ウマノアシガタ | Ranunculus japonicus Thunb. | キンポウゲ科 キンポウゲ属 キンポウゲ亜属 |
湿生植物 |
Fig.1 (西宮市・水田の土手 2015.4/21) |
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Fig.2 (兵庫県篠山市・クリ園の排水路脇 2013.4/9) 水田の畦、農耕地周辺の湿地、中栄養な溜池畔に生える多年草。 里山のような2次的自然環境が比較的良好に残された農耕地周辺に多く見られる。 茎は高さ30〜70cmになり、開出毛を密生し、中部以上でよく分枝し、草体が大きくなると他の植物に寄りかかったり倒れこむことも多い。 根生葉は開出毛のある柄があり、腎円形で3〜5中〜深裂、裂片はさらに2〜3浅〜中裂して、不ぞろいな鈍鋸歯がある。 葉身には両面に伏せ毛があり、幅4〜8cm、基部は心形となる。 茎につく葉は3深裂し、裂片は3中裂、縁には鋸歯があり、幅5〜9cm。茎上部では裂片は線形となり、全縁。 ロゼット形で常緑で越冬し、春になると花茎を伸ばして開花する。 萼片は5個で舟形、背面には長毛がある。花弁は5個、黄色で光沢があり、広倒卵形または倒卵形、長さ8〜11mm。 雄蕊は多数。花柱は短く、少し外曲する。集合果は球形で、痩果は倒卵円形で、長さ2〜2.5mm。 雄蕊が花弁化して八重咲きとなる品種をキンポウゲ(金鳳花)(f. pleniflorus)といい、江戸時代から栽培されてきた。 花期のはじまりは同属のタガラシ、キツネノボタンやケキツネノボタンよりも遅い。 花は同所的な環境でも見られるキツネノボタン、ケキツネノボタン、シマキツネノボタンなどの同属のものと似るが、 根生葉には明らかな違いがあり同定は容易。 近似種 : キツネノボタン、 ケキツネノボタン、 オトコゼリ、 トゲミノキツネノボタン、 タガラシ ■分布:日本全土 ■生育環境:水田・農耕地周辺の湿地、中栄養な溜池畔。 ■花期:4〜7月 ■西宮市内での分布:北部の棚田周辺に普通。 |
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↑Fig.3 花冠の拡大。(西宮市・溜池畔 2007.4/30) ふつう5枚の花弁からなり、広倒卵形で縁には不規則な浅い切れ込みが1〜3ヶ所あり、表面には強い光沢がある。 画像にも見られるように花弁の下部は蜜によるものなのか、やや濃いシミが出来ているのをよく眼にする。 画像からは覗いにくいが、萼片には長い毛を密生する。 ウマノアシガタは雄蕊が花弁化する傾向があり、それが顕著な場合は八重咲きとなり、 「金鳳花」と称する園芸品種として栽培されているものもある。 |
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↑Fig.4 花茎を上げて開花直前の個体。(西宮市・溜池畔 2007.4/30) 花茎に付く葉身は根生葉に比べて切れ込みが多くなり、切れ込む深さの度合いも深い。 花茎の最上部に付く葉は葉柄がなく不定形で、強いて特徴を見出そうとすれば、花茎が葉身の基部から生じているように見える。 |
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↑Fig.5 水田の畦の刈り込み後に新たに抽出した根生葉の様子。(西宮市・水田の畦 2007.4/30) 田植え期の刈り込みは本種の種子形成期にあたることが多く、種子を落とされて余力を残したウマノアシガタは 厚味と光沢のある子供の手のひら大の葉身を付け、冬期に見られる毛深いロゼットと較べると、別種のようにも見える。 根生葉は花茎に付く葉に比べて切れ込みが少なく、深さも浅い。したがって葉身の面積は広く、光合成のためには有利であると考えられる。 花茎に付く葉の切れ込みが多く深くなるのは、より下部につく葉や根生葉に光を多少でも届かせるようにするための工夫だろうか。 *注:画像右側には、ボタンヅル(キンポウゲ科センニンソウ属)の3出複葉の葉身も写り込んでいるので注意。 |
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↑Fig.6 ウマノアシガタの果実。(西宮市・棚田の用水路脇 2007.5/13) 果実は球形で、長楕円形のタガラシと容易に区別できる。 また、種子の先端部が尖ったり突出湾曲しない点や、横の膨らみが顕著な点ででキツネノボタンやケキツネノボタン、シマキツネノボタンとの区別ができる。 |
