マツバイ | Eleucharis acicularis Roem. et Schult. var. longiseta Svenson. | カヤツリグサ科 |
湿生〜抽水植物 |
Fig.1 (西宮市・休耕田 2007.6/27) |
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Fig.2 (兵庫県丹波市・休耕田 2014.9/29) 水田や休耕田、溜池などに生える1年草。沈水状態でも生育できる。 地下に細長い根茎を横走させ、節から茎を叢生し、高さ3〜8cmになり、基部の鞘は赤味を帯びる。 小穂は長卵形で、長さ2〜4mm、数個の鱗片をまばらにつける。鱗片は広倒卵形で、長さ1.5〜2mm、円頭、紅褐色を帯びる。 痩果は長倒卵形で、長さ約1mm、隆起した格子模様がある。柱基は扁三角錐形。 刺針状花被片は3〜4個で、痩果の1.5〜2倍長、まばらに下向きの小刺がある。雌蕊柱頭は3岐する。 沈水状態のものは、草体が小さくなり、小穂を出さない。 基本種のチシママツバイ(var. acicularis)は刺針状花披片が1〜3個で痩果より短いか完全に退化する。東北地方、徳島県。 マツバイによく似たものにチャボイ(E. parvula)があり、海岸の湿地に生育する。痩果には格子模様はなく、柱基は膨らまない。 近似種 : ハリイ、 オオハリイ、 エゾハリイ、 ヤリハリイ、 コシカクイ、 シカクイ、 マシカクイ、 イヌシカクイ、 ミツカドシカクイ ■分布:日本全土 ■生育環境:水田・休耕田・溜池など。 ■果実期:7〜10月 ■西宮市内での分布:中・北部の水田や休耕田などで比較的普通に見られる。 |
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↑Fig.3 休耕田で一斉に開花したマツバイ。(西宮市・休耕田 2007.10/11) 小穂は数個の鱗片からなる小さなもの。 |
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↑Fig.4 痩果。(兵庫県丹波市・休耕田 2014.9/29) 痩果は長倒卵形で、長さ約1mm、表面には横長の格子模様がみられる。柱基は扁三角錐形。 刺針状花被片は3〜4個で、痩果の1.5〜2倍長、下向きの小刺がある。 |
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↑Fig.5 少数の茎を出した状態で越冬するマツバイ。(西宮市・休耕田 2007.1/5) 水面に氷が殆ど張らない暖冬の年、このような水中での常緑越冬の様子が観察された。 マツバイは1年草だが、沈水状態では越年することもある・ |
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↑Fig.6 成長期のマツバイ。(西宮市・休耕田 2007.5/5) |
西宮市内での生育環境と生態 |
Fig.7 湛水状態の休耕田で生育するマツバイ。(西宮市・休耕田 2007.6/27) 市内中部〜北部の休耕田ではこのような様子がよく見られる。 |
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Fig.8 休耕田の地表を覆ったマツバイ。(西宮市・休耕田 2007.8/19) マツバイを下草としてコナギ、ハリイ、イヌホタルイ、キカシグサなどが生育する。 |
他地域での生育環境と生態 |
Fig.9 溜池畔で生育するマツバイ。(兵庫県加東市・溜池畔 2012.9/13) 中栄養な溜池の岸辺に帯状に群生しているもの。 同所的にウキシバ、ヌメリグサ、ヒメホタルイ、ホシクサ、オオホシクサ、タチモ、ホソバノウナギツカミ、チョウジタデが生育していた。 |
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Fig.10 流水中で沈水状態で生育するマツバイ。(滋賀県高島市・排水路 2012.9/7) 湧水の流入のある排水路内で沈水状態で群生しており、陸生形よりも茎は長く、茎頂には小穂の形成が認められなかった。 水流が強いため、地下茎の伸長によって広がっているのだろう。 |
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【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 大滝末男, 1980 マツバイ. 大滝末男・石戸忠 『日本水生植物図鑑』 162〜163. 北隆館 大井次三郎, 1982 カヤツリグサ科ハリイ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編) 『日本の野生植物 草本1 単子葉類』 p.171〜173. pls.154〜155. 平凡社 小山鐡夫, 2004 カヤツリグサ科ハリイ属. 北村四郎・村田源・小山鐡夫 『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 p.224〜231. pl.57. 保育社 角野康郎, 1994 カヤツリグサ科ハリイ属. 『日本水草図鑑』 89〜95. 文一統合出版 堀内洋. 2001. カヤツリグサ科ハリイ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 423〜430. 神奈川県立生命の星・地球博物館 星野卓二・正木智美, 2003 ハリイ属. 星野卓二・正木智美・西本眞理子『岡山県カヤツリグサ科植物図譜(U)』 166〜191. 山陽新聞社 谷城勝弘, 2007 ハリイ属. 『カヤツリグサ科入門図鑑』 140〜151. 全国農村教育協会 小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. マツバイ. 『六甲山地の植物誌』 250. (財)神戸市公園緑化協会 村田源. 2004. マツバイ. 『近畿地方植物誌』 163. 大阪自然史センター 黒崎史平・松岡成久・高橋晃・高野温子・山本伸子・芳澤俊之 2009. マツバイ. 兵庫県産維管束植物11 カヤツリグサ科. 人と自然20:168. 兵庫県立・人と自然の博物館 最終更新日:3rd.Nov.2014 |