アオスゲ | Carex leucochlora Bunge | カヤツリグサ科 スゲ属 ヌカスゲ節 |
湿生植物 |
Fig.1 (西宮市・湿り気のある裸地 2007.5/5) 日当たり良い草地に生えるとされ湿生植物ではないが、棚田の畦や休耕田、山間の溜池の裸地や草地部分にも頻繁に見られるので、 参考のために収録しておいた。 適度に湿り気があり、陽光の当たる場所を好む多年草。 密に叢生し、匍匐枝を出さない。基部の鞘は褐色でやや光沢があり、古くなると繊維に分解する。 葉は有花茎とほぼ同長で、幅2〜3mm。 有花茎は高さ15〜50cm。頂小穂は雄性、多数の小花からなる根棒状で、長さ1〜2cm。 側小穂は2〜3個で雌性。たがいに接近してつき、多数の小花を密生し、長さ1〜2cm、幅3〜4mm。 雌鱗片には長い芒があり、果胞には不明瞭な脈があって、長さ2.5〜3mm、まばらに毛がある。 根際に雌小穂をつけることはほとんどない。 近縁種 : ヌカスゲ、 ノゲヌカスゲ、 イトアオスゲ、 クサスゲ、 メアオスゲ、 イソアオスゲ、 ハマアオスゲ ■分布:日本全土、朝鮮半島、中国、台湾、沿海州、ヒマラヤ ■生育環境:適湿の草地や明るい林縁、畦、裸地など。 ■花期:4〜5月 ■西宮市内での分布:スゲ属ヌカスゲ節のなかでも最も普通に見られ、市内の丘陵部から山間まで広く分布する。 西宮市内では同じカヤツリグサ科ヌカスゲ節で小穂の形がよく似たイトアオスゲ(山地の林縁・草地など)や メアオスゲ(道端や明るい林内)なども見られる。 ■ホストとする種:ヒメヒカゲ |
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↑Fig.2 全草標本。(西宮市・棚田の斜面 2010.4/24) 根茎は短く、密に叢生し、匐枝は出さない。 |
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↑Fig.3 基部。(西宮市・棚田の斜面 2010.4/24) 基部の鞘にはやや光沢があり、古くなると繊維状に分解する。 |
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↑Fig.4 花序の様子。頂小穂は雄小穂。最下の苞葉は花序よりも長い。 左:(西宮市・湿り気のある裸地 2007.5/5) 右:(西宮市・休耕田 2007.4/29) |
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↑Fig.5 棚田や休耕田などでは、このように水際に見られることも多い。(西宮市・棚田 2007.5/13) |
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↑Fig.6 雌小穂の拡大。(西宮市・休耕田 2007.4/29) 鱗片の中肋は濃緑色で周囲は膜質で淡緑色。中肋は超出して芒となり果胞の2倍程度の長さ。 |
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↑Fig.7 果胞。(西宮市・駐車場の隅 2011.6/11) 果胞は長さ2.2〜3mm、倒卵形、短毛がまばらに生える。 |
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↑Fig.8 痩果。(西宮市・駐車場の隅 2011.6/11) 果胞に密着し、倒卵形、横断面は3稜形、約1.5mm、稜も面もともに凹まない。柱基の下端は低い盤状の付属体となる。 |
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↑Fig.9 開花中のアオスゲ。(西宮市・道端 2011.4/9) |
西宮市内での生育環境と生態 |
Fig.10 棚田の畦で生育するアオスゲ。(西宮市 2007.4/29) 丘陵部や山間の棚田の畦では必ず目にする。 刈り込まれて芝状に生育するネザサの間にスズメノヤリ、カキドオシ、ミミナグサ、ワレモコウ、ツボスミレ、ヤブカンゾウなどと混生している。 頻繁に刈り込みが行われるため、大型の植物も矮小化し、アオスゲの生育環境も確保されているようだ。 |
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【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 大井次三郎, 1982. アオスゲ. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編) 『日本の野生植物 草本T 単子葉類』 p.160. pl.139. 平凡社 小山鐡夫, 2004 アオスゲ. 北村四郎・村田源・小山鐡夫『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 p.275. pl.69. 保育社 牧野富太郎, 1961 アオスゲ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 793. 北隆館 勝山輝男. 2001. スゲ属ヌカスゲ節. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 459〜472. 神奈川県立生命の星・地球博物館 勝山輝男, 2005. ヌカスゲ節. 『日本のスゲ』 170〜251. 文一総合出版 谷城勝弘, 2007. スゲ属ヌカスゲ節. 『カヤツリグサ科入門図鑑』 72〜94. 全国農村教育協会 小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. アオスゲ. 『六甲山地の植物誌』 242. (財)神戸市公園緑化協会 村田源. 2004. アオスゲ. 『近畿地方植物誌』 154. 大阪自然史センター 黒崎史平・松岡成久・高橋晃・高野温子・山本伸子・芳澤俊之 2009. アオスゲ. 兵庫県産維管束植物11 カヤツリグサ科. 人と自然20:151. 兵庫県立・人と自然の博物館 最終更新日:24th.Feb.2014 |