枝して茎下部の節から盛んに発根し殖える。 葉は奇数羽状裂葉で、裂片は3〜11個あり、頂小片と側小片はほぼ同じ大きさか、頂小片がわずかに大きい。 小片には光沢があり、卵形〜楕円形で、全縁〜波状縁となる。 花は直径約6mmで白色。雄蕊はふつう6個、雌蕊1個で、大きな柱頭が目立つ。 果実は長角果で、長さ1〜2cmの円柱形で、熟すと2裂する。 1870年頃、在留外人の食用として移入栽培されたとする説と、江戸時代にすでに移入されて栽培されていたとする説がある。 里山の渓流や用水路をオオカワジシャとともに埋め尽くす外来種として、在来種にかかる淘汰圧は見過ごせないものがある。 清浄な環境下で育成されたものは、美味なサラダ用野菜として利用価値があるが、市内で野生化しているものに関しては 寄生虫の温床ともなりうるので生食は避けたほうが良い。 日本国内ではステーキなどの付け合せとして少量が用いられることが多いが、ヨーロッパでは生食のサラダ用として安価で大量にでまわる。 オランダガラシの近縁種としては、他にコバノオランダガラシ(N. microphyllum)、ニセオランダガラシなどが国内に帰化している。 近似種 : オオバタネツケバナ、 ニシノオオタネツケバナ、 ミズタネツケバナ、 タネツケバナ、 ミズタガラシ ■分布:ヨーロッパ〜中央アジア原産・帰化種 ■生育環境:渓流畔、用水路など。 ■花期:5〜6月 ■西宮市内での分布:市内全域に見られるが、六甲山系の中腹以下の渓流に多く、各所で在来種の生育地を被植しつつある。 |
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↑Fig.2 葉は茎に互生し、葉身は羽状裂葉。(西宮市甲山町・渓流沿い 2007.4/20) 頂小片は側小片よりもわずかに大きいか同長、両小片ともに卵形〜楕円形で、側小片は全縁〜波状縁。 日当たりよく栄養状態のよいものは、画像のように茎が赤味を帯び、葉面が強い光沢を帯びる。 |
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↑Fig.3 普通、雄蕊6本で時に5本。雌蕊は1本で柱頭が大きく目立つ。(西宮市甲山町・渓流沿い 2007.4/20) 沢山ついている花のうち、花の中心が紫褐色を帯びるものは受粉が済んだもので、蜜の分泌は止まっている。 わずかに3つの花が生殖活動を行っていて、蜜が出ているのもこの3花だけである。 |
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↑Fig.4 冬期に用水路内で生育するオランダガラシ。(西宮市塩瀬町名塩・用水路 2008.2/25) 沈水、抽水状態では冬期も茎を伸ばして生長する。 |
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↑Fig.5 ロゼットを形成したオランダガラシ。(西宮市甲山町・渓流 2008.2/7) オランダガラシは西日本では冬期も水中で茎を伸ばして生長することが多いが、水際や陸上などではロゼットを形成する。 頂小片はほとんど円形で大きく、側小片の2〜2.5倍長。側小片は1〜2対あり、卵形。 |
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↑Fig.6 ロゼットを形成しながら冬期に生長するオランダガラシ。(西宮市・武庫川河川敷 2008.12/23) ロゼットの基部から走出枝を出して地表に広がる。走出枝には葉がまばらにつき、側小片は0〜2対で小さい。 陸上で冬期でも生長が見られるロゼットでは、ロゼット葉には側小片が1〜5対見られ、頂小片は腎円形〜円形で側小片より大きなものが多い。 |
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↑Fig.7 湧水池で浮葉状に葉を展開したオランダガラシ。(篠山市・湧水池 2008.3/25) 春先の花茎を伸ばす直前の時期には、様々な姿のオランダガラシを見ることができる。 流れのない湧水池では、まるで浮葉のような新しい葉を展開していた。 |
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↑Fig.8 排水路で沈水状態で生育するオランダガラシ。(滋賀県高島市・排水路 2012.9/7) 早い流れの湧水の流入のある排水路で、沈水状態で生育する集団。 |
西宮市内での生育環境と生態 |
Fig.9 渓流畔を埋め尽くしたオランダガラシ群落。(西宮市甲山町・渓流沿い 2007.4/20) この状況では他種が入り込むような隙がない。 |
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Fig.10 セリと同所的に生育するオランダガラシ。(西宮市甲山町・渓流沿い 2008.2/7) 画像上の抽水状態で生育しているのがオランダガラシで、セリは河畔の砂上に群生している。 今後、どちらが優勢となるのか観察してゆきたい。 |
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【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 北村四郎・村田源, 2004. オランダガラシ. 『原色日本植物図鑑 草本編(2) 離弁花類』 p.177〜178. pl.42. 保育社 大滝末男, 1980. オランダガラシ. 大滝末男・石戸忠 『日本水生植物図鑑』 80〜81. 北隆館 長田武正・長田喜美子, 1984. オランダガラシ. 『野草図鑑 8 はこべの巻』 30〜33. 保育社 田中肇, 1997 昆虫の視覚. 『エコロジーガイド 花と昆虫がつくる自然』 22〜32. 保育社 清水矩宏・森田弘彦・廣田伸七. 2001. オランダガラシ. 『日本帰化植物写真図鑑』 107,496. 全国農村教育協会 中井秀樹. 2001. オランダガラシ. 清水建美(編)『日本の帰化植物』 p.92. pl.33. 平凡社 小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. オランダガラシ. 『六甲山地の植物誌』 130. (財)神戸市公園緑化協会 村田源. 2004. オランダガラシ. 『近畿地方植物誌』 103. 大阪自然史センター 最終更新日:2nd.Mar.2014 |