オオホシクサ Eriocaulon buergerianum  Koernicke ホシクサ科 ホシクサ属 合生萼節
湿生植物
Fig.1 (兵庫県加西市・溜池畔 2010.9/28)
Fig.2 (長崎県・溜池畔 2009.10/4)

Fig.3 (兵庫県加東市・溜池畔 2011.9/19)

貧栄養〜やや中栄養な溜池畔、湿地などに生える無茎の1年草。
葉は多数束生し、披針状線形、長さ8〜20cm、基部の幅5〜8mm、13〜17脈の格子状で、先端はやや鈍形。
花茎は多数あげ、高さ15〜30cm、5〜6肋あり、少しねじれる。
頭花は半球形で多数の花からなり、径6mm内外、はじめ白色根棒状毛に覆われるが、のちに多くが脱落する。
総苞片は広倒卵形〜楕円形、先は鈍頭または円頭、膜質で毛はなく、頭花よりも短い。花床には白色長毛がある。
花苞は倒卵状くさび形、長さ2.2mm、先はややとがり、上部の縁と背面に2細胞からなる白色根棒状毛を密生する。
雄花は雄花苞と同長、萼は仏炎苞状に合着し、上部は浅3裂して縁に白色根棒状毛が生える。
雄花弁3個は上部の3裂片を残して筒状に合着、無毛で裂片の先端内側に黒腺がある。雄蕊6個、葯は黒色で円形。
雌花は雄花と同長か長い。萼は仏炎苞状に合着して、内面には白色長毛があり、上部は浅3裂して、縁に2細胞からなる白色根棒状毛がある。
雌花弁は3個離生し、披針状へら形、内面に白色長毛が、先端にはときに白色根棒状毛があり、その内側には黒腺がある。
朔果は3室、種子は長楕円形で長さ1.3mm、表面に微小なかぎ毛がある。
近似種 : ヒロハイヌノヒゲシロイヌノヒゲツクシクロイヌノヒゲホシクサクロホシクサゴマシオホシクサ

■分布:本州、四国、九州、沖縄 ・ 中国、台湾
■生育環境:貧栄養〜やや中栄養な溜池畔、湿地など。
■花期:8〜10月
■西宮市内での分布:市内では確認できていない。県下では播磨地方に分布の中心域がある。

Fig.4 全草の様子。(兵庫県加東市・溜池畔 2008.9/22)
  やや幅広で長い葉が根生し、花茎は多数あって、かなり長くのびる。

Fig.5 上から見たオオホシクサの頭花。(兵庫県加東市・溜池畔 2008.9/22)
  頭花(頭状花)は径約6mm、白色または薄っすらと黄褐色を帯び、雄花と雌花、花苞上部についた白色根棒状毛が目立つ。

Fig.6 斜め上から見た頭花。(兵庫県加東市・溜池畔 2008.9/22)
  頭花は半球形。総苞片は短く、斜め上から見ても先端がわずかにしか見えない

Fig.7 新鮮な頭花。(兵庫県加東市・溜池畔 2008.9/22)
  頭花上の花の大半が開いていないので、花苞についた白色根棒状毛により、白い短毛にびっしりと覆われているように見える。

Fig.8 花床。(兵庫県加東市・溜池畔 2008.9/22)
  大半の雄花と雌花を取り除いて花床を露出したところ。
  花床には白色長毛がある。

Fig.9 総苞片。(兵庫県加東市・溜池畔 2008.9/22)
  左の3個は外側についたもので、広倒卵形で鈍頭または円頭。右2個は内側についたもので楕円形で鈍頭。
  総苞片は頭花より短く、淡色、膜質で、脈は目立たず、無毛。

Fig.10 雄花(左)と雌花(右)。(兵庫県加東市・溜池畔 2008.9/22)
  雄花と雌花のつくり。雌花は雄花と同長か長い。

Fig.11 雄花苞(左)と雌花苞(右)。(兵庫県加東市・溜池畔 2008.9/22)
  雄花苞と雌花苞はサイズは異なるが、ともに広倒卵状くさび形で、先端はややとがる。
  背面と縁には白色根棒状毛が密生する。白色根棒状毛は2細胞からなる。

Fig.12 花苞を取り除いた雌花(左)と、さらに萼を取り除いた雌花(右)。(兵庫県加東市・溜池畔 2008.9/22)
  雌花の本体は花苞と仏炎苞状に合着した萼に包まれている。
  花苞と萼を取り除くと、3個の花弁をつけた子房が現れる。子房の先についた雌蕊の柱頭は3岐し、子房(朔果)は3室からなる。
  花弁はスポンジ質で背面は無毛、内側にはまばらに白色長毛が生え、上部には黒腺がある

