フユノハナワラビ | Botrychium ternatum (Thunb.) Sw. | ||
里山・草地のシダ | ハナヤスリ科 ハナワラビ属 |
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Fig.1 (兵庫県三田市・溜池土堤 2010.12/26) |
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Fig.2 (兵庫県三田市・溜池土堤 2011.11/9) 本ページはアイフユノハナワラビ(フユノハナワラビ×オオハナワラビ)が混じっている可能性があり、再検討が必要なページです 日当たり良い土手、畦、草地などに生育する小型の冬緑性シダ。 根茎は短く、直立し、葉を年に1枚出す。 葉は高さ10〜55cm、担葉体は短く、長さ2〜4cm、径約2mm、栄養葉と胞子葉が相接して出るように見える。 栄養葉の柄は長さ3〜8cmあるいはそれ以上、無毛、葉身は3出状に3〜4回羽状に深裂し、ほぼ5角形、鋭頭、長さ5〜10cm、 幅8〜12cm、暗緑色で、やや厚い革質。羽片はほぼ3角形、下部のものは長い柄がある。 裂片は広楕円形〜広卵形、円頭、わずかに鈍鋸歯縁、それほど混みあってはいない。 胞子葉は栄養葉よりはるかに長く、柄は長さ12〜25cm、穂は円錐状、2〜3回羽状に分岐し、長さ4〜10cm。 胞子葉は胞子散布後には枯れ落ちる。胞子の外膜はほぼ平滑。染色体数はn=45,2n=90の2倍体。 アカハナワラビ(B. nipponicum)は向陽の林下に生育し、栄養葉の羽片の頂片は鋭頭、裂片は鋭鋸歯縁、胞子葉は胞子散布後に枯死する。ふつう冬季に紅変が著しい。 オオハナワラビ(B. japonicum)は日陰〜半日陰の林下に生育し、栄養葉の裂片は狭楕円形、鋭頭〜やや鋭尖頭、鋭鋸歯縁〜波状縁。 胞子葉は胞子散布後も残る。 ヤマハナワラビ(B. multifidum)は本州中部以北の向陽の山地に生育し、栄養葉の羽片の頂片は鈍頭、裂片は全縁または鈍鋸歯縁。胞子葉は胞子散布後に枯死する。 エゾフユノハナワラビ(B. multifidum var. robustum)はヤマハナワラビの変種で、母種よりも大型で葉柄に微毛が多く、関西では伊吹山や大峰山などの高所に生育する。 モトマチハナワラビ(B.sp.)は最近見出された種。日陰の林下に生育し、常緑性。栄養葉は光沢があり、羽片の頂片は鋭頭、裂片は細く、鋭鋸歯縁。胞子葉は胞子散布後にも残る。 ナンキハナワラビ(B.sp.)は最近見出された種。日陰の林下に生育し、常緑性。光沢がありモトマチハナワラビに似るが羽片の切れ込みはより浅く、裂片は鋭鋸歯縁。 胞子葉は胞子散布後にも残る。栄養葉の一部に胞子嚢がつくことが多い。 アイフユノハナワラビ(B. ternatum × japonicum)はオオハナワラビとの雑種で、両種の混生地に出現する。詳細はオオハナワラビのページを参照。 アカフユノハナワラビ(B. × pseudoternatum)はアカハナワラビとの雑種で、両種の混生地に出現する。 近縁種 : アカフユノハナワラビ、 アカハナワラビ、 オオハナワラビ、 モトマチハナワラビ、 ナンキハナワラビ、 アカネハナワラビ、 アイフユノハナワラビ、 アカフユノハナワラビ 関連ブログ・ページ 『Satoyama, Plants & Nature』 冬のハナワラビの迷宮 紅変したハナワラビ達 冬緑〜常緑性ハナワラビの種間雑種 ■分布:北海道(渡島)本州、四国、九州 ・ 東アジアの温帯下部〜暖帯域。 ■生育環境:平地から山地の日当たり良い土手、畦、草地など。 |
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↑Fig.3 栄養葉。(兵庫県小野市・道端の草地 2013.10/18) 栄養葉は暗緑色で、やや厚い革質、無毛、葉身は3出状に3〜4回羽状に深裂し、ほぼ5角形、鋭頭。羽片はほぼ3角形。 |
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↑Fig.4 羽片と裂片。(西宮市・林縁草地 2013.11/4) 裂片は広楕円形〜広卵形、円頭、わずかに鈍鋸歯縁。 よく似たオオハナワラビやアカハナワラビは鋸歯がとがる。 また、アカハナワラビは葉脈にそって淡色のかすり模様が入ることにより区別できる。 |
