セイタカハリイ Eleocharis attenuata  (Franch. et Sav.) Palla
form. attenuata
カヤツリグサ科 ハリイ属
湿生植物
Fig.1 (神戸市・休耕田 2013.10/22)

Fig.2 (神戸市・小湿地 2015.5/22)

日当たりよい湿地、休耕田、溜池畔などに生育する多年草。ハリイやオオハリイに比較するとやや稀。
有花茎は叢生し、匍匐根茎はなく、高さ20〜50cm。基部の鞘は赤褐色。有花茎はほぼ円柱形で、幅0.5〜1mm。
小穂は広卵形で長さ4〜12mm、基部近くの幅が広く、幅3〜4mm、ふつう淡褐色。
鱗片は倒卵形で、長さ約2.5mm、鈍頭〜円頭、短芒があり、膜質で淡色。
痩果は倒卵形で、長さ約1mm、横断面は鈍3稜形、完熟すると淡褐色となる。
柱基は圧扁された3角錐状、幅は痩果の2/3〜3/4。
刺針状花披片はふつう6個、痩果と同長かやや長く、下向きにざらつく。
柱頭は3岐する。染色体数は2n=20。

品種にチョウセンハリイ(f. laeviseta)があり、刺針状花披片が痩果より長く、ほぼ平滑なもので、宮城、千葉、長野、山梨から記録がある。
ハリイE. congesta var. japonica)は小穂の長さ4〜6mm。痩果の長さ0.7〜0.8mm。刺針状花披片は痩果の1.2〜1.5倍。
オオハリイE. congesta f. dolichochaeta)は小穂の長さ5〜7mm、痩果の長さ1〜1.2mm。刺針状花披片は痩果の約2倍。
エゾハリイE. congesta var. thermalis)は小穂が披針形〜狭卵形、濃赤紫色で、長さ3〜5mm、痩果はオリーブ色で長さ約1mm。刺針状花披片は痩果の1.2〜1.5倍。
マルホハリイE. ovata)は柱頭が2岐し、刺針状花披片は痩果の1.5〜2倍。国内分布は北海道、本州の中部地方以北。
クロミノハリイE. atropurpurea var. hashimotoi)は柱頭が2岐し、小穂の長さ2〜4mm。痩果は黒色。刺針状花披片は痩果の約2倍、下向きにざらつく。滋賀県以西に稀。
クロハリイE. kamtschatica f. reducta)は長い匍匐根茎があり、柱頭が2岐し、小穂の長さ7〜20mm。刺針状花披片は退化または痕跡的。海岸近くの湿地に生育。
オオヌマハリイE. mamillata var. cyclocarpa)は長い匍匐根茎があり、柱頭が2岐し、茎の幅2〜4mmと太く、小穂は茎より太く、長さ1〜2.5cm。
スジヌマハリイE. equisetiformis)は長い匍匐根茎があり、柱頭が2岐し、茎の幅1.5〜2mm、小穂の長さ1〜2.5cm。本州の神奈川県以北、九州に分布。
コツブマハリイE. parvinux)は長い匍匐根茎があり、柱頭が2岐し、茎の幅1〜2mm、小穂の長さ1〜1.5cm。刺針状花披片は4個で、痩果の約2倍長。関東地方に分布。
オウギシマヒメハリイE. erythropoda)は北米原産の外来種。長い匍匐根茎があり、クロハリイに似るが、柱基は小さく、刺針状花披片は痩果よりもやや長い。
エンゲルマンハリイE. engelmanni)は北米原産の外来種。匍匐根茎は無く、柱頭2岐し、マルホハリイに似るが、柱基の高さは幅の1/2以下、幅は痩果とほぼ同幅。
以上のうち、オオヌマハリイとスジヌマハリイは山地性である。
近似種 : ハリイオオハリイエゾハリイヤリハリイ、 マルホハリイ、クロミノハリイ、クロハリイ、オオヌマハリイ、スジヌマハリイ、コツブヌマハリイ、 イヌシカクイ×オオハリイ

■分布:北海道、本州、四国、九州、沖縄 ・ 朝鮮半島南部、中国、ニューギニア
■生育環境:湿地、休耕田、溜池畔など。
■果実期:8〜10月
■西宮市内での分布:市内では確認していない。兵庫県下ではやや稀。