Fig.13 オオホシクサの萼。背面(左)と内面(右)。(兵庫県加東市・溜池畔 2008.9/22)
  萼は萼片3個が合着し、上部で浅3裂する。裂片は三角形で、中央のものは少し短かく、裂片の背面と縁には白色根棒状毛が生える。
  萼の内側の中部から下部にかけて、白色長毛がまばらに生える。

Fig.14 雌花弁。背面からの撮影。(兵庫県加東市・溜池畔 2008.9/22)
  雌花弁は披針状へら形で柄があり、背面は無毛で、先端には黒腺が見える。先端にはときに白色根棒状毛が生えることがある。
  画像の角度からは見えないが、花弁の内側には白色長毛がまばらに生える。

Fig.15 痩果。(兵庫県加東市・溜池畔 2014.10/31)
  痩果は長楕円形で長さ約1.3mm、表面に低い隆起の6角状の格子模様があり、稜上に微小なかぎ毛がまばらに生える。

Fig.16 花茎(左)と花茎基部を包む鞘(中)、花茎の横断面(右)。(兵庫県加東市・溜池畔 2008.9/22)
  花茎は5〜6肋あり、少しねじれ、基部を包む鞘の口部は斜め切形。

Fig.17 オオホシクサの根生葉。(兵庫県加東市・溜池畔 2008.9/22)
  根生葉は表面に光沢があり、長さ8〜20cm、先は鋭くとがらず、やや鈍頭。13〜17の格子状脈がある。
  画像のものは15脈あった。

生育環境と生態
Fig.18 沈水状態から花茎を上げたオオホシクサ。(兵庫県加東市・溜池畔 2008.9/22)
沈水状態で生育するものも多く、花茎は同属のイヌノヒゲやニッポンイヌノヒゲよりも長く伸びる。

Fig.19 溜池畔で湿生植物群落を形成するオオホシクサ。(兵庫県加東市・溜池畔 2008.9/22)
水位変動のある溜池畔で、沈水状態に対する耐性の強い種とともに湿生植物群落を形成していた。
同所的に見られたのは同属のホシクサ、イヌノヒゲの他、タチモ、サワトウガラシ、イボクサ、ヒナザサ、アゼスゲ、ミズギボウシなど。

Fig.20 溜池畔で陸生状態で生育するオオホシクサ。(兵庫県加東市・溜池畔 2008.10/5)
この溜池畔ではオオホシクサをはじめとして、ホシクサ、イヌノヒゲ、ニッポンイヌノヒゲ、ツクシクロイヌノヒゲ、シロイヌノヒゲ、イトイヌノヒゲなど
多数のホシクサ科植物が生育していた。オオホシクサとイヌノヒゲの個体数が多く、種間雑種と思われる個体も見られる。
他の湿生植物ではサワトウガラシ、ヌメリグサ、ヒナザサ、ナガエフタバムグラ、ヒメヒラテンツキ、クログワイ、オオハリイ、ミズニラ、タチモ、
イトタヌキモ、ノタヌキモなどの生育が見られ、自然度の高さが伺える。

Fig.21 溜池畔の水際で生育するオオホシクサ。(兵庫県加東市・溜池畔 2008.10/12)
ニッポンイヌノヒゲ、ヌメリグサ、ヌマカゼクサ、アメリカセンダングサ、タチモなどとともに生育。

参考画像----------オオホシクサの種間雑種----------
Fig.22 オオホシクサとツクシクロイヌノヒゲの種間雑種と推定される個体。   (兵庫県加東市・溜池畔 2008.10/5)
両種が混生する溜池畔で見られた。頭花はオオホシクサ並みに大きく、花苞や萼は黒藍色である。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
佐竹義輔, 1982 ホシクサ科. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)『日本の野生植物 草本T 単子葉類』
       75〜84 平凡社
村田源. 2004. オオホシクサ. 北村四郎・村田源・小山鐡夫『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 p.183. pl.48. 保育社
村田源. 2004. オオホシクサ. 『近畿地方植物誌』 150. 大阪自然史センター
高田順. 1996. ホシクサ属数種の種子形態(1). 水草研究会会報 58:18〜24
高田順. 1998. ホシクサ属数種の種子形態(2). 水草研究会会報 63:29〜34
高田順. 2000. ホシクサ属数種の種子形態(3). 水草研究会会報 69:22〜34
高田順. 2001. ホシクサ属数種の種子形態(4). 水草研究会会報 72:17〜23
高田順. 2007. オオホシクサの変異と推定雑種. 水草研究会会報 88:17〜24
矢内正弘. 2008. 県内のホシクサ科植物について. 兵庫植物誌研究会会報 75:1〜3.
橋本光政・宮本太・高橋晃 2007. オオホシクサ. 兵庫県産維管束植物9 ホシクサ科. 人と自然18:115. 兵庫県立・人と自然の博物館.

最終更新日:3rd.Nov.2014

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