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↑Fig.5 栄養葉の変異。(兵庫県小野市・水田の畦 2010.12/12) 栄養葉が大きく、裂片の幅が狭い。鋸歯は鈍頭である。 この個体の胞子葉にはソーラスがほとんど付いておらず、除草剤などの化学物質による害であると考えられる。 |
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↑Fig.6 胞子葉をあげた個体。(兵庫県篠山市・林道脇草地 2011.10/23) 秋〜冬いかけて栄養葉の葉柄基部から胞子葉をあげる。胞子葉は1〜2回羽状に分岐し、葉肉を欠く。 胞子葉の葉柄は多少土臭いが甘味があり、食用となる。 |
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↑Fig.7 成熟直前の胞子葉の拡大。(兵庫県篠山市・林道脇草地 2011.10/23) 胞子嚢は小枝の両側に並び、柄がなく、軸の外側に向けて横に裂開する。 画像のものは朝露に濡れ、胞子嚢は成熟して褐色を帯び、裂開する横溝が見える。 |
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↑Fig.8 胞子。(兵庫県篠山市・社寺境内 2011.11/12) 胞子の外膜はほぼ平滑で、オオハナワラビやモトマチハナワラビのような小突起は見られない。 |
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↑Fig.9 倒伏した胞子葉。(西宮市・林縁草地 2013.2/2) 胞子葉は胞子放出後、葉柄ごと倒れこむ。 |
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↑Fig.10 冬期にやや紅色を帯びた栄養葉。(兵庫県三田市・溜池土堤 2012.1/12) フユノハナワラビでも冬期に紅色を帯びるものは多い。特に寒い地域のものは強く紅紫色を帯びることがある。 |
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↑Fig.11 フィドルヘッド。(神戸市・草地土手 2013.9/17) 9月に入ると地上に葉を出す。胞子葉はゆるく巻いて出るが、栄養葉は巻かないようだ。 この頃の栄養葉の葉柄には、まだ細毛が見られる。 |
生育環境と生態 |
Fig.12 水田の畦に生育するフユノハナワラビ。(兵庫県加東市・水田の畦 2011.1/25) 秋になると里山の水田の畦にフユノハナワラビが目立つようになる。刈り込みの行き届いた溜池土堤や棚田の土手にも多い。 ここではチガヤを主体とした水田の畦に、オオジシバリ、オヘビイチゴ、ヤハズエンドウ、ニガナ、トウバナ、メリケンカルカヤなどとともに見られた。 |
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Fig.13 溜池土堤に生育するフユノハナワラビ。(兵庫県三田市・溜池土堤 2011.11/9) 2個連なった重ね池の間にある土堤直下の平坦な草地に、フユノハナワラビが高い密度で生育していた。 チガヤ、ススキ、トダシバ、セイタカアワダチソウが優占し、ヨモギの多いありふれた草地だが、セイタカアワダチソウが群生する株元からも、 大型の個体が生育していた。 |
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Fig.14 林道脇に生育するフユノハナワラビ。(兵庫県篠山市・林道脇草地 2011.10/23) 里山の林道脇の草地が草刈り管理され、多くのフユノハナワラビの生育が見られた。 林道脇であるため周囲の雑木林からの種子供給により、コナラ、ヤマツツジ、リョウブ、ヌルデ、ヒサカキの幼木、ススキなども見られるが、 刈り込みにより矮小化しており、ノアザミ、サワオトギリ、オトギリソウ、アリノトウグサ、オトコエシ、ツルリンドウ、ニガナ、ヘクソカズラ、 スイカズラ、コスミレ、シハイスミレ、ニオイタチツボスミレ、ウツボグサ、センブリ、ヒメカリマタガヤ、チガヤ、トダシバ、スズメノヤリ、 ヌカボシソウ、アオスゲ、ジュズスゲ、ヤワラスゲなどの草本が見られた。 |