ノニガナ | Ixeris polycephala A. Gray | キク科 ニガナ属 |
湿生植物 |
Fig.1 (京都府中丹地方・水田 2015.4/24) |
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Fig.2 (大阪府・淀川河川敷 2013.4/16) 氾濫原、河川敷、水田の畦、耕起前の水田などに生育する1年草または越年草。 茎は高さ15〜50(〜70)cm。根生葉は花時にも残り、線形〜線状披針形。 茎の中部の葉は無柄で、矢じり状に茎を抱く。頭花はくずれた散房花序につき、黄色で、径8mm。 総苞は長さ5〜6mm、総苞内片は8〜9個。痩果は楕円形、長さ3〜3.5mm。冠毛は純白色、長さ約5mm。 ニガナ(I. dentata)は花の径約15mm。総苞の長さ7〜8mm。小花は5〜7個。茎葉は茎を抱く。 ハナニガナ(I. dentata var. albiflora f. amplifolis)はニガナよりも丈夫で大型。総苞の長さ7〜8mm。小花は8〜11個。 カワラニガナ(I. tamagawaensis)は葉の長さ8〜15cm、幅3〜5mm、ときにまばらな歯牙縁がある。頭花の径15〜20mm。総苞の長さ9〜10mm。本州中部以北。 ホソバニガナ(I. beauverdianum)は茎葉基部は茎を抱かず、花の径5〜7mmで、小花はふつう6個。稀。 近似種 : ニガナ、 ハイニガナ、 ハナニガナ、 ホソバニガナ、 オオジシバリ、 スイラン ■分布:本州、四国、九州 ・ 朝鮮半島、中国、インド、カフカズ ■生育環境:氾濫原、河川敷、水田の畦、耕起前の水田など。 ■花期:4〜5月 ■西宮市内での分布:南部での古い記録があるが現在は市街地となっており、市内では絶滅した可能性が高い。 圃場整備、環境改変などで全国的に減少しつつあり、絶滅危惧種に指定する府県も多い。兵庫県内では記録は多いが、要再調査だろう。 |
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↑Fig.3 根生葉と茎下方の葉。(京都府中丹地方・水田 2015.4/24) 根生葉や茎下方の葉は長い線形〜線状披針形、花時にも残る。 |
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↑Fig.4 多形的な根生葉。(京都府中丹地方・水田 2015.4/24) 根生葉は線形で長いものから、羽状になるものまで見られ、同一集団内でも変異に富む。 |
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↑Fig.5 茎中部の葉。(京都府中丹地方・水田 2015.4/24) 茎中部の葉は線状披針形〜披針形、葉縁にはしばしば低い鋸歯がまばらに見られ、無柄、基部は矢じり状となって茎を抱く。 |
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↑Fig.6 茎葉基部の拡大。(京都府中丹地方・溜池畔 2015.4/24) |
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↑Fig.7 開花したノニガナ。(大阪府・淀川河川敷 2013.4/16) 頭花はくずれた散房花序に集まってつき、黄色、晴天時の午前中に開花する1日花で、1つの花序で1日1〜3花が順次開花していく。 |
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↑Fig.8 頭花。(大阪府・淀川河川敷 2013.4/16) 頭花は径8mm、小花は舌状花で、多数が集まる。 |
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↑Fig.9 花序の一部拡大。(大阪府・淀川河川敷 2013.4/16) 頭花の総苞は長さ5〜6mm、総苞内片は8〜9個。花後は総苞下部がふくらみ、頭花の柄は伸びる。 図鑑には花後に頭花が「うなだれる」「下を向く」という記述があるが、これまでそのような例を観察したことはない。 |
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↑Fig.10 展開していく花序。(大阪府・京都府) 花後の頭花はその柄が伸びるため、花序の開花が進んでいくにつれて、花序は大きく展開していく。 |
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↑Fig.11 痩果は楕円形。冠毛は純白色、長さ約5mm。(京都府中丹地方・水田 2015.4/24) |
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↑Fig.12 痩果。(京都府中丹地方・水田 2015.4/24) 痩果は長さ3〜3.5mm、翼状の縦条があり、頂部は細くなって冠毛と接続する。 |
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↑Fig.13 越冬ロゼット。(京都府中丹地方・休耕田 2016.1/14) 越冬時のロゼット葉の一部は開花時にも残っている。 |
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↑Fig.14 ロゼット葉。(京都府中丹地方・休耕田 2016.1/14) ロゼット葉は長柄があり、葉身は線状披針形でまばらに鋸歯があり、葉身中部よりやや上からしだいに狭くなり、葉柄に続く。 |
他地域での生育環境と生態 |
Fig.15 河川敷に生育するノニガナ。画像中には2個体が生育。(大阪府・淀川河川敷 2013.4/16) 淀川河川敷の初夏に導水されて水没するヨシ原中の水路内に十数個体が点在していた。周囲にはカモジグサらしきイネ科草本が見られる。 土壌は砂質で、素掘りの掘削水路内にはヨシのほかナルコスゲ、ミコシガヤ、ノウルシ、セイヨウカラシナ、ニョイスミレ、シロネなどが生育している。 |
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Fig.16 耕起前の水田に点在するノニガナ。画像中には3個体が生育。(京都府中丹地方・水田 2015.4/24) 氾濫原由来の田園地帯の耕起前水田に、春開花の水田雑草に混じって、80個体あまりのノニガナが点々と生育していた。 広大な面積を有する元氾濫原だからだろう、潜在植生に優れた場所で、各所でオグルマ、コタネツケバナ、ミズタカモジ、ムツオレグサが見られるほか、 休耕田ではコウライイチイゴケ、ノハナショウブ、カキツバタ、ヒメコウガイゼキショウ、サンカクイ、タコノアシが、水路内ではアオカワモズク、 チャイロカワモズクが繁茂している。 5月終わりに再訪したところ、ノニガナの生育する水田には水が入れられ、半ば水没した集団は草体が溶け始めていた。水没には弱いようである。 稲作のサイクルと合致した生活史をもつことにより、これまで水田という2次的自然環境で生き延びてきたのだろう。 |
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【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 北村四郎, 1981. キク科ニガナ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編) 『日本の野生植物 草本3 合弁花類』 p.229〜230. pls.214〜217. 平凡社 北村四郎・村田源・堀勝, 2004 キク科ニガナ属. 『原色日本植物図鑑 草本編(1) 離弁花編』 p.5〜7. pls.2. 支倉千賀子. 2001. キク科ニガナ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 1433〜1437. 神奈川県立生命の星・地球博物館 小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. ノニガナ. 『六甲山地の植物誌』 208. (財)神戸市公園緑化協会 村田源. 2004. ノニガナ. 『近畿地方植物誌』 24. 大阪自然史センター 小山博滋・黒崎史平・高野温子 2006. ノニガナ. 兵庫県産維管束植物8 キク科ニガナ属. 人と自然17:172. 兵庫県立・人と自然の博物館 最終更新日:8th.Dec.2016 |