タガラシ | Ranunculus sceleratus L. | キンポウゲ科 キンポウゲ属 キンポウゲ亜属 |
湿生植物 |
Fig.1 (西宮市・休耕田 2007.4/29) |
||
Fig.2 (兵庫県加西市・水田 2013.4/4) 休耕田や用水路、水田、中栄養〜富栄養な溜池畔や湿地、溝などに普通な越年草。 茎はよく分枝し軟毛があり、上部に向かう程多くなる。 根生葉はやや肉質、光沢があり、ほとんど無毛、腎形で掌状に3〜5中裂または深裂し、 裂片はさらに3〜5浅裂して先は円く、幅3〜7cm。 茎葉は互生して、上部のものほど葉柄は短く、3深裂し、裂片の幅は狭く、ときに2深裂、毛を散生する。 花柄は長さ1〜2.5cm。萼片5個、長さ3.5〜4mmで、背には毛が生え、反り返る。 花弁5個で、楕円形、黄色で光沢があり、長さ3.5〜4mm、基部に蜜腺がある。 雄蕊多数、葯は1mm。花床は花後に伸びて長楕円形、長さ8〜10mm、無毛または白毛を散生する。 果実は痩果が多数密に集まった集合果。痩果は広倒卵形、無毛、長さ1〜1.2mm。 キツネノボタンとの雑種と推定されるものにキツネノタガラシ(R. sceleratus×silerifolius)があり、両種との中間的な形質をもち、 正常な果実は形成せず不稔であるという。 近似種 : キツネノボタン、 ケキツネノボタン、 オトコゼリ、 トゲミノキツネノボタン、 ウマノアシガタ ■分布:北海道、本州、四国、九州 ・ 北半球に広く分布 ■生育環境:休耕田や用水路、水田、中栄養〜富栄養は溜池畔や湿地、溝など。 ■花期:4〜5月だが、秋冬の10〜12月に開花するものも多い。 ■西宮市内での分布:山地帯を除いた市内全域に分布し、平野部に多い。 |
||
↑Fig.3 タガラシの花序。(西宮市・休耕田 2008.4/25) 上の2つは開花中。下のものは花後で花床が伸びはじめている。 |
||
↑Fig.4 横から見た花。(西宮市・休耕田 2010.3/26) 上の花は雄蕊が葯を放出し終わって四方に倒れて花床がふくらみ始め、右の花はこれから葯が開くところである。 |
||
↑Fig.5 花冠。(西宮市・休耕田 2007.4/29) 花は径8mm前後。花弁の基部には蜜腺があって、花弁に浸透していることが多い。 |
||
↑Fig.6 集合果。(西宮市・休耕田 2008.4/25) 痩果が多数密集して、伸びた花床につく。 |
||
↑Fig.7 茎には軟毛がまばらに生える。(西宮市・河川 2008.4/22) 軟毛は茎の上部に向かうほど多くなる。 |
||
↑Fig.8 ロゼットを形成して越冬する。(西宮市・休耕田 2008.2/7) 根生葉は基本的には3中〜深裂し、側裂片がさらに切れ込んで5裂しているように見えるものもある。 このようなロゼットを水槽中で育成したところ、水中葉は生じることなく、葉柄が水面にまで伸び、浮葉を形成した。 その後、花茎は水面上まで伸びて気中での開花が見られた。 |
||
↑Fig.9 早春に発芽した幼苗。(西宮市・休耕田 2009.3/1) 本葉は3浅裂し、葉先はとがらない。キツネノボタン類やオトコゼリでは初期の本葉でも先がとがる。 ただしトゲミノキツネノボタンはこれと似た幼苗かもしれないので、一度観察してみたい。 |
西宮市内での生育環境と生態 |
Fig.10 休耕田のもとは水路だった場所に生育するタガラシ。(西宮市・休耕田 2007.4/29) 同所的にクサヨシ、イグサ、ゴウソ、カワラスガナ、ムシクサ、ケキツネノボタン、トキワハゼ、セリ、コモチマンネングサ、コウガイゼキショウ などの湿生植物が生育する。 |
||
Fig.11 溜池直下の休耕田の水路に生育するタガラシ。(西宮市・休耕田 2010.3/26) 溜池直下に掘られた排水路内に群生していた。排水路内には溜池からの浸透水が湧出している。 水路内にはミズハコベ、ムツオレグサ、スズメノテッポウ、コウガイゼキショウ、ホソイ、クサイなどが生育する。 |
||
【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 田村道夫・清水建美, 1982. キンポウゲ科キンポウゲ属キンポウゲ亜属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編) 『日本の野生植物 草本2 離弁花類』 p.77〜79. pls.75〜79. 平凡社 北村四郎, 2004 キンポウゲ科キンポウゲ属. 北村四郎・村田源『原色日本植物図鑑 草本編(2) 離弁花編』 p.240〜248. pl.55. 牧野富太郎, 1961 タガラシ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 180. 北隆館 城川四郎. 2001. キンポウゲ科キンポウゲ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 701〜705. 神奈川県立生命の星・地球博物館 長田武正・長田喜美子, 1984 タガラシ. 『野草図鑑 6 おきなぐさの巻』 p.152. ps.150. 保育社 小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. タガラシ. 『六甲山地の植物誌』 121. (財)神戸市公園緑化協会 村田源. 2004. タガラシ. 『近畿地方植物誌』 111. 大阪自然史センター 小菅桂子・黒崎史平・高野温子 2001. タガラシ. 兵庫県産維管束植物3 キンポウゲ科. 人と自然12:138. 兵庫県立・人と自然の博物館 最終更新日:7th.Mar.2014 |