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↑Fig.7 越冬期のロゼット。(西宮市・水田の畦 2008.2/1) 冬期には長い葉柄を持った根生葉をロゼット状に広げる。 低温に対処するためだろう、Fig.4の根生葉に比べて葉柄には開出毛が目立つ。 |
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↑Fig.8 春先の様々なロゼット葉。(西宮市・水田の畦 2009.3/7) 春先に出た新葉は個体によって様々な文様があり、それを見て廻るだけでも多様な個性があることが判る。 |
西宮市内での生育環境と生態 |
Fig.9 休耕田脇の中栄養な溜池畔に生育するウマノアシガタ。(西宮市・溜池畔 2007.4/30) 周辺ではミソハギ、ケキツネノボタン、チゴザサ、ミミナグサ、ツボスミレなどが見られる。 |
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Fig.10 棚田の広がる里山の、湧水が滲み出す農道脇に生育するウマノアシガタ。(西宮市・農道脇 2007.5/17) 農道脇の棚田斜面の下部に湧水の見られる場所で、ウマノアシガタはマツバスゲの群落中に見られる。 この棚田斜面にはワレモコウ、カラマツソウ、クルマバナ、アキノタムラソウといったような里山を彩る草本が豊富だった。 |
他地域での生育環境と生態 |
Fig.11 溜池畔のウマノアシガタ群落。(兵庫県丹波市・溜池畔 2010.5/14) 山際に造られた比較的大きな溜池畔に湧水湿地が形成され、ウマノアシガタの群落が見られた。 画像中にはウマノアシガタのほか、ミゾハギ、セリ、ミゾソバ、ニョイスミレが見られ、他にオオバタネツケバナ、ヘビイチゴ、ミズユキノシタ、タチカモメヅル、コジュズスゲ、 ゴウソ、ヤマアゼスゲ、アゼスゲ、ヤワラスゲ、ムツオレグサ、ヒメシダなどが見られた。この他にも草原性草本であるコカモメヅルも生育していた。 |
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Fig.12 溜池土堤直下のウマノアシガタ群落。(兵庫県丹波市・溜池土堤直下 2013.4/23) 山際の溜池土堤の護岸直下にウマノアシガタが帯状に群生していた。 護岸の最下から浸出する浸透水により水分供給を受けて湿った場所を好む草本が生育している。 スギナ、ヤハズエンドウ、スズメノエンドウ、ギシギシ、スイバ、アリアケスミレ、ミミナグサ、アオスゲなどが生育している。 |
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【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 田村道夫・清水建美, 1982. キンポウゲ科キンポウゲ属キンポウゲ亜属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編) 『日本の野生植物 草本2 離弁花類』 p.77〜79. pls.75〜79. 平凡社 北村四郎, 2004 キンポウゲ科キンポウゲ属. 北村四郎・村田源『原色日本植物図鑑 草本編(2) 離弁花編』 p.240〜248. pl.55. 牧野富太郎, 1961 ウマノアシガタ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 181. 北隆館 城川四郎. 2001. キンポウゲ科キンポウゲ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 701〜705. 神奈川県立生命の星・地球博物館 長田武正・長田喜美子, 1984 ウマノアシガタ. 『野草図鑑 6 おきなぐさの巻』 p.145. pl.143. 保育社 小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. ウマノアシガタ. 『六甲山地の植物誌』 121. (財)神戸市公園緑化協会 村田源. 2004. ウマノアシガタ. 『近畿地方植物誌』 111. 大阪自然史センター 小菅桂子・黒崎史平・高野温子 2001. ウマノアシガタ. 兵庫県産維管束植物3 キンポウゲ科. 人と自然12:137. 兵庫県立・人と自然の博物館 最終更新日:20th.June.2015 |