ボントクタデ Persicaria pubescens  (Blume) Hara. タデ科 イヌタデ属
湿生植物
Fig.1 (西宮市・湿田 2007.10/11)

Fig.2 (兵庫県姫路市・用水路脇 2013.9/24)

中栄養な湿地、湿田、休耕田、溜池畔などの水辺に生育する1年草。高さは50〜100cmになる。
頂部の花序は長く垂れ、疎らに小花を付け、花被は5つで白〜淡紅色で基部は緑色を帯びることが多い。
茎は円柱形で赤味を帯びることが多く、伏毛を散生する。
葉は広披針形で短い葉柄があり、両面の脈上と辺縁に伏せ毛がある。葉の表面中央部には「八」の字型の暗斑を有することが多い。
托葉鞘は筒状。縁毛は筒部の約1/2の長さ。筒部にも伏せ毛がある。

近縁種のヤナギタデと似るが、茎や葉の脈上や辺縁、托葉鞘基部に伏せ毛がある点、ヤナギタデのような辛味がないことなどで区別は容易。
近似種 : ヤナギタデサイコクヌカボハルタデサナエタデイヌタデ

■分布:本州、四国、九州、沖縄 ・ 中国、マレーシア、インド
■生育環境:湿地、水田、溜池畔などの水辺。
■花期:9〜10月
■西宮市内での分布:北部の棚田周辺で見られるが多くはない。

Fig.3 ボントクタデの花序。(西宮市・湿田 2007.10/11)
  花序中軸の鞘に2〜4花付く。花被の外側は鮮紅色で良く目立つ。

Fig.4 茎は赤味を帯び、表面には上向きの伏毛を散生する。(西宮市・湿田 2007.10/11)

Fig.5 葉の両面の脈上と辺縁には伏毛があり、ヤナギタデとの区別点となる。(西宮市・湿田 2007.10/11)
  葉身はヤナギタデよりも丸みを帯び、葉幅が広く感じられ、画像のものには見られないが、「八」の字型の暗班を有することが多い。

Fig.6 托葉鞘は筒状。縁毛は筒部の約1/2長。鞘の基部と、上部には伏毛が見られた。(西宮市・湿田 2007.10/11)
  上部の伏毛は疎らで、やや粗い。

Fig.7 上:種子は花被に包まれたまま落花する。(西宮市・湿田 2007.10/11)
  中:花被を取り除くと種子が現れる。種子は黒色で3稜あり、長さ3mm前後。
  下:種子の表面にはほぼ四角形の網目模様があり、隆起は明瞭。

Fig.8 大きく成長した個体。(西宮市・休耕田 2010.9/20)

西宮市内での生育環境と生態
Fig.9 休耕田で見られたボントクタデ。(西宮市 2007.10/14)
オオイヌタデとイヌタデが優勢な休耕田で、数株のボントクタデが生育していた。
やや乾いた立地の休耕田であり、ヤナギタデは見られず、他にはスイバとコゴメガヤツリが目立つ。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
北川政夫, 1982. タデ科イヌタデ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本2 離弁花類』 p.19〜24. pls.16〜22. 平凡社
北村四郎, 2004 タデ科タデ属. 北村四郎・村田源『原色日本植物図鑑 草本編(U) 離弁花類』 p.299〜316. pl.65. 保育社
牧野富太郎, 1961 ボントクタデ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 115. 北隆館
長田武正・長田喜美子, 1984 タデ科. 『野草図鑑 8 はこべの巻』 154〜160. 保育社
林辰雄. 2001. タデ科イヌタデ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 600〜616. 神奈川県立生命の星・地球博物館
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. ボントクタデ. 『六甲山地の植物誌』 110. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. ボントクタデ. 『近畿地方植物誌』 119. 大阪自然史センター

最終更新日:26th.July.2014

<<<戻る TOPページ