イソスミレ Viola grayi  Franch. et Sav.
  海浜・砂浜の植物 スミレ科 スミレ属
Fig.1 (京都府・海浜の砂浜 2017.4/15)

Fig.2 (京都府・海浜の砂浜 2017.4/15)

海浜の砂浜、主に砂丘に生育する多年草。ふつうは無毛だが毛のある集団もある。
根茎は木化して、肥厚し、著しく長く伸びて分枝し、地表に向かう。
茎は叢生し、高さ5〜20(〜40)cmになる。根生葉はやや小さく、厚味と光沢があり、扁円心形、幅1.5〜3.5cm、鋭頭、基部は心形、低い鋸歯がある。
開花期の葉は葉脚が両側から巻いている。托葉は広披針形で羽状中裂する。
花柄はふつう茎上に腋生。花は大きく、径2〜2.5cm、濃淡さまざまな紫色で、花心は白い。
萼片は広披針形。花弁は円くふくよかで、長さ13〜15mm、互いに重なり合う部分が多い。
側弁は無毛。距は白色。

【メモ】 兵庫県では最近わずかに自生が確認され、まだRDB指定されていない。
近縁種 : ニオイタチツボスミレタチツボスミレナガバノタチツボスミレ、 ツヤスミレ、 ナガハシスミレオオタチツボスミレ

■分布:北海道西南部、本州(東北、北越〜中国地方(鳥取県)の日本海側)
■生育環境:海浜の砂浜、砂丘。
■花期:4〜5月

Fig.3 開花期の葉。(京都府・海浜の砂浜 2017.4/15)
  開花期の葉は葉脚が両側から巻いている。
  根生葉はやや小さく、厚味と光沢があり、扁円心形、幅1.5〜3.5cm、鋭頭、基部は心形、低い鋸歯がある。

Fig.4 開花期の葉の拡大。(京都府・海浜の砂浜 2017.4/15)
  鋸歯は低く鈍頭。中肋は目立つが側脈は不明瞭である。

Fig.5 果実期の葉。(京都府・海浜の砂浜 2017.6/9)
  葉は開花期よりも多少は大きくなるが、葉脚は巻いている。葉脈はくぼみ、側脈は開花期よりも明瞭になる。
  葉縁は大きく波打ち、葉表の光沢は開花期よりも増している。

Fig.6 開花したイソスミレ。(京都府・海浜の砂浜 2017.4/15)
  1株に多数の花をつけ、花の径は大きく色鮮やかな濃青紫色〜青紫色、充実した株はブーケのように見える。
  画像に見える白い花はハマハタザオのもので、イソスミレの開花期と一致する。

Fig.7 花茎・萼・距。(京都府・海浜の砂浜 2017.4/15)
  ふつう花茎はほぼ無毛。萼片は広披針形で、多くは多少とも紫色を帯びる。距は白色で、太く短い。

Fig.8 花。(京都府・海浜の砂浜 2017.4/15)
  花は直径2〜2.5cmと大型、鮮やかな濃青紫色〜青紫色、中心部は白色。花弁は丸みを帯び、縁は重なりあう。

Fig.9 花の核心部。(京都府・海浜の砂浜 2017.4/15)
  花弁の基部は白色、側弁は無毛。柱頭はあまりふくらまない。

Fig.10 果実期。(京都府・海浜の砂浜 2017.6/9)
  多くの割れて種子を飛ばした刮ハの殻が見える。

Fig.11 刮ハ。(京都府・海浜の砂浜 2017.6/9)
  刮ハは広楕円形〜楕円形、無毛、淡黄緑色で、表面に紫斑はない。

生育環境と生態
Fig.12 海浜の砂丘上部の斜面で生育するイソスミレ。(京都府・海浜の砂浜 2017.4/15)
イソスミレは日本海側の比較的大きな砂浜、特に砂丘が広がる海浜部に生育している。
「イソ」という名がついているが海辺の岩礁地帯で見られるのはごく稀で、砂浜で頑丈な地下茎を横走して小島状の株を点在する。
自生箇所の多くの部分でハマゴウ、カワラヨモギとともに混生していることが多く、ハイネズに覆われる場所では生育できない。

Fig.13 ハマハタザオ、アナマスミレと混生するイソスミレ。(京都府・海浜の砂浜 2017.4/15)
砂丘でイソスミレが見られる箇所ではハマゴウ、カワラヨモギのほか、アナマスミレ、ハマハタザオ、ウンランが混生することがある。
春には条件の良い場所ではアナマスミレ、ハマハタザオの花の競演が見られる


最終更新日:2th.Apr,2018
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