ユキワリイチゲ Anemone keiskeana  T. Ito
  里山〜山地の植物 キンポウゲ科 イチリンソウ属
Fig.1 (神戸市・落葉広葉樹林 2013.3/22)

Fig.2 (兵庫県篠山市・寺社林内 2011.4/1)

日陰〜半日陰の林床に生える多年草。
肥厚した淡紫色の根茎が地下を這い、先端から数個の根生葉と花茎をあげる。
根生葉は10〜20cmの葉柄があり、3小葉からなり、小葉は卵状ひし形、長さ3〜7cm、幅2〜5cm。
葉の表面には紫褐色の斑紋があり、裏面はしばしば紫色を帯び、秋に出て初夏には枯れる。
総苞葉は3個つき、柄はなく、3中裂してさらに粗く切れ込む。
花は茎頂に1個つき径3〜3.5cm、花弁はなく、萼片が花弁状となり、12〜15個、淡藍紫色を帯び線状長楕円形。
雄蕊、雌蕊はともに多数つく。
近縁種 : アズマイチゲキクザキイチゲイチリンソウニリンソウセツブンソウ

■分布:本州(近畿地方以西)、四国、九州
■生育環境:日陰〜半日陰の林床。
■花期:3〜4月

Fig.3 開花したユキワリイチゲ。(兵庫県篠山市・寺社林内 2011.3/29)
  花弁のように見えるのは萼片で12〜15個あり、淡藍紫色、まれに白色。ユキワリイチゲの花は充分に陽があたらないと、完全に開花しない。

Fig.4 花の中心部。(兵庫県神戸市・落葉広葉樹林 2013.3/22)
  多数の雄蕊の内側に、雌蕊が集合し、柱頭は丸く、少し鉤状に曲がる。

Fig.5 花茎には総苞葉がつく。(兵庫県篠山市・寺社林内 2008.4/13)
  総苞葉には柄がなく、3個輪生し、3中裂しさらに粗く切れ込む。

Fig.6 根生葉。(兵庫県篠山市・寺社林内 2008.4/13)
  根生葉は3小葉で、小葉は卵状ひし形。紫褐色を帯びた斑紋がある。

Fig.7 葉裏は赤紫色を帯びる。(兵庫県神戸市・落葉広葉樹林 2013.3/22)

Fig.8 ユキワリイチゲの群落。(兵庫県篠山市・寺社林内 2008.3/25)
  他のイチリンソウ属同様、根茎で栄養繁殖し群生する。

Fig.9 冬期の葉。(兵庫県篠山市・寺社林内 2013.1/27)
  他の春植物とは違って開花後も葉は残り、常緑越冬する。越冬時の葉は褐色を帯びる。

生育環境と生態
Fig.10 寺社林内で群生するユキワリイチゲ。(兵庫県篠山市・寺社林内 2008.3/25)
この群落は寺社内でよく保護されており、小規模ながら純群落となっていて多数の花茎をあげていた。

Fig.11 植林地の林床で見られたユキワリイチゲ。(兵庫県篠山市・スギ植林地の林床 2008.4/20)
ややまばらに植林された緩斜面で生育しているもので、個体数は比較的多いものの、花茎をあげているものは見られない。
おそらく日照量が不足して、根茎に花を咲かせるだけの栄養分を蓄積できないのだろう。
周辺には沢沿いにオタカラコウ、ミズタネツケバナ、オオバタネツケバナ、ネコノメソウが見られ、ユキワリイチゲの生育する斜面には
イヌショウマ、ウバユリ、ミヤマカンスゲ、ニシノホンモンジスゲ、ジュウモンジシダなどが見られる。

Fig.12 落葉広葉樹林の林床で生育するユキワリイチゲ。(兵庫県神戸市・落葉広葉樹林 2012.4/2)
メランジェの緑色岩由来の風化破砕された堆積岩が溜まった斜面に成立した落葉広葉樹林下の北〜北西斜面に小規模な群落が点在していた。
同所的にヤブソテツ、ベニシダ、サイゴクイノデ、オクマワラビ、ジャノヒゲ、ヤブラン、アマナ、ナキリスゲ、フッキソウ、セントウソウ、ダイコンソウなどが生育している。



最終更新日:6th.Mar.2014

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