イガタツナミ | Scutellaria kurokawae Hara | ||
里山〜低山の植物 兵庫県RDB C種 | シソ科 タツナミソウ属 |
Fig.1 (兵庫県三田市・林縁 2007.6/15) |
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Fig.2 (兵庫県三田市・用水路脇 2013.6/4) 丘陵部や低山のやや湿った林縁、湿地、棚田の土手、用水路脇に生育する多年草。 茎は直立し高さ10〜40cmで、節間は通常葉よりも長く、間延びしたような印象を受け、茎には開出毛が目立つ。 葉は広卵形〜卵形で、毛が多く、長さ1.2〜2.5cm、鈍頭、鋸歯は丸みを帯び、両面にまばらに開出毛があり、腺点はない。 【メモ】 日向に生育し、草刈りに遭うものなどは茎がしっかりとし、節間もやや短くなる。 似た環境に生育するホナガタツナミ(S. maekawae)に似るが、茎には下向きに曲がる白毛があり、節間はイガタツナミのように長く伸びない。 タツナミソウ(S. indica)や、その変種コバノタツナミ(var. parvifolia)、ホクリクタツナミソウ(var. satocoae)とは、葉裏に腺点があることにより区別できる。 またシソバタツナミ(S. laeteviolacea)では、節間はつまり、茎にやや上向きに曲がった白毛が生える。 シソバタツナミの変種トウゴクシソバタツナミ(var. abbreviata)は茎に開出毛があるが、節間が短く、葉が茎の下方に集まることにより区別できる。 ヤマジノタツナミソウ(S. amabilis)は節間が間延びするが、草体には目立った毛はなく、葉には両面にまばらに腺点がある。 近縁種 : タツナミソウ、 コバノタツナミ、 ホクリクタツナミソウ、 ヤマタツナミソウ、 ヤマジノタツナミソウ、 シソバタツナミ、 トウゴクシソバタツナミ、 ホナガタツナミソウ、 オカタツナミソウ、 デワノタツナミソウ 関連ブログ・ページ 『Satoyama, Plants & Nature』 タツナミソウの迷宮 ■分布:北海道、本州(福島県以南)、四国 ■生育環境:丘陵や低山のやや湿った林縁、湿地、棚田の土手、用水路脇など。 ■花期:6月 |
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↑Fig.3 イガタツナミの花序。(兵庫県三田市・池畔の湿地 2007.6/15) 花はあまり沢山つかず、8個(4段)くらいまで。花序も節間が長く、間延びした印象をうける。 |
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↑Fig.4 花の拡大。(兵庫県三田市・用水路脇 2013.6/4) 花は淡紫色、長さ約2cm、基部で直角に曲がり、下唇中央部には紫斑がある。 |
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↑Fig.5 茎。(兵庫県三田市・用水路脇 2013.6/4) 茎はふつう細めで方形、長さに長短のある開出毛が生える。開出毛は先端部が曲がることはない。 |
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↑Fig.6 葉。(兵庫県三田市・用水路脇 2013.6/4) 葉は広卵形〜卵形で、毛が多く、長さ1.2〜2.5cm、鈍頭、鋸歯は丸みを帯び、まばらに開出毛がある。 |
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↑Fig.7 葉両面の拡大。左:葉表、右:葉裏。(兵庫県三田市・用水路脇 2013.6/4) 葉表には開出毛がほぼ均等に生える。葉裏には脈上に開出毛が生える。両面ともに腺点はない。 |
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↑Fig.8 日向の土手に生育するもの。(兵庫県三田市・棚田土手 2013.6/9) 草刈りの行われるような土手の草地に生育するものは茎がしっかりとして弱々しさがなく、茎や花序の節間もやや詰まる。 このような場所ではタツナミソウも生育していることが多いが、葉裏に腺点のないことにより区別できる。 |
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↑Fig.9 強度な草刈りに遭った個体。(兵庫県三田市・溜池土堤 2013.6/9) まるでコバノタツナミのように草丈が低いが、葉裏に腺点のないことにより区別できる。また果実も大きい。 |
生育環境と生態 |
Fig.10 棚田の林縁部細流脇に生育するイガタツナミ。(兵庫県三田市・棚田細流脇 2013.6/4) 管理の行き届いた山間棚田の林縁細流脇にイガタツナミが点在していた。 周辺には背丈の低いネザサに混じってタチスゲ、ゴウソ、ヌメコヌカグサ、オトコゼリ、ムカゴニンジン、ヌマトラノオ、アキノタムラソウなどが生育していた。 |
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Fig.11 湿地の周縁部に生育するイガタツナミ。(兵庫県三田市・溜池畔湿地 2013.6/9) イガタツナミはやや中栄養な湿地に生育していることがある。 同所的にゴウソ、タチスゲ、ミヤマシラスゲ、チゴザサ、イグサ、キツネノボタン類、ホソバノヨツバムグラ、ヤノネグサ、ヌマトラノオ、サワヒヨドリ、 サワシロギク、ヒメシダなどが見られることが多い。 |
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Fig.12 棚田の土手に生育するイガタツナミ。(兵庫県三田市・棚田の土手 2013.6/9) 日当たり良い棚田の土手の下部に多数のイガタツナミが生育していた。このような場所は適度の湿り気があるためイガタツナミが多い。 ここではヒメシダ、ミゾシダ、ゲジゲジシダ、スギナ、スズメノヤリ、キクムグラ、イヌハギ、ワレモコウ、タカトウダイ、ツリガネニンジン、ウツボグサ、 ニガナ、オオジシバリ、コウゾリナ、オケラ、アザミ、アキノキリンソウ、サワヒヨドリなどとともに生育していた。 |
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Fig.13 溜池畔の湿地に群生するイガタツナミ。(兵庫県小野市・湿地 2014.5/23) 草刈りと湧水の流入によりネザサの生育が抑えられている草丈の低い草地状の湿地に、イガタツナミが群生していた。 湿地の優占種は高所から順に、ネザサ、チガヤ、イヌノハナヒゲ、チゴザサと移り変わっていき、イガタツナミはネザサとチガヤの移行帯に群生している。 同所的にはコシンジュガヤ、ミカワシンジュガヤ、アブラガヤ、ヤマラッキョウ、ワレモコウ、タヌキマメ、オミナエシ、ホソバリンドウ、サワヒヨドリ、 キセルアザミが生育している。 |