コバノタツナミ Scutellaria indica  L.
  var. parvifolia  (Makino) Makino
  里山・林縁・草地の植物 シソ科 タツナミソウ属
Fig.1 (兵庫県丹波市・林縁水路脇 2013.5/31)

海岸近くの土手や岩場、丘陵〜低山の里山の草地や林縁に生育する多年草。
茎は基部が長くはい、高さ5〜10cm程度が多いが、半日陰のものは20cmを越えるものもある。茎には白色の開出毛が多い。
葉は数対あってまばらにつき、広卵心形〜3角状卵形、両面ともに軟毛が多く、縁には鈍い鋸歯が3〜7対あり、
葉先は丸みを帯び、基部は心形で、長さ幅ともに0.8〜1.2cm、葉裏にはふつう明瞭な腺点が密にある。
花序は開出毛が多くやや密に花をつける。花は青紫色、ときに淡紅紫色または白色のものがあり、長さ1.5cm内外。
萼の上唇は果実期に5〜5.5mmになる。分果は1〜1.4mm、円錐状の先の尖った細突起が密にある。

【メモ】 母種のタツナミソウS. indica)は葉の長さ1〜2.5cm、鋸歯は5〜14対、果実期の上唇は6〜7mmとなる。
     同じ変種関係にあるホクリクタツナミソウ(var. satokoae)は果実期の上唇が5.5〜6.5mmとなり、分果は1.5〜1.7mmとなる。
     ときに同様な環境で見られるイガタツナミS. kurokawae)は茎に開出毛があるが、葉裏に腺点がない。
近縁種 :  タツナミソウヤマタツナミソウホクリクタツナミソウヤマジノタツナミソウシソバタツナミトウゴクシソバタツナミ
        ホナガタツナミソウ、 オカタツナミソウイガタツナミ、 デワノタツナミソウ
関連ブログ・ページ 『Satoyama, Plants & Nature』 タツナミソウの迷宮

■分布:本州、四国、九州
■生育環境:海岸近くの土手や岩場、丘陵〜低山の里山の草地、林縁など。
■花期:5〜6月

Fig.2 花序と花冠。(兵庫県丹波市・林縁水路脇 2013.5/31)
  やや密に花をつける。花は一方向を向く。
  ふつう青紫色。花筒基部はほぼ直角に上向きに曲がる。下唇には紫色の斑紋がある。
  兵庫県では下唇の紫斑は海岸寄りでは下唇全体に広がるが、内陸部のものは中心付近に薄く出るものが多く、時にホクリクタツナミソウと混同される。

Fig.3 茎。(兵庫県丹波市・林縁水路脇 2013.5/31)
  茎には明瞭な鋭稜がある。花茎下部から茎上部にかけての毛は開出する。

Fig.5 葉。(兵庫県丹波市・林縁水路脇 2013.5/31)
  葉は対生して数組まばらにつき、両面ともに軟毛が生え、葉縁の鋸歯は丸く、3〜7対ある。

Fig.6 葉裏。(兵庫県丹波市・林縁水路脇 2013.5/31)
  葉裏には黄色透明または乳白色の明瞭な腺点を密布する。

Fig.7 ホクリクタツナミソウとの萼上唇の比較。(兵庫県丹波市・林縁水路脇 2013.5/31)
  コバノタツナミの果実期の上唇は5〜5.5mm。
  これに対してホクリクタツナミソウの上唇は5.5〜6.5mmとなる。

Fig.8 分果。(兵庫県丹波市・林縁水路脇 2013.5/31)
  分果は楕円形で、1〜1.4mm、円錐状の尖った細突起が密にある。

Fig.9 秋の閉鎖花。(神戸市・水田の畦 2013.10/22)
  初夏の開花期のあとしばらく閉鎖花をつけ、盛夏には一旦休止するが、秋になると再び盛んに閉鎖花をつける。

生育環境と生態
Fig.10 溜池直下の用水路脇に生育するコバノタツナミ。(兵庫県丹波市・用水路脇 2009.5/10)
草刈りされた溜池土堤下部の湿り気のある用水路脇に生育していた。
土手にはススキ、チガヤ、ワレモコウなどが生育していたが、シカ除けの柵が用水路手前に設置され、今はシカの食害のあため荒れている。
コバノタツナミは地表に張り付くように生育しているため激しい被害は受けていないが、花序部分を食べられているものが多い。


最終更新日:2nd.Aug.2014

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