アズマイチゲ | Anemone raddeana Regel | ||
里山〜山地の植物 兵庫県RDB B種 | キンポウゲ科 イチリンソウ属 |
Fig.1 (兵庫県篠山市・栗園の林床 2008.3/25) |
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Fig.2 (兵庫県丹波市・放棄栗園の林床 2011.3/29) やや内陸で山地よりの林縁や果樹園の林床に生える多年草。 関西を含む西日本では、石灰岩を基岩とするような堆積岩が砕破した斜面に見られることが多い。 紡錘状の根茎が地下を這い、栄養繁殖して群生をつくることが多い。 根生葉は4〜15cmの葉柄があり、2回3出複葉で、裂片の幅は広い。 植物体はやや白味を帯び、若い頃には軟毛が生える。 花茎には3個の総苞葉がつき、各総苞葉は葉柄のある3出する小葉からなる。 総苞葉の小葉は深く切れ込まず、葉柄の基部は広がらない。 近縁種のキクザキイチゲ(A. pseudo-altaica)に似るが、キクザキイチゲの葉は羽状に深く切れ込み、 総苞葉の小葉葉柄の基部は翼状に広がる。 アズマイチゲとキクザキイチゲは混生することも多く、両種が同時に見られる場所では区別はたやすい。 近縁種 : キクザキイチゲ、 ユキワリイチゲ、 イチリンソウ、 ニリンソウ、 セツブンソウ ■分布:北海道、本州、四国、九州 ・ 朝鮮半島、中国東北部、樺太、アムール、ウスリー ■生育環境:西日本では山地よりの林縁や、果樹園の林床などに見られ、石灰岩を基岩とする地域に多い。 ■花期:3〜4月 |
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↑Fig.3 アズマイチゲの萌芽。(兵庫県篠山市・林縁 2009.2/19) 花のつぼみは総苞葉に包まれ、茎の部分から立ち上がってくる。 左側のつぼみは降雪に遭ったのか、ナメクジによるものなのか、黒く痛んでいる。 この時期、周囲ではセツブンソウが満開であった。 |
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↑Fig.4 開花したアズマイチゲ。(兵庫県篠山市・栗園の林床 2008.3/25) 花弁のように見えるのは萼片で8〜13個あり、ふつう白色、ときに薄紫色を帯び、萼片の基部は紫色。 雄蕊の葯の長さは1mm程度で、キクザキイチゲよりもやや長い。雌蕊は多数。 |
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↑Fig.5 雌蕊は1心皮が集合した離生心皮雄蕊群。(兵庫県篠山市・栗園の林床 2009.3/16) このような多数の心皮(雌蕊)が離生して螺旋状に並ぶものは、双子葉類でも初期に分化した原始的な一群とされる。 柱頭はバチのように先が広がり、やや扁平となり、外側につく雌蕊の柱頭ほど外曲する。 画像からは判り難いが、子房には細毛が生えていて、その様子はFig.8のほうが解りやすい。 |
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↑Fig.6 花茎には総苞葉がつく。(兵庫県篠山市・栗園の林床 2008.3/25) アネモネ(イチリンソウ)属に共通して見られる性質として、花被よりも少し下方に花茎を取り巻くように総苞葉がつく。 アズマイチゲの場合、3小葉を持つ葉が、3個輪生する。 アズマイチゲの総苞葉の小葉は細かくは切れ込まず、裂片の幅も広い。 |
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↑Fig.7 展開中の根生葉。(兵庫県篠山市・栗園の林床 2009.2/19) 周囲の小さな芽も根生葉のもの。 根生葉は葉柄が葉身を持ち上げるように抽出し、葉縁が内側に巻き込まれている様子がわかる。 |
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↑Fig.8 根生葉。(兵庫県篠山市・栗園の林床 2008.4/13) 根生葉は2回3出複葉。オダマキやヒメウズの根生葉とよく似ているが、それらの2倍近くの大きさがある。 小葉は羽状に切れ込むが、裂片の幅は広く、キクザキイチゲのように細かく切れ込んだ披針状にならない。 |
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↑Fig.9 アズマイチゲの果実。(兵庫県篠山市・林縁 2008.4/13) アズマイチゲは多数の子房を持つが、果実のほとんどが不稔で、画像のものは1個のみが成熟しかかっていた。 他の個体も似たような状況で、結実率はかなり悪いようだ。 種子で繁殖するよりも、根茎による栄養繁殖のほうを選んだのだろう。 アズマイチゲが隔離的に分布し、なかなか生育地が増えない理由のひとつだろう。 |
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↑Fig.10 キクザキイチゲ群落に混生するアズマイチゲ。(兵庫県篠山市・林縁の斜面 2008.3/25) 花をつけているのはキクザキイチゲで、手前に見える明るい緑色の葉を広げているのがアズマイチゲ。 混生している状態では、両種の根生葉の違いがよく解る。 キクザキイチゲの葉は濃緑色で、ヨモギの葉のように裂片の切れ込みが深い。 |
生育環境と生態 |
Fig.11 果樹園の林床でパッチ状の群落をつくるアズマイチゲ。(兵庫県篠山市・栗園の林床 2008.3/25) なだらかな斜面にニリンソウ、イチリンソウ、カテンソウなどとともにパッチ状の群落をつくっていた。 画像左上部に見られる、緑濃い部分はニリンソウの群落。 群落間の隙間の裸地にはキバナノアマナが点々と生育していた。 |
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Fig.12 アズマイチゲの純群落。(兵庫県篠山市・栗園の林床 2008.3/25) クリとカキが植えられた果樹園の林床に見事な純群落が発達している。 この群落は篠山市の天然記念物に指定され、地元で手厚く保護されている。 |
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Fig.13 放棄された栗園に生育するアズマイチゲ。(兵庫県丹波市・栗園の林床 2011.3/29) 放棄された栗園と植林地の境界きかけての半日陰的な林床に中規模の群落を形成していた。 ここでは、イチリンソウ、キクザキイチゲ、レンプクソウ、アマナsp.、オドリコソウ、カキドオシなどが生育していた。 |