ハナタデ
 (ナガボハナタデを含む)
Persicaria posumbu
 (Buch.-Ham. ex D.Don) H.Gross
  山地、林床の植物 タデ科 イヌタデ属
Fig.1 (兵庫県三田市・雑木林の林縁 2009.10/16)

Fig.2 (西宮市・林道脇 2012.10/30)

丘陵〜山地の林縁や林床に生育する1年草。
茎の下部は斜上または横に這い、上部は直立、よく分枝し、高さ30〜60cm、ほとんど無毛。
葉は薄く、卵形〜長卵形、先は尾状に細まり、基部はくさび形、両面まばらに毛があり、表面にはふつう1対の丸い暗斑があり、
長さ3〜9cm、幅1.5〜3cm、葉柄は短い。
托葉鞘は無毛または脈上にあらい毛があり、縁毛は長い。
総状花序はかなりまばらに花をつけ、細長く伸びる。
萼は5深裂し、白色〜紅色、長さ2〜3mm。痩果は3稜形で、卵形、黒褐色で光沢があり、長さ2〜2.5mm。

【メモ】 本種は葉や花のつきかたに変異が多い。
     花序枝が長く伸び、花の間が7〜10mmとなるものをハナタデの変種ナガボハナタデ(var. laxiflora Fig.9参照)とすることがある。
近縁種 : イヌタデヤナギタデボントクタデヌカボタデサイコクヌカボヤナギヌカボ

■分布:北海道、本州、四国、九州、沖縄 ・ 朝鮮半島、中国
■生育環境:丘陵〜山地の林縁や林床など。
■花期:8〜10月

Fig.2 全草標本。(西宮市・雑木林の林縁 2010.11/14)
  茎下部は横に這うか、斜上し、よく分枝する。画像のものは一度刈り込みに遭い、基部から分枝して這うように生育していたもの。

Fig.3 葉。(西宮市・雑木林の林縁 2010.11/14)
  葉は卵形〜長卵形で、先は尾状に伸び、最も幅の広い部分は中央よりも下寄りにある。葉柄は短い。
  ふつうFig.1やFig.2のように葉の中央部には暗斑が出るが、画像のように出ない個体もある。

Fig.4 葉の表面(左)と裏面(右)の一部拡大。(西宮市・雑木林の林縁 2010.11/14)
  葉表には中央脈上に伏毛があるほか、全面にほぼ均等に伏毛が散生する。
  葉裏はやや白味を帯び、中央脈上に伏毛が見られ、側脈上には開出気味の軟毛が生える。葉縁にも短毛が並ぶ。

Fig.5 托葉鞘。(西宮市・雑木林の林縁 2010.11/14)
  筒部は膜質円筒形、数脈があり、脈上にあらい伏毛がまばらに生えているほか、下部にごくまばらに伏毛が見られた。
  脈は口部から突出して縁毛となり、長さは筒部と同長か長い。

Fig.6 花序。(西宮市・渓流畔 2010.10/14)
  花序は長さ5〜10cmの総状となるが、花のつきかたには個体や生育環境によって粗密があるが、イヌタデよりもあきらかにまばらに付く。
  またハナタデの花序はボントクタデの花序のように垂れ下がらない。

Fig.7 花序の一部拡大。(西宮市・渓流畔 2010.10/14)
  花被はふつう淡紅色、5深裂するが4深裂するものも混じり、表面に腺点はない。雄蕊は7個。雌蕊は1個で3裂する。
  花被の白色のものは品種シロバナハナタデ(f. albifrora)とされる。

Fig.8 痩果。(西宮市・雑木林の林縁 2010.11/14)
  痩果はふつう3稜形で、黒褐色、長さ2〜2.5mm、表面は平滑で光沢がある。

Fig.9 ナガボハナタデ(var. laxiflora)の花序。(兵庫県宍粟市・湿地 2009.9/27)
  花序は細長く、花数は少なく、7〜10mmの間隔でつく。葉や托葉鞘はハナタデと全く変わらない。
  兵庫県下ではハナタデよりもさらに山地寄りで高標高地の湿地や細流が見られるような多湿の疎林の林床に生育が見られ、
  ハナタデよりも多湿な環境を好むようである。

生育環境と生態
Fig.10 導水路脇に生育するハナタデ。(兵庫県香美町・水路脇 2010.10/11)
雑木林の林縁を巡る導水路の脇に点々と群生していた。
同所的にミヤマカタバミ、アオミズ、ミゾソバ、ヤノネグサ、ノブキ、ミズヒキ、アカバナ、ゴマナ、コチヂミザサ、ドクダミ、ニョイスミレなどが見られた。

Fig.11 林道脇で紅葉したハナタデ。(兵庫県養父市・林道脇 2010.10/11)
高原の湿った林道脇に生育するハナタデが紅葉していた。
ここでは、ミゾソバ、ヤノネグサ、アオミズ、ゴマナ、コチヂミザサなどとともに見られた。


最終更新日:3rd.Mar.2014

<<<戻る TOPページ