サンカクイ Schoenoplectus triqueter  (L.) Palla カヤツリグサ科 フトイ属
湿生〜抽水植物
Fig.1 (西宮市・武庫川河川敷 2007.8/9)

Fig.2 (京都府福知山市・休耕田 2015.2/29)

溜池畔、水路、河川敷、中栄養な湿地に生育する多年草。抽水状態でも見られる。
地下に横走する細長い根茎があり、節からふつう1本、ときに2本の茎を出す。幼形の葉は狭線形で3枚、後に3稜形の茎を出す。
茎は高さ50〜100cm、幅3〜9mmで、明瞭な3稜形で、辺の部分はやや外側に膨らみ、下方にいくほど円形に近づく。
基部には2〜3個の葉鞘があり、先端に2〜10cmの葉身がある。
花序は仮側生、4〜10個の小穂からなり、短い柄をもつものと、持たないものとがある。
苞葉の葉身は茎から続き、長さ2〜5cm。小穂は卵形で、長さ7〜12mm、茶褐色。雌蕊柱頭は2岐する。
痩果は倒卵形で、長さ2〜2.5mm。刺針状花被片は3〜5個、痩果とほぼ同長か、やや長く、下向きの小刺がある。

抽水状態のものはときに冬期でも常緑の場合がある。その場合は、葉鞘の葉身の有無を確認すれば近似種との区別がつく。
フトイとの種間雑種にコサンカクイS. ×arunensis)がある。3〜4稜形だが面はよくふくらみ、高さ約70cm、径5〜10mm。
小穂は数個、褐色、卵形、長さ約1cm。柱頭は2岐する。
近似種 :シズイカンガレイツクシカンガレイハタベカンガレイイヌホタルイホタルイタイワンヤマイフトイオオフトイ

■分布:日本全土、ユーラシア大陸全域
■生育環境:溜池畔、水路、河川敷、中栄養な湿地など。
■果実期:7〜9月
■西宮市内での分布:武庫川河川敷に多産するほかは、北部の池畔1ヶ所に見られるだけ。

Fig.3 基部の様子。(西宮市・武庫川河川敷 2007.8/9)
  地下に横走する根茎があり、節から1〜2本の茎をた立ち上げて群生をつくることが多い。
  基部の鞘には小さな葉身がつき、画像最左端のものが解りやすい。

Fig.4 出穂して開花直前の花序。(西宮市・武庫川河川敷 2007.8/9)
  花序は枝を持つものと、持たないものがあり、枝にも長短がある。
  花序がつく部分から上で、茎が苞葉に変わっている様子がわかる。

Fig.5 開花した花序。(西宮市・武庫川河川敷 2007.8/9)
  雄蕊の葯は茶褐色で、密集してはっきりとしないが、雌蕊は白色でよく目立ち、柱頭は2岐する。
  この画像の花序枝は、先の画像のものと比べて短い。  

Fig.6 小穂。小花は雌性先熟。(西宮市・池畔の湿地 2007.8/31)
  小穂上部は雌性期で、新鮮な雌蕊柱頭が見られ、中部以下では雄性期で葯と枯れた雌蕊柱頭が見える。
  鱗片は円頭だが、緑色の中肋が目立ち、上部でやや竜骨状に浮き出す。

Fig.7 果実期を迎えた花序。(西宮市・武庫川河川敷 2007.8/9)
  果実期には小穂は茶褐色になる。


Fig.8,9 痩果(上)と、その拡大(下)。(西宮市・池畔の湿地 2007.10/21)
  痩果は広倒卵形〜倒卵形で、2〜2.5mm。刺針状花被片は3〜5個つき、下向きの小刺がある。
  画像のものは上下ともに刺針状花被片は3個、小刺は他のフトイ属のものに比べ、大きく明瞭。
  痩果表面には、ごく細かい縦向きの縮緬状の皺がある。


Fig.10,11 茎の縦断面(上)と横断面(下)。(西宮市・池畔の湿地 2007.10/21)
  茎には縦の隔壁が多く、空隙にはごく細い綿毛状組織がまばらに散在する。横の隔壁は不連続でまばら。
  茎断面は3稜形で、辺の部分は外側にやや膨らむ。

西宮市内での生育環境と生態
Fig.12 武庫川河川敷のサンカクイ自生地。(西宮市・武庫川河川敷 2007.8/9)
生育立地条件が重なるヒメガマ、強外来種のコゴメイ、特定外来種のナガエツルノゲイトウと混生する。
一部では、サンカクイが密生する部分もあるが、たいていの場所では画像のようなせめぎ合いが見られる。
ナガエツルノゲイトウが繁茂するような場所でもサンカクイが生育できるのは、ナガエツルノゲイトウが地表を這う匍匐茎で
広がるのに対して、サンカクイは地中で横走する根茎によって生育場所を広げるからだろう。

他地域での生育環境と生態
Fig.13 休耕田に群生するサンカクイ。(兵庫県丹波市・休耕田 2010.9/5)
溜池直下にある休耕田の一画をサンカクイの群落が形成されていた。
サンカクイ群落中にはキツネノマゴ、ヤハズソウ、ヤブマメ、チゴザサ、キシュウスズメノヒエ、コブナグサ、アメリカセンダングサ、イヌビユが生育し、
サンカクイ群落の周辺部にはヒメシダ、ミソハギ、ミズガヤツリなどが生育していた。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
大井次三郎, 1982. カヤツリグサ科ホタルイ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本1 単子葉類』 pp.176〜179. pls.160〜162. 平凡社
小山鐡夫, 2004 カヤツリグサ科ホタルイ属. 北村四郎・村田源・小山鐡夫 『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 pp.212〜217. pls.54〜55. 保育社
牧野富太郎, 1961 サンカクイ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 764. 北隆館
大滝末男, 1980 サンカクイ. 大滝末男・石戸忠 『日本水生植物図鑑』 152,153. 北隆館
角野康郎, 1994. カヤツリグサ科ホタルイ属. 『日本水草図鑑』 96〜102. 文一統合出版
堀内洋. 2001. カヤツリグサ科ホタルイ属(狭義). 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 435〜439. 神奈川県立生命の星・地球博物館
星野卓二・正木智美, 2003. ホタルイ属. 星野卓二・正木智美・西本眞理子『岡山県カヤツリグサ科植物図譜(U)』 120〜137. 山陽新聞社
谷城勝弘, 2007. フトイ属. 『カヤツリグサ科入門図鑑』 152〜164. 全国農村教育協会
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. サンカクイ. 『六甲山地の植物誌』 253. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. サンカクイ. 『近畿地方植物誌』 167. 大阪自然史センター
黒崎史平・松岡成久・高橋晃・高野温子・山本伸子・芳澤俊之 2009. サンカクイ. 兵庫県産維管束植物11 カヤツリグサ科. 人と自然20:177.
       兵庫県立・人と自然の博物館

最終更新日:25th.Jul.2016

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