イヌホタルイ×カンガレイ | Schoenoplectiella juncoides × S. triangulata | カヤツリグサ科 ホソガタホタルイ属 |
湿生〜抽水植物 |
Fig.1 (兵庫県神戸市・溜池 2011.9/25) 溜池、湿地、休耕田などに生えるカンガレイとイヌホタルイの雑種。多年草。 根茎は短く横走し、茎は密に叢生し、高さ50〜70cm。 茎の横断面はいびつな4稜または不完全な5稜があり、太さはカンガレイとイヌホタルイの間くらいで、結実した茎は倒伏気味にしなだれる。 小穂は狭長楕円形〜狭披針形で長く、ねじれ、結実は不完全なものが多い。 これまで、このページのものはシカクホタルイとしてきたが、カヤツリグサ科の研究者Oさんがシカクホタルイのタイプ標本を調べたところ、 サンカクホタルイと同じもので、シカクホタルイはサンカクホタルイのシノニムであると教えていただいた。 したがってイヌホタルイとカンガレイの雑種は未記載であり、標準和名もまだないため、イヌホタルイ×カンガレイとした。(2014.9/26更新) 近似の種間雑種に以下のものがある。 サンカクホタルイ(S. triangulata ×S. hotarui)はカンガレイとホタルイの種間雑種で、 茎には3稜があり、小穂は卵形で長く伸びず、 よく結実し、刺針状花被片は痩果より長い。 ホタルイモドキ(S. ×juncohotarui)はイヌホタルイとホタルイの種間雑種で、雌蕊柱頭は2岐のものと3岐のものが混じり、 ほとんど結実しないという。 カンガレイとヒメホタルイの種間雑種はアイノコカンガレイ(S. ×uzenensis)とされ、茎の高さ50cm以内、径3mm以下で、短い根茎がある。 小穂は1〜2個つき、披針形、褐色で鋭頭。 また、カンガレイとタイワンヤマイの種間雑種にオグライ(オグラカンガレイ)(S. ×oguraensis)があり、小穂は赤褐色で、茎は太く3稜形となる。 近似種 : イヌホタルイ、 カンガレイ、 サンカクホタルイ、 ホタルイモドキ、 ホタルイ、 タイワンヤマイ、 ハタベカンガレイ、 ヒメカンガレイ、 アイノコカンガレイ ■分布:本州、四国、九州 ・ 国外分布は不明 ■生育環境:溜池、湿地、休耕田など。 ■果実期:8〜10月 ■西宮市内での分布:市内ではカンガレイとイヌホタルイが同所的に生育する場所はなく、本種は確認できていない。 |
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↑Fig.2 全草標本。(兵庫県神戸市・溜池 2011.9/25) 茎はカンガレイよりも細く、イヌホタルイよりも太く、両種の中間くらいの太さがある。 小穂は細長くのびてねじれるのが特徴である。 水に浸かった茎の苞葉基部からは、クローンが芽生し、発根が見られる。 |
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↑Fig.3 基部と根茎。(兵庫県神戸市・溜池 2011.9/25) 根茎は短く横にはう。茎の基部にはふつう2〜3個の鞘があり、淡色〜淡褐色。 |
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↑Fig.4 茎の横断面。(兵庫県神戸市・溜池 2011.9/25) 1メモリは0.1mm。茎の横断面はいびつな4稜または不完全な5稜があり、太さはカンガレイとイヌホタルイの間くらい。 |
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↑Fig.5 熟した花序を持つ茎は、その重さでしなだれる。(兵庫県神戸市・溜池 2011.9/25) |
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↑Fig.6 花序。(兵庫県神戸市・溜池 2011.9/25) 花序は他のフトイ属同様、茎(有花茎)に偽(仮)側生する。小穂は細長く伸び、太さはいびつで、よじれるものが多い。 |
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↑Fig.7 鱗片。(兵庫県神戸市・溜池 2011.9/25) 鱗片は広卵形、先はわずかに芒状となる。 |
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↑Fig.8 痩果。(兵庫県神戸市・溜池 2011.9/25) 痩果は結実したものも混じるが、不稔のものも多く、大きさに大小があり一定しない。 |
他地域での生育環境と生態 |
Fig.9 やや富栄養な溜池にカンガレイやイヌホタルイに混じって生育するイヌホタルイ×カンガレイ。(兵庫県神戸市・溜池 2011.9/25) 画像中央のものがイヌホタルイ×カンガレイで、両側にはカンガレイが生育している。後方にはイヌホタルイが生育する。 ここではカンガレイが多く見られ、本種は4株生育していた。同所的にキシュウスズメノヒエ、イボクサ、ヘラオモダカ、アゼナなどが見られた。 |
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【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 大井次三郎, 1982. カヤツリグサ科ホタルイ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編) 『日本の野生植物 草本1 単子葉類』 p.176〜179. pls.160〜162. 平凡社 小山鐡夫, 2004 カヤツリグサ科ホタルイ属. 北村四郎・村田源・小山鐡夫 『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 p.212〜217. pls.54〜55. 保育社 堀内洋. 2001. カヤツリグサ科ホタルイ属(狭義). 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 435〜439. 神奈川県立生命の星・地球博物館 星野卓二・正木智美, 2003. ホタルイ属. 星野卓二・正木智美・西本眞理子『岡山県カヤツリグサ科植物図譜(U)』 120〜137. 山陽新聞社 谷城勝弘, 2007. フトイ属. 『カヤツリグサ科入門図鑑』 152〜164. 全国農村教育協会 星野卓二・正木智美, 2011 シカクホタルイ. 星野卓二・正木智美・西本眞理子『日本カヤツリグサ科植物図譜』 674,675. 平凡社 黒崎史平・松岡成久・高橋晃・高野温子・山本伸子・芳澤俊之 2009. シカクホタルイ. 兵庫県産維管束植物11 カヤツリグサ科. 人と自然20:178. 兵庫県立・人と自然の博物館 最終更新日:26th.Sept.2014 |