コホタルイ (マンシュウホタルイ) | Schoenoplectiella komarovii (Roshev.) J.D.Jung et H.K.Choi | カヤツリグサ科 ホソガタホタルイ属 |
湿生〜抽水植物 |
Fig.1 (滋賀県・休耕田 2014.9/8) |
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Fig.2 (滋賀県・休耕田 2014.8/31) 休耕田や湿地に生える1年草、または多年草。叢生する。 有花茎は高さ20〜50cm、やや細い円柱形で、黄緑色〜緑色、平滑で稜や条線は不明瞭。 基部の鞘は淡褐色〜褐色で長さ8〜12cmと長く、膜質で、口部は斜め切形。苞の葉身は1個で、有花茎に続き長い。 花序は仮側生し、多数の無柄の小穂からなり、小穂は卵形、長さ5〜8mm、やや鋭頭、または鈍頭、淡緑色〜淡褐色。 鱗片は卵形で、長さ2.5〜3mm、中央は緑色でその両側は褐色を帯び、円頭で微突端。 痩果は広倒卵形で、暗褐色、長さ約1.2〜1.5mm。刺針状花被片は4〜5個付き、痩果の1.5倍以上、下向きの小刺がある。 柱頭は2岐。染色体数2n=38。 ホタルイ(S. juncoides)は花序につく小穂は1〜5個で、卵形、長さ8〜15mm。痩果は約2mm。柱頭は3岐する。 イヌホタルイ(S. juncoides)は花序につく小穂は2〜9個で、狭楕円形、長さ1〜2cm。痩果は約1.5mm。柱頭はほとんどのものが2岐する。 タイワンヤマイ(S. wallichii)は、ホタルイに似るが、花序の上方に伸びる苞葉が長く、6〜16cmあり、小穂は披針形で長い。 小穂は熟しても緑色を保ち、雌蕊柱頭は2岐、痩果につく刺針状花被片は、痩果の1.5〜1.7倍長。 ミヤマホタルイ(S. hondoensis)は高層湿原に出現し、花序の小穂は2〜4個つき、長さ4〜8mm。痩果は1.5〜1.8mm。柱頭は3岐する。 近似種 : イヌホタルイ、 ホタルイ、 タイワンヤマイ、 ミヤマホタルイ、 シズイ、 ヒメホタルイ、 コツブヒメホタルイ ■分布:北海道、本州(近畿地方以北) ・ 朝鮮半島南部、中国東北部、ロシア極東部 ■生育環境:休耕田や湿地など。 ■花期:7〜10月 ■西宮市内での分布:産しない。これまで近畿地方では未記録だったが、滋賀県北部で新たに自生地を発見した。 |
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↑Fig.3 全草標本。(滋賀県・休耕田 2014.9/8) 植物体は叢生し、有花茎は高さ20〜50cm、やや細い円柱形で、ホタルイやイヌホタルイよりも柔らかく、折れ曲がりやすい。 採集して1日経った標本のため、有花茎は乾燥して白味を帯びてしまっている。生時は黄緑色〜緑色で光沢がある。 |
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↑Fig.4 基部。(滋賀県・休耕田 2014.9/8) 基部の鞘はふつう2〜3個つき、淡褐色〜褐色で、長さ8〜12cmとホタルイやイヌホタルイよりも長く、膜質、口部は斜め切形。 |
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↑Fig.5 苞。(滋賀県・休耕田 2014.9/8) 苞は有花茎の先に続き、草体と比較して長い。 |
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↑Fig.6 有花茎の横断面。(滋賀県・休耕田 2014.9/8) 左は茎中部、右は基部から上10cmの横断面。やや細く、おおむね円形である。 |
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↑Fig.7 有花茎の縦断面。(滋賀県・休耕田 2014.9/8) 縦の連続した膜質の隔壁と、横方向の不連続な膜質の隔壁のほか、綿毛状の組織が見える。 |
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↑Fig.8 花序。(滋賀県・休耕田 2014.8/31) 花序は仮側生し、多数の無柄小穂が集まってつく。小穂は淡緑色〜淡褐色。 |
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↑Fig.9 小穂。(滋賀県・休耕田 2014.9/8) 小穂はホタルイやイヌホタルイよりも小さく、卵形、長さ5〜8mm、やや鋭頭、または鈍頭 |
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↑Fig.10 鱗片。(滋賀県・休耕田 2014.9/8) 鱗片は卵形で、長さ2.5〜3mm、中央は緑色でその両側は褐色を帯び、円頭で微突端。 |
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↑Fig.11 痩果。(滋賀県・休耕田 2014.9/8) 痩果は凸レンズ状広倒卵形で、暗褐色、長さ約1.2〜1.5mm。刺針状花被片は4〜5個付き、痩果の1.5倍以上、下向きの小刺がある。 |
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↑Fig.12 柱頭は2岐する。(滋賀県・休耕田 2014.9/8) |
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↑Fig.13 痩果の拡大。(滋賀県・休耕田 2014.9/8) 表面は平滑で光沢があり、微細な縦条線が見える。 |
生育環境と生態 |
Fig.14 休耕田で生育するコホタルイ。(滋賀県・休耕田 2014.9/8) 降雨後は湛水状態となる地下水位の高い休耕田に20個体あまりのコホタルイが点在していた。 高茎草本ではカンガレイが優占し、中層ではホタルイ、シカクイ、ナガバノウナギツカミ、アメリカセンダングサが優占する。 休耕当年はコナギ、イボクサ、マルバノサワトウガラシなどの一年生草本が群生していたが、これらのうち今ではイボクサがわずかに見られる。 現在は休耕3年目であり同所的にハリイ、カワラスガナ、コアゼガヤツリ、タイヌビエ、ガマ、ヘラオモダカ、コケオトギリ、キクモ、ヒメジソ などが見られ、隣接する休耕田ではミズワラビ、オグルマ、ゴキヅル、コバノカモメヅル、シカクホタルイ、サンカクホタルイなどが生育し、植生豊富である。 |
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【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 大井次三郎, 1982. カヤツリグサ科ホタルイ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編) 『日本の野生植物 草本1 単子葉類』 p.176〜179. pls.160〜162. 平凡社 小山鐡夫, 2004 カヤツリグサ科ホタルイ属. 北村四郎・村田源・小山鐡夫 『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 p.212〜217. pls.54〜55. 保育社 星野卓二・正木智美・西原真理子. 2011. ホタルイ属. 『日本カヤツリグサ科植物図譜』 670〜687. 平凡社 最終更新日:12th.Sept.2014 |