Fig.2 全草標本。(神戸市・休耕田・湿地 2013.10/22)
  左は抽水状態で、右は陸生状態でそれぞれ生育していたもの。抽水状態のものは有花茎が長くなる。
  有花茎は叢生し、匍匐根茎はなく、高さ20〜50cm。草体に比べて小穂は丸みが強く、小さい。

Fig.3 基部の鞘は赤褐色。(神戸市・休耕田 2013.10/22)

Fig.4 有花茎の横断面。(神戸市・休耕田 2013.10/22)
  有花茎はほぼ円柱形で、幅0.5〜1mm。

Fig.5 小穂。(神戸市・休耕田 2013.10/22)
  小穂は有花茎の頂端に単生し、広卵形で長さ4〜12mm。
  この集団の小穂は小さなものばかりだった。

Fig.6 小穂の拡大。(神戸市・休耕田 2013.10/22)
  左は生体、右は乾燥標本のもの。
  小穂は基部近くの幅が広く、幅3〜4mm、ふつう淡褐色。鱗片は倒卵形で、鈍頭〜円頭、短芒があり、膜質で淡色。柱頭は3岐する。

Fig.7 痩果。(神戸市・休耕田 2013.10/22)
  痩果は倒卵形で、長さ約1mm、横断面は鈍3稜形、完熟すると淡褐色となる。
  柱基は圧扁された3角錐状、幅は痩果の2/3〜3/4。刺針状花披片はふつう6個、痩果と同長かやや長い。

Fig.8 刺針状花披片には下向きの小刺がある。(神戸市・休耕田 2013.10/22)

Fig.9 柱頭は3岐し、その形質は安定している。(神戸市・休耕田 2013.10/5)

Fig.10 乾燥標本の未熟な痩果。(神戸市・休耕田 2013.10/5)
  乾燥すると、柱基が縮むため、より圧扁された3角状となる。画像のものは未熟な痩果であるため、淡褐色となっていない。

Fig.11 刺針状花披片の平滑なもの。(神戸市・湿地 2014.10/16)

Fig.12 痩果表面。(神戸市・湿地 2014.10/16)
  痩果表面には縦長の微細な格子模様がある。

生育環境と生態
Fig.13 休耕田で抽水状態で生育するセイタカハリイ。(神戸市・休耕田 2013.10/22)
低山のなだらかな谷津の自然度の高い休耕田の比較的開けた湛水部分に、多数の個体が抽水状態で生育していた。
休耕田ではエゾアブラガヤ、タコノアシなどの高茎草本のほか、ホソイ、ハナビゼキイショウ、カンガレイ、タチスゲ、ホナガヒメゴウソ、ヤナギタデ、
サイコクヌカボ、ヤノネグサ、ミゾソバ、ホソバヘラオモダカ(?)、セリ、キツネノボタンなどが生育している。

Fig.14 湿地に群生するセイタカハリイ。(神戸市・休耕田 2013.10/22)
休耕田に隣接した半裸地状の湿地に群生しているもの。
ここでは小型のタチスゲ、タマガヤツリ、ヒメクグ、コウガイゼキショウ、クサイ、オオバコなどとともに生育していた。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
大井次三郎. 1982 カヤツリグサ科ハリイ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本T 単子葉類』 p.171〜173. pls.154〜155. 平凡社
堀内洋. 2001. カヤツリグサ科ハリイ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 423〜430. 神奈川県立生命の星・地球博物館
星野卓二・正木智美. 2003 セイタカハリイ. 星野卓二・正木智美・西本眞理子『岡山県カヤツリグサ科植物図譜(U)』 186,187. 山陽新聞社
村田源. 2004. セイタカハリイ. 『近畿地方植物誌』 163. 大阪自然史センター
勝山輝男. 2003. ハリイ属. 清水建美(編)『日本の帰化植物』 300. 平凡社
谷城勝弘. 2007. ハリイ属. 『カヤツリグサ科入門図鑑』 140〜151. 全国農村教育協会
星野卓二・正木智美, 2011 ハリイ属. 星野卓二・正木智美・西本眞理子『日本カヤツリグサ科植物図譜』 610〜637. 平凡社
黒崎史平・松岡成久・高橋晃・高野温子・山本伸子・芳澤俊之. 2009. セイタカハリイ. 兵庫県産維管束植物11 カヤツリグサ科. 人と自然20:168.
       兵庫県立・人と自然の博物館

最終更新日:8th.July.2015

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