イチリンソウ Anemone nikoensis  Maxim.
  里山〜山地の植物 キンポウゲ科 イチリンソウ属
Fig.1 (兵庫県篠山市・林縁の斜面 2008.4/20)

Fig.2 (兵庫県篠山市・果樹園の林床 2013.4/9)

内陸の山地よりの林床、植林地の林縁の斜面や土手に生える多年草。
関西を含む西日本では、石灰岩を基岩とするような堆積岩が砕破した斜面に見られることが多い。
根茎は横走し、所々で肥厚する。
根生葉には長い柄があり、1〜2回枝を分け、さらに小葉は細かく羽状に裂ける。
花茎は高さ20〜30cmで、根茎の先端から1本づつ出て、途中、総苞葉を3輪生して、先端に花をふつう1個つける。
総苞葉は3裂する複葉で、さらに羽状に深く裂ける。
花には花弁はなく、広楕円形で花弁状の萼片がふつう5〜6個つき、白色、径約4cm。裏側はわずかに紅色を帯びる。
雄蕊は多数あり、葯は長楕円形で長さ1〜1.5mm。雌蕊は1心皮の子房からなり、多数つく。
近縁種のニリンソウA. flaccida)には総苞葉に柄がなく、花の径は2cm程度。
花被を3個つけるサンリンソウA. stolonifera)は高山に生える。
近縁種 : アズマイチゲキクザキイチゲユキワリイチゲニリンソウセツブンソウ

■分布:本州、四国、九州
■生育環境:西日本では山地よりの林縁や林床などに見られ、石灰岩を基岩とする地域に多い。
■花期:4〜5月

Fig.3 イチリンソウの花被。(兵庫県篠山市・林縁の斜面 2008.4/20)
  花弁のように見えるのは萼片でふつう5〜6個あり、白色、径およそ4cmとこの仲間では大きく、裏面は紅色を帯びる。
  開花期はアズマイチゲやキクザキイチゲ、カタクリよりも遅く、スプリング・エフェメラルの締めくくりをニリンソウとともに飾る。
  名はイチリンソウだが、ときに2個の花をつけるものもあり、花が大きなこともあって重たそうに見える。

Fig.4 花被の裏側は淡紅色を帯びる。(兵庫県篠山市・林縁の斜面 2011.4/19)

Fig.5 花茎には総苞葉がつく。(兵庫県香美町・道路脇の斜面 2008.4/27)
  アネモネ(イチリンソウ)属に共通して見られる性質として、花被よりも少し下方に花茎を取り巻くように総苞葉がつく。
  総苞葉は3輪生し、柄があり3出して、小葉は3角卵状で羽状に分裂する。
  裂片の幅は地域によって変異があるように思われる。

Fig.6 根生葉。(兵庫県篠山市・スギ植林地の林床 2008.3/25)
  根生葉は2回3出複葉。
  キクザキイチゲの根生葉と酷似し、花がないとどちらか区別がつき難い。
  強いて違いをあげると、イチリンソウでは中央脈と切れ込んだ最深部が、やや白味を帯びることぐらいだろうか。

Fig.7 幼個体群。(兵庫県篠山市・渓流畔の林床 2011.4/6)
  幼個体は小さなものでは3出葉、やや大きなものでは2回3出複葉となる。
  おこでは多くの幼個体が見られたが、親株は見られなかった。

生育環境と生態
Fig.8 植林地の林縁の急な斜面に生育するイチリンソウ。(兵庫県篠山市・林縁の斜面 2008.4/20)
斜面は北向きであり、春先には大きな草本が見られない。
同じ斜面の別の部分ではニリンソウが群落をつくっていた。

Fig.9 道路脇の斜面に生育するイチリンソウ。(兵庫県香美町・道路脇の斜面 2008.4/27)
高標高地の高原では、イチリンソウは基岩が石灰岩でなくとも生育していることが多く、ときに小規模ながら群生する。
やはり斜面を好むが、雑木林の林縁などでも見られる。
この斜面は普通の道路に面しているが植生は豊富で、他にはニリンソウ、ジャニンジン、シャク、オオタチツボスミレ、ヒゲケマルバスミレ、
タチツボスミレ、トキワイカリソウ、ミヤマキケマン、オクノカンスゲなど春に開花する草本が多数見られた。



最終更新日:7th.Mar.2014

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