アカフユノハナワラビ | Botrychium × pseudoternatum (Sahashi) Nakaike | ||
里山・草地のシダ | ハナヤスリ科 ハナワラビ属 |
Fig.1 (兵庫県篠山市・社寺の石垣 2014.10/24) |
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Fig.2 (兵庫県篠山市・社寺の石垣 2014.1/23) 日当たり良い土手、畦、草地などに生育する小型の冬緑性シダ。 フユノハナワラビとアカハナワラビの推定種間雑種で、冬期に鮮やかに紅変する。兵庫県ではアカハナワラビよりも稀である。 形態的にはフユノハナワラビとほとんど変わらないが、紅変前の葉はややくすんだ灰緑色である。 フユノハナワラビは葉裏まで紅変しないが、本種はふつう葉裏まで鮮やかに紅変する。 アカハナワラビと混生する場所もあるが、フユノハナワラビに混じって現れることもあり、アカハナワラビとフユノハナワラビの雑種の可能性が高い。 *M先生より、おそらくアカハナワラビとフユノハナワラビが浸透交雑を繰り返したものだろうとのコメントを頂きました。 フユノハナワラビ(B. ternatum)は冬期に葉裏まで紅変しないもの。ふつうに見られる。 アカハナワラビ(B. nipponicum)は向陽の林下に生育し、栄養葉の羽片の頂片は鋭頭、裂片は鋭鋸歯縁、胞子葉は胞子散布後に枯死する。ふつう冬季に紅変が著しい。 オオハナワラビ(B. japonicum)は日陰〜半日陰の林下に生育し、栄養葉の裂片は狭楕円形、鋭頭〜やや鋭尖頭、鋭鋸歯縁〜波状縁。 胞子葉は胞子散布後も残る。 ヤマハナワラビ(B. multifidum)は本州中部以北の向陽の山地に生育し、栄養葉の羽片の頂片は鈍頭、裂片は全縁または鈍鋸歯縁。胞子葉は胞子散布後に枯死する。 エゾフユノハナワラビ(B. multifidum var. robustum)はヤマハナワラビの変種で、母種よりも大型で葉柄に微毛が多く、関西では伊吹山や大峰山などの高所に生育する。 モトマチハナワラビ(B.sp.)は最近見出された種。日陰の林下に生育し、常緑性。栄養葉は光沢があり、羽片の頂片は鋭頭、裂片は細く、鋭鋸歯縁。胞子葉は胞子散布後にも残る。 ナンキハナワラビ(B.sp.)は最近見出された種。日陰の林下に生育し、常緑性。光沢がありモトマチハナワラビに似るが羽片の切れ込みはより浅く、裂片は鋭鋸歯縁。 胞子葉は胞子散布後にも残る。栄養葉の一部に胞子嚢がつくことが多い。 アイフユノハナワラビ(B. ternatum × B. japonicum)はオオハナワラビとの雑種で、両種の混生地に出現する。詳細はオオハナワラビのページを参照。 近縁種 : フユノハナワラビ、 アカハナワラビ、 オオハナワラビ、 モトマチハナワラビ、 ナンキハナワラビ、 アカネハナワラビ、 アイフユノハナワラビ 関連ブログ・ページ 『Satoyama, Plants & Nature』 冬のハナワラビの迷宮 紅変したハナワラビ達 冬緑〜常緑性ハナワラビの種間雑種 ■分布:本州、伊豆大島 ■生育環境:平地から山地の日当たり良い土手、畦、草地などに稀に見られる。 |
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↑Fig.3 展葉間もなく紅変しつつある栄養葉。(兵庫県篠山市・社寺の石垣 2014.10/24) 栄養葉は灰緑色を帯び、やや厚い革質、無毛、葉身は3出状に3〜4回羽状に深裂し、ほぼ5角形、鋭頭。羽片はほぼ3角形。 |
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↑Fig.4 羽片と裂片。(兵庫県篠山市・社寺の石垣 2014.10/24) 裂片は広楕円形〜広卵形、円頭、わずかに鈍鋸歯縁。 中央脈は白味を帯び、アカハナワラビのようなカスリ模様は大変細かく不明瞭である。 |
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↑Fig.5 胞子葉の拡大。(兵庫県篠山市・社寺の石垣 2014.10/24) 球形で粒の揃った正常な胞子嚢が並んでいる。 |
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↑Fig.6 胞子。(兵庫県篠山市・社寺の石垣 2014.10/24) 胞子の外膜は網目模様があるがほぼ平滑で、オオハナワラビやモトマチハナワラビのような小突起は見られない。 |
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↑Fig.7 胞子の拡大。(神戸市・社寺の土手 2014.12/11) 1200倍の透過画像を深度合成。胞子外膜の網目模様がわかる。胞子は丸味を強く帯びた4面体で、1頂点のみが明瞭。 |
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↑Fig.8 胞子の大きさ。(神戸市・社寺の土手 2014.12/11) 1目盛は1.6μ。16〜20目盛内に納まり、25〜32μとなり、純粋種よりも変異幅が広い。 |
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↑Fig.9 冬期に紅変した栄養葉。(京都府福知山市・溜池土堤 2014.3/11) 冬期にはアカハナワラビのように鮮やかに紅変する。 |
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↑Fig.10 紅変した葉の裏面。(京都府福知山市・溜池土堤 2014.3/11) アカハナワラビ同様、著しく紅変する。 |
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↑Fig.11 紅変した葉の羽片。(京都府福知山市・溜池土堤 2014.3/11) 中央脈はやや色が薄いが、カスリ模様は確認できない。 |
生育環境と生態 |
Fig.12 社寺の石垣に生育するアカフユノハナワラビ。(兵庫県篠山市・社寺の石垣 2014.1/23) 日当たり良い石垣の半ばに、ゲジゲジシダ、イヌシダ、コナスビ、キランソウなどとともに1個体のみが生育している。 社寺境内の林縁にはオオハナワラビが多いが、アカハナワラビが4個体、草地ではフユノハナワラビもわずかに生育している。 |
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Fig.13 溜池土堤に生育するアカフユノハナワラビ。(京都府福知山市・溜池土堤 2014.3/11) 山間の重ね池の間にある土堤に、多くのフユノハナワラビに混じって3個体ほど生育している。 左のものはフユノハナワラビで、アカフユノハナワラビの紅変が著しいことがよく解る。 周辺30キロ圏内でアカハナワラビの自生地は確認できていないし、近辺にオオハナワラビの自生地もない。 |