ホソバカナワラビ | Arachniodes exilis (Hance) Ching | ||
低山・山地・林床のシダ | オシダ科 カナワラビ属 |
Fig.1 (神戸市・暖帯林の林床 2015.2/10) 海岸に近い低山・山地のやや乾いた林床などに生育する常緑性シダ。 根茎は長く横走し、径1cmに近いものがあり、赤褐色の鱗片をつける。 葉柄はわら色、基部は褐色で鱗片が多く、胞子葉では長さ50cmを越えることがある。 葉身はやや2形となり、3回羽状複生〜4回羽状深裂し、小さい葉では2回羽状複生で終わることもある。 側羽片は5〜10対、最下のものが最大、上のものほど短くなるが、先端は急に短くなって頂羽片状となる。 最下羽片の下向きの第一小羽片は著しく伸びて、中ほどの側羽片と大きさも形も同じになり、第二小羽片や上向きの第一小羽片も大きくなることが多い。 羽片は幅2.5cm以下のことが多い。胞子嚢群(ソーラス)は裂片の中肋近くにつき、包膜は円腎形、全縁。染色体はn=41の2倍体。 ミヤコカナワラビ(A. kiotensis)は葉先が頂羽片状にまとまるが長3角状、羽片や小羽片の幅は広く、相接する羽片との間に隙間はほとんどできない。裂片は丸味を帯びる。 ハカタシダ(A. simplicior)は鱗片の縁に毛があり、側羽片が3〜5対、頂羽片があり、ときに羽軸にそって淡色の筋が入り、ソーラスは中間生し、円腎形で全縁または波状縁。 オニカナワラビ(A. simplicior var. major)はハカタシダの変種で、葉身には頂羽片がなく、先に向かってしだいに狭くなる。 ミドリカナワラビ(A. nipponica)は葉柄に赤褐色の鱗片を密生し、葉身が3回羽状深裂〜複生し、葉質は柔らかく、裏面脈上には圧着した毛がつく。やや稀。 ハガクレカナワラビ(A. yasu-inouei)はオニカナワラビに似るが、葉質はより薄く、柔らかい革質。裂片の先は芒状に約1mm伸びる。稀。紀伊半島以南。 コバノカナワラビ(A. nipponica)はふつう葉身は4回羽状深裂、小さいものは時に2〜3回羽状複生。葉身に頂羽片状のまとまりはなく、ソーラスは中間生。 オオカナワラビ(A. amabilis)は葉身が2回羽状複生。葉先は頂羽片状にまとまる。 ホソバカナワラビを片親とする推定種間雑種に以下のものがある。 ジンムジカナワラビ(A. × jinmujiensis)はリョウメンシダとの推定種間雑種。 ホソバハカタシダ(A. × respiciens)はハカタシダとの推定種間雑種。n=123で減数分裂は不正常。 シモダカナワラビ(A. × sasamotoi)はオニカナワラビとの推定種間雑種。2n=123で減数分裂は不正常。 ホソコバノカナワラビ(A. exilis× A. sporadosora)はコバノカナワラビとの推定種間雑種。 近縁種 : ミヤコカナワラビ、 ハカタシダ、 オニカナワラビ、 オオカナワラビ、 ミドリカナワラビ、 コバノカナワラビ、 ホソコバノカナワラビ ■分布:本州(関東地方以西)、四国、九州、沖縄 ・ 朝鮮半島、中国、台湾、インド、マレーシア〜ポリネシア、ニュージーランド ■生育環境:海岸に近い低山・山地のやや乾いた林床など。 |
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↑Fig.2 胞子葉の地上部標本。(神戸市・暖帯林の林床 2015.2/10) 葉身は3回羽状複生〜4回羽状深裂し、側羽片は5〜10対、最下のものが最大。葉質は革状紙質、鮮緑色、光沢があり無毛。 葉柄は胞子葉では長さ50cmを越えることがある。 |
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↑Fig.3 葉柄基部の鱗片。(神戸市・暖帯林の林床 2015.2/10) 鱗片は赤褐色、披針形、縁は全縁だった。 |
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↑Fig.4 最下羽片。(神戸市・暖帯林の林床 2015.2/10) 最下羽片の下向きの第一小羽片は著しく伸びて、中ほどの側羽片と大きさも形も同じにる。 第二小羽片や上向きの第一小羽片も大きくなることが多い。 |
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↑Fig.5 葉先は急に狭くなり頂羽片状となる。(神戸市・暖帯林の林床 2015.2/10) |
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↑Fig.6 小羽片。(神戸市・暖帯林の林床 2015.2/10) 羽片下方につく小羽片はよく切れ込む。 |
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↑Fig.7 ソーラス。(神戸市・暖帯林の林床 2015.2/10) 胞子嚢群(ソーラス)はふつう裂片の中肋近くにつくが、この個体は中間についていた。 |
生育環境と生態 |
Fig.8 暖帯林下の斜面で群生するホソバカナワラビ。(神戸市・暖帯林の林床 2015.2/10) ホソバカナワラビは横走する根茎によって大きな群落を作ることが多く、ここでは山腹を広く覆っていた。 周辺ではベニシダ、マルバベニシダ、オオイタチシダ、コバノカナワラビ、オオキヨズミシダが生育し、コバノカナワラビとの雑種である ホソコバノカナワラビも見られた。 |