サンカクホタルイ Schoenoplectiella hotarui × S. triangulata   カヤツリグサ科 ホソガタホタルイ属
湿生〜抽水植物
Fig.1 (滋賀県・湿地 2012.10/1)

Fig.2 (兵庫県加西市・溜池畔 2012.10/31)

溜池、湿地、休耕田などに生えるカンガレイとホタルイの雑種。多年草。
根茎は短く横走し、茎は密に叢生し、高さ50〜70cm。
茎の横断面は3稜形、またはいびつな3稜形、太さはカンガレイとイヌホタルイの間くらい。
小穂は卵形〜披針形で、痩果は正常に結実しているものが多く、刺針状花被片は痩果よりも長かった。
なお、本雑種はかなり以前から知られているが、まだ正式に記載されていない。
なおシカクホタルイは本種のシノニムである。

イヌホタルイ x カンガレイS. juncoides ×S. triangulata)はカンガレイとイヌホタルイの種間雑種で、茎はいびつな4〜5稜がある。
小穂は狭長楕円形〜狭披針形で長く、ねじれ、結実は不完全なものが多い。
ホタルイモドキS. ×juncohotarui)はイヌホタルイとホタルイの種間雑種で、雌蕊柱頭は2岐のものと3岐のものが混じり、
ほとんど結実しないという。
カンガレイとヒメホタルイの種間雑種はアイノコカンガレイS. ×uzenensis)とされ、茎の高さ50cm以内、径3mm以下で、短い根茎がある。
小穂は1〜2個つき、披針形、褐色で鋭頭。
また、カンガレイとタイワンヤマイの種間雑種にオグライ(オグラカンガレイ)S. ×oguraensis)があり、小穂は赤褐色で、茎は太く3稜形となる。
近似種 : ホタルイカンガレイイヌホタルイ x カンガレイ、 ホタルイモドキ、 オグラカンガレイ、 イヌホタルイタイワンヤマイ
ハタベカンガレイヒメカンガレイアイノコカンガレイ

■分布:本州、四国、九州 ・ 国外分布は不明
■生育環境:溜池、湿地、休耕田など。
■果実期:8〜10月
■西宮市内での分布:市内では本種は確認できていない。

Fig.3 全草標本。(滋賀県・湿地 2012.10/1)
  茎はカンガレイよりも細く、ホタルイよりも太く、両種の中間くらいの太さがある。
  小穂はシカクホタルイのように細長くのびてねじれることがなく、茎の細いヒメカンガレイにも少し似る。

Fig.4 基部と根茎。(滋賀県・湿地 2012.10/1)
  根茎は短く横にはう。茎の基部にはふつう2〜3個の鞘があり、淡色〜淡褐色。

Fig.5 茎の横断面。(滋賀県・湿地 2012.10/1)
  1メモリは0.1mm。茎の横断面は3稜またはいびつな3稜があり、太さはカンガレイとイヌホタルイの間くらい。
  ヒメカンガレイよりも若干細い。

Fig.6 花序。(滋賀県・湿地 2012.10/1)
  花序は他のフトイ属同様、茎(有花茎)に偽(仮)側生する。
  小穂は卵形〜披針形、長さ1.8cm以下。シカクホタルイのように長く伸びたり、よじれたりしない。

Fig.7 痩果。(滋賀県・湿地 2012.10/1)
  痩果はほとんどが正常に結実している。

Fig.8 痩果。(滋賀県・湿地 2012.10/1)
  痩果は広倒卵形で、長さ1.6〜2.0mm程度、表面には細かな横しわがあり、横断面は扁3稜形。
  刺針状花被片は5〜7本見られ、痩果より少し長く、上向きの小刺がある。

Fig.9 おしべの葯。(滋賀県・湿地 2012.10/1)
  雄しべの葯は約1.5mm、カンガレイの葯よりも短い。

Fig.10 クローンの芽生。(兵庫県加西市・溜池畔 2012.10/31)
  苞葉基部からの芽生が多数認められた。

他地域での生育環境と生態
Fig.11 湿地に生育するサンカクホタルイ。(滋賀県・湿地 2012.10/1)
かつては休耕田だったとみられる湛水状態の湿地に1株生育していた。
湿地ではチゴザサが優占し、ヤノネグサ、ヒロハノウナギツカミ、ホタルイ、カンガレイ、サンカクイ、アブラガヤ、ミズガヤツリ、
ヘラオモダカ、ハシカグサ、ミズユキノシタ、キセルアザミ、サワヒヨドリ、イグサ、アオコウガイゼキショウ、ガマが生育していた。

Fig.12 溜池畔に生育するサンカクホタルイ。(兵庫県加西市・溜池畔 2012.10/31)
広い段丘上に広がる水田の皿池の溜池畔に1個体のみが生育しており、周辺で両親種は確認できない。
溜池畔の陸地や湿地は狭く、おおくはチゴザサに覆われており、サンカクホタルイの生育箇所では他にミゾソバ、ヤナギタデ、タチモが生育。
溜池内にはサイコクヒメコウホネが密生し、イトタヌキモが多数浮遊していた。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
大井次三郎, 1982. カヤツリグサ科ホタルイ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本1 単子葉類』 p.176〜179. pls.160〜162. 平凡社
小山鐡夫, 2004 カヤツリグサ科ホタルイ属. 北村四郎・村田源・小山鐡夫 『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 p.212〜217. pls.54〜55. 保育社
堀内洋. 2001. カヤツリグサ科ホタルイ属(狭義). 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 435〜439. 神奈川県立生命の星・地球博物館
星野卓二・正木智美, 2003. ホタルイ属. 星野卓二・正木智美・西本眞理子『岡山県カヤツリグサ科植物図譜(U)』 120〜137. 山陽新聞社
谷城勝弘, 2007. フトイ属. 『カヤツリグサ科入門図鑑』 152〜164. 全国農村教育協会


最終更新日:26th.Sept.2014

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