オオカナワラビ | Arachniodes amabilis (Bl.) Tindale | ||
低山・山地・林床のシダ | オシダ科 カナワラビ属 |
Fig.1 (兵庫県丹波市・植林地の林床 2013.1/24) 低山・山地の湿った林床などに生育する常緑性シダ。 根茎は横走するが、それほど長くなくやや肉質。 鱗片はやや密につき、黄褐色、長楕円状披針形、全縁、鋭尖頭、長さ4〜8mm。 葉柄はわら色から褐色、長さ30〜45cm、鱗片は少ない。 葉身は2回羽状複生し、卵状楕円形で、長さ35〜75cm、幅25〜40cm。葉質は革状草質、鮮緑色、光沢があり無毛。 側羽片は5〜10対、それより上は側羽片と同様の幅の頂羽片がつく。 羽片は線状披針形、基部が最も幅広くなることが多く、先に向かってしだいに狭くなり、鋭尖頭、有柄。 下部の側羽片の最下小羽片が羽状に全裂することがあり、最下羽片の基部後ろ側(下側)では特に著しい。 小羽片は長楕円形、鋭頭〜やや鈍頭、基部は前側が切形、後ろ側ではほとんど欠落してくさび形、縁には刺状になる鋸歯がある。 胞子嚢群(ソーラス)は裂片の辺縁近くに付く。染色体はn=41,82で2倍体と4倍体がある。 オオカナワラビは以下の3変種の総称である。 カナワラビ(var. fimbriata) 包膜は円腎形、縁に顕著な突起があり、ときに毛や腺毛があり、葉幅が広く、小羽片の切れ込みは浅い。関東以西。 ヤクカナワラビ(var. amabilis) 包膜は無毛で全縁、小羽片は深く切れ込み、葉身は細長くなる。2倍体のみが知られる。四国・九州・沖縄。 オキナワカナワラビ(var. okinawensis) 葉質が厚く、鋸歯は浅く、ソーラスは極端に辺縁につく。沖縄本島。 関西周辺で見られる近似種に以下のものがある。 ハカタシダ(A. simplicior)は鱗片の縁に毛があり、側羽片が3〜5対、頂羽片があり、ときに羽軸にそって淡色の筋が入り、ソーラスは中間生し、円腎形で全縁または波状縁。 オニカナワラビ(A. simplicior var. major)はハカタシダの変種で、葉身には頂羽片がなく、先に向かってしだいに狭くなる。 ミドリカナワラビ(A. nipponica)は葉柄に赤褐色の鱗片を密生し、葉身が3回羽状深裂〜複生し、葉質は柔らかく、裏面脈上には圧着した毛がつく。やや稀。 ハガクレカナワラビ(A. yasu-inouei)はオニカナワラビに似るが、葉質はより薄く、柔らかい革質。裂片の先は芒状に約1mm伸びる。稀。紀伊半島以南。 コバノカナワラビ(A. nipponica)はふつう葉身は4回羽状深裂、小さいものは時に2〜3回羽状複生。葉身に頂羽片状のまとまりはなく、ソーラスは中間生。 ホソバカナワラビ(A. nipponica)は葉身が3回羽状複生〜4回羽状深裂、小さいものは2回羽状複生。葉先は頂羽片状にまとまる。最下羽片の下向き第一小羽片は著しく伸びる。 ミヤコカナワラビ(A. kiotensis)は葉身が3回羽状複生〜4回羽状深裂、葉先が頂羽片状にまとまるが長3角状、羽片や小羽片の幅はホソバカナワラビより広く、裂片は丸味を帯びる。 オオカナワラビを片親とする推定種間雑種に以下のものがある。 ヤマグチカナワラビ(A. × subamabilis)はミドリカナワラビとの推定種間雑種。n=123で減数分裂は不正常。 イイノカナワラビ(A. × mirabilis)はオトコシダとの推定種間雑種。 ゴリカナワラビ(A. × pseudo-hekiana)はシビカナワラビとの推定種間雑種。2n=123で減数分裂は不正常。鹿児島県。 テンリュウカナワラビ(A. × kurosawae)はコバノカナワラビとの推定種間雑種。2n=123で減数分裂は不正常。 以上の雑種は兵庫県からは発見されていないようだ。 近縁種 : ハカタシダ、 オニカナワラビ、 コバノカナワラビ、 ホソバカナワラビ、 ミヤコカナワラビ、 ミドリカナワラビ ■分布:本州(関東地方以西)、四国、九州、沖縄 ・ 朝鮮半島、中国、ヒマラヤ、スリランカ〜マレーシア ■生育環境:低山・山地の湿った林床など。 |
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↑Fig.2 地上部標本。(兵庫県丹波市・植林地の林床 2013.1/24) 葉身は2回羽状複生し、卵状楕円形で、長さ35〜75cm、幅25〜40cm。葉質は革状草質、鮮緑色、光沢があり無毛。 側羽片は5〜10対、それより上は側羽片と同様の幅の頂羽片がつく。 羽片は線状披針形、基部が最も幅広くなることが多く、先に向かってしだいに狭くなり、鋭尖頭、有柄。 |
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↑Fig.3 葉柄基部付近の鱗片。(兵庫県丹波市・植林地の林床 2013.1/24) 鱗片は黄褐色、葉柄のものは線状披針形でまばらにつき、全縁、鋭尖頭。 |
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↑Fig.4 葉身上部。(兵庫県丹波市・植林地の林床 2013.1/24) 葉身は上部で急に狭くなり、頂羽片状のまとまりをつくる。 |
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↑Fig.5 下部の羽片。(兵庫県丹波市・植林地の林床 2013.1/24) 下部の側羽片の最下小羽片が羽状に全裂することがあり、最下羽片の基部後ろ側(下側)では特に著しい。 |
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↑Fig.6 小さな葉を持つもの。(兵庫県丹波市・植林地の林縁 2013.1/24) 側羽片が5対以下の小さな葉でも、下部の羽片の最下小羽片は全裂することが多く、長く伸びて目立つ。 |
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↑Fig.7 小羽片。(兵庫県丹波市・植林地の林床 2013.1/24) 小羽片は長楕円形、鋭頭〜やや鈍頭、基部は前側が切形、後ろ側ではほとんど欠落してくさび形。 縁には先が刺状になる鋸歯がある。 |
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↑Fig.8 小羽片裏面。(兵庫県丹波市・植林地の林床 2013.1/24) 胞子嚢群(ソーラス)は裂片の辺縁近くに付く。 |
生育環境と生態 |
Fig.9 明るい植林地の湿った林縁に生育するオオカナワラビ。(兵庫県丹波市・植林地の林縁 2013.1/24) スギ植林地の湿った林縁にオオカナワラビがまとまって生育していた。 シダ類の多い場所で、イノデ、ジュウモンジシダ、リョウメンシダ、ヤブソテツ、オクマワラビ、ベニシダ、トウゴクシダ、サキモリイヌワラビ、 サキモリヒロハイヌワラビ、ヤノネシダなどが見られ、草本ではオクノカンスゲ、ヌカボシソウなどが多く見られた。 |