コシンジュガヤ Scleria parvula  Steud. カヤツリグサ科 シンジュガヤ属
湿生植物
Fig.1 (兵庫県三田市・溜池畔 2010.8/15)

Fig.2 (兵庫県加東市・湿地 2008.9/22)

湿地や湿原に生える1年草。
植物体は叢生し、高さ30〜60cm、3〜4個の節がある。
葉は幅3〜5mm、線形で、先は急にとがる。葉鞘には広い3翼があり、ゆるく茎を包む。
花序は3〜6個つき、まばらに小穂をつける。苞葉の葉身は葉状。
小穂は雄花と雌花に分かれ、ふつう雄花が頂生する。鱗片は狭卵形〜卵形、淡緑色、鋭頭で短い芒がある。
痩果は球形、幅約2mm、白色または茶褐色、細かい格子紋があり、まばらに短毛が生え、全体に光沢がある。
痩果の下部にある基盤の裂片は卵状楕円形で、上方は急にとがる。柱頭は3岐。

よく似たものにミカワシンジュガヤS. mikawana)があり、湿地に稀に成育する。
葉鞘には翼がなく、小穂は2〜3個ついて茎は直立する。痩果には毛がほとんどなく、窪んだ部分のみに光沢がある。
コシンジュガヤににて小型のものにケシンジュガヤS. rugosa)があり、湿地に成育する。
高さ20〜30cmで、草体は軟らかく、全体に白色の開出毛があり、小穂の柄は湾曲する。
また、ケシンジュガヤの毛のほとんどないものは、変種マネキシンジュガヤ(var. glabrescens)とされる。
大型の多年草シンジュガヤS. levis)は日当たりの良い湿った草地に生え、高さ70〜100cmとなり、葉鞘には広い翼がある。
近似種 : ミカワシンジュガヤマネキシンジュガヤケシンジュガヤシンジュガヤカガシラ

■分布:本州、四国、九州 ・ 朝鮮半島、中国、インドネシア、インド、アフリカ
■生育環境:湿地、湿原など。
■果実期:7〜10月
■西宮市内での分布:市内では北部の棚田周辺の湿地や湿った草地、甲山・仁川湿原周辺に生育する。

Fig.3 花茎。(兵庫県三田市・棚田斜面の小湿地 2008.9/28)
  花序は3〜6個つき、葉鞘には広い翼がある。

Fig.4 花序。(兵庫県三田市・棚田斜面の小湿地 2008.9/28)

Fig.5 小穂。(兵庫県三田市・湿地 2008.8/17)
  雄花と雌花があり、ふつう雄花は小穂に頂生する。
  鱗片は狭卵形〜卵形、鋭頭で短い芒がある。

Fig.6 痩果。(兵庫県三田市・湿地 2008.8/17)
  痩果には茶褐色(左)のものと白色(右)のものとがある。
  幅は約2mmで球形、表面には細かい格子紋があり、まばらに短毛が生え、全体に光沢がある。

Fig.7 コシンジュガヤの葉鞘。(兵庫県加東市・湿地 2008.9/22)
  葉鞘にはつねに3翼がみられ、茎をゆるく包む。

西宮市内での生育環境と生態
Fig.8 畦に生育するコシンジュガヤ。(西宮市・棚田の畦 2009.9/22)
棚田最上部の山肌の一部を削り取って作った水田の畦に生育している。
削り取った跡の土崖からは湧水がしみ出して素掘り排水路(画像右手)には常に水がたまっている。水田にする以前は湿地だったのだろう。
排水路脇にはミズスギ、モウセンゴケ、ヘラオモダカ、シロイヌノヒゲ、ホソバリンドウなどが生育している。

Fig.9 棚田の土手に生育するコシンジュガヤ。(西宮市・棚田の土手 2013.9/30)
棚田の土手の下部、水がしみ出すあたりにコシンジュガヤが生育していた。
同所的にマツバスゲ、ノテンツキ、テンツキ、オオチドメ、セリ、コブナグサ、ワレモコウ、サワヒヨドリなどが生育している。

他地域での生育環境と生態
Fig.10 棚田の斜面に生育するコシンジュガヤ。(兵庫県三田市・棚田斜面の小湿地 2008.9/28)
棚田斜面が湧水によって小湿地状となり、コシンジュガヤの生育が見られた。
画像の大型の線形の草体はヌマガヤ。他にヤマイ、テンツキ、イヌノハナヒゲ、コイヌノハナヒゲ、ヤマラッキョウ、ユウスゲ、コバギボウシ、
チゴザサ、アリノトウグサ、ノハナショウブ、ムカゴニンジン、サワシロギク、サワヒヨドリなどが生育している。

Fig.11 溜池直下の水路脇で群生するコシンジュガヤ。(兵庫県三田市・水路脇 2012.9/21)
ヒツジグサ、ジュンサイ、フトヒルムシロ、コマツカサススキなどが生育する貧栄養な溜池直下の水路脇に群生している。
いずれも状態のよい大株ばかりで、同所的にはスイラン、サワヒヨドリがわずかに生育している。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
大井次三郎, 1982. カヤツリグサ科シンジュガヤ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本1 単子葉類』 p.168〜169. pl.150〜151. 平凡社
小山鐡夫, 2004 カヤツリグサ科シンジュガヤ属. 北村四郎・村田源・小山鐡夫『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 p.254〜256. pl.63〜64. 保育社
牧野富太郎, 1961 コシンジュガヤ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 776. 北隆館
星野卓二・正木智美, 2003. コシンジュガヤ. 星野卓二・正木智美・西本眞理子『岡山県カヤツリグサ科植物図譜(U)』 216,217. 山陽新聞社
谷城勝弘, 2007. シンジュガヤ属. 『カヤツリグサ科入門図鑑』 116,117. 全国農村教育協会
勝山輝夫・堀内洋. 2001. シンジュガヤ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 441. 神奈川県立生命の星・地球博物館
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. コシンジュガヤ. 『六甲山地の植物誌』 253. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. コシンジュガヤ. 『近畿地方植物誌』 167. 大阪自然史センター
黒崎史平・松岡成久・高橋晃・高野温子・山本伸子・芳澤俊之 2009. コシンジュガヤ. 兵庫県産維管束植物11 カヤツリグサ科. 人と自然20:180.
       兵庫県立・人と自然の博物館

最終更新日:26th.July.2014

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