シズイ Schoenoplectus nipponicus  (Makino) Sojak カヤツリグサ科 フトイ属
抽水植物  兵庫県RDB Bランク種
Fig.1 (西宮市・溜池畔 2010.9/20)

Fig.2 (西宮市・溜池畔 2007.8/2)

貧栄養な溜池の浅水域、湿地、休耕田、水田(とくに東北)などに生育する多年草。抽水植物。
地下に根茎があり、茎は直立して3稜形で高さ40〜80cm、幅2〜5mm。基部には根生葉が付く。根生葉の葉幅は2〜3mm。
花序は仮側生し、花序枝がある。花序枝は二又状に分かれ先に長さ8〜18mmの小穂をつける。
痩果は倒卵形の両凸のレンズ形で、長さ2.0〜2.5mm。4個の刺針状花被片がつく。
刺針状花被片は果実の倍以上長く、下向きの小刺がまばらに生える。
似た環境に生育するカンガレイやサンカクイなどと比べ、茎は細くスマートな印象を受け、草体は柔らかく、根生葉を持つ点が特徴。

本種は東北地方では水田の新たな強害草として問題となっているようだ。web検索すると、除草剤関係の記事が多数ヒットする。
しかし、それ以外の地域では分布は限られ、生育環境も水田や休耕田ではなく、貧栄養な溜池や湿地となり、web上でも絶滅危惧種の
記事が軒並み現れる。東北地方の個体群は、それ以外の地域のものとは違った形質を持っているようにも思えてしまう。
近似種 :サンカクイカンガレイハタベカンガレイツクシカンガレイヒメカンガレイイヌホタルイホタルイタイワンヤマイフトイオオフトイ

■分布:北海道、本州、四国、九州 ・ 中国
■生育環境:溜池、湿地、水田など。
■果期:7〜9月
■西宮市内での分布:限られた貧栄養な溜池に自生する。県内では稀で絶滅が危惧され、RDB Bランク種に指定されている。

Fig.3 開花初期のシズイ。(西宮市・溜池畔 2007.8/2)
  雌性先熟で、雌蕊の柱頭が鱗片の間から出ている。雌蕊柱頭は2岐し、小花の大きさに比して長い。

Fig.4 横から見た花序。果実形成期のもの。(西宮市・溜池畔 2007.8/2)
  花序は仮側生し、長い二又分岐する花序枝をもつ。
  苞葉は長さ15〜25cm。

Fig.5 小穂の拡大。(西宮市・溜池畔 2007.8/2)
  小穂は狭長楕円形で長さ8〜18mm、鋭頭。熟すと黄褐色を帯び、光沢がある。
  鱗片の背には竜骨があり、先端が短く突出した芒となる。


Fig.6 シズイの痩果。(西宮市・溜池畔 2007.8/2)
  痩果は倒卵形の両凸のレンズ形で、長さ2.0〜2.5mm。2岐する雌蕊柱頭は長い。
  刺針状花被片は4個つき、痩果の2倍以上の長さがあり、下向きの小刺がまばらに生える。
  痩果は濃褐色で、表面には縦に縮緬状の細かい皺があり、光沢はない。

Fig.7 稈の断面。(西宮市・溜池畔 2007.10/14)
  内部の隔壁はカンガレイと比較すると少ない。

Fig.8 地下にできた塊茎。(西宮市・溜池畔 2007.9/20)
  秋になると、稈の基部の根茎から、短い枝を分けて塊茎を形成する。
  冬期は地上部は枯れて、塊茎で越冬する。

Fig.9 成長初期。(西宮市・溜池畔 2009.5/29)
  越冬した塊茎は翌年4月下旬〜5月にかけて出芽する。有花茎に先立ち線形の葉を出す。
  画像中の緑色線形の葉はシズイのもの。水中で赤紫色を帯びやや密に線形の葉を生じているのはハリコウガイゼキショウ。

西宮市内での生育環境と生態
Fig.10 貧栄養な溜池の浅水域でまばらに群生するシズイ。(西宮市・溜池畔 2007.8/2)
個体数は少なめであるが、花茎の数は多かった。
周囲に見える浮葉はジュンサイのもの。池中には巨大なコイがいて、水生植物の植生は乏しい。
しかし、湿生植物ではホシクサ属合生萼節が4種、サワトウガラシ群落、ヒメゴウソなど、ここでしか見られないものがある。

Fig.11 貧栄養の小さな溜池で密に群生するシズイ。(西宮市・溜池畔 2007.8/31)
池の一角で密生していたが、花茎の数は少量であった。
株が密に混んでくると、開花が抑制されるのだろうか?
水面に見られる浮葉はフトヒルムシロのもの。ほかに、イヌタヌキモの群落、ニッポンイヌノヒゲ、イトイヌノヒゲ、カンガレイ、
モウセンゴケ、イヌノハナヒゲ、ホタルイなどの湿生植物が見られる。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
大井次三郎, 1982. カヤツリグサ科ホタルイ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本1 単子葉類』 p.176〜179. pl.160〜162. 平凡社
小山鐡夫, 2004 カヤツリグサ科ホタルイ属. 北村四郎・村田源・小山鐡夫 『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 p.212〜217. pl.54〜55. 保育社
牧野富太郎, 1961 シズイ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 765. 北隆館
角野康郎, 1994. カヤツリグサ科ホタルイ属. 『日本水草図鑑』 96〜102. 文一統合出版
堀内洋. 2001. カヤツリグサ科ホタルイ属(狭義). 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 435〜439. 神奈川県立生命の星・地球博物館
星野卓二・正木智美, 2003. ホタルイ属. 星野卓二・正木智美・西本眞理子『岡山県カヤツリグサ科植物図譜(U)』 120〜137. 山陽新聞社
谷城勝弘, 2007. フトイ属. 『カヤツリグサ科入門図鑑』 152〜164. 全国農村教育協会
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. シズイ. 『六甲山地の植物誌』 252. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. シズイ. 『近畿地方植物誌』 167. 大阪自然史センター
水田光雄. 2009. 宝塚市におけるシズイの分布. 兵庫県植物誌研究会・会報 78:2
黒崎史平・松岡成久・高橋晃・高野温子・山本伸子・芳澤俊之 2009. シズイ. 兵庫県産維管束植物11 カヤツリグサ科. 人と自然20:177.
       兵庫県立・人と自然の博物館

最終更新日:30th.Dec.2010

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