シソバタツナミ Scutellaria laeteviolacea  Koidz.
  林縁・林床の植物 兵庫県RDB Cランク種 シソ科 タツナミソウ属
Fig.1 (西宮市・林縁 2010.6/14)

Fig.2 (西宮市・雑木林の林縁 2013.5/31)

丘陵〜低山のややしめった林縁や林下に生育する多年草。
根茎は細くて横にはい、茎は直立して高さ5〜15cm、上向きに曲がった短毛を密生する。
茎の節間は短く、葉は茎下方に2〜4対あって、やや3角状の卵形で、基部は切形〜浅い心形、長さ1.5〜4cm、幅1〜2.5cm、曲がった毛が両面に生える。
葉裏に腺点があり、ふつう紫色を帯びるが、緑色のものも多くみられ、葉裏の色により他種との区別はできない。
葉身の先は鈍頭、鋸歯は丸みを帯びる。葉柄は長さ1〜3cm。
花序は1〜6cmで、花冠は紫色、基部でほぼ直角に曲がって立ち上がり、長さ約2cm。
萼は腺点と毛があって長さ約2.5mm、果実期に約5mmとなる。分果は長さ約1mmで、円錐形の突起を密生する。

【メモ】 シソバタツナミは小型のタツナミソウの仲間で、茎には曲がった毛が密に生えている。
     トウゴクシソバタツナミ(var. abbreviata)は兵庫県のものはシソバタツナミの変種が妥当と考えられ、茎に開出毛が顕著。
     ときに、シソバタツナミとトウゴクシソバタツナミの中間的な集団が見られることがある。
     本州西部や九州には変種で大型となるツクシタツナミソウ(var. discolor)が分布し、葉は長卵形で長さ2〜4cm、花穂も長いという。
近縁種 : トウゴクシソバタツナミタツナミソウコバノタツナミホクリクタツナミソウオカタツナミソウヤマタツナミソウヤマジノタツナミソウ
        ホナガタツナミソウ、 イガタツナミ、 デワノタツナミソウ
関連ブログ・ページ 『Satoyama, Plants & Nature』 タツナミソウの迷宮

■分布:本州(福島県以西)、四国、九州
■生育環境:丘陵〜低山のやや湿った林縁や林下など。
■花期:5〜6月

Fig.3 花序。(西宮市・林縁 2010.6/14)
  やや密に花をつけ、花は一方向を向く。花冠は紫色で、基部からほぼ直角に立ち上がる。

Fig.4 葉。(西宮市・林縁 2010.6/14)
  葉身はやや3角状の卵形。下方の葉は大きく、基部が浅い心形、上部のものは小さく基部は切形であった。
  図鑑では表面に光沢があるとなっているが、当地のものには光沢が見られず、また腺点はない。
  また、日陰のものでは葉裏が紫色を帯びるが、日当たりのある林縁に生育するものは裏面は紫色を帯びない。

Fig.5 紫色の斑が入った葉。(西宮市・雑木林の林縁 2013.5/31)
  半日陰〜日陰のものによく見られ、葉脈に沿って紫色の斑が入る。
  葉縁には曲がった毛が多く、両面ともに毛が多く、ビロード様の感触がある。

Fig.6 葉裏の拡大。(西宮市・渓流畔の林縁 2013.6/5)
  葉裏にはやや不明瞭な透明〜透明黄色の腺点が散布する。

Fig.7 茎の毛。(西宮市・林縁 2010.6/14)
  茎には上向きに曲がる毛が生え、特に稜上にはいちじるしく密に生える。

Fig.8 日陰に生育する個体。(西宮市・林床 2010.6/14)
  同一集団内でも林床に生育する個体は、林縁に生育するものに比べて小型となり、葉身の葉脈は紫色を帯び、葉裏も紫色となる。

Fig.9 閉鎖花と果実。(西宮市・林床 2010.6/21)
  開花期が終わると閉鎖花をつける。画像では花茎上部に白色の閉鎖花がついている。
  果実期には萼が伸びて大きくなり、中に分果をつくる。

Fig.10 分果。(西宮市・林床 2010.6/21)
  分果は腎形で、熟すと黒褐色となり、長さ約1mm、表面には円錐形の瘤粒がある。

Fig.11 若い個体。(西宮市・雑木林の林縁 2013.5/31)
  無毛で卵形の双葉が出たあと、広卵形の小さな葉を対生して出す。

生育環境と生態
Fig.12 林縁に点在するシソバタツナミ。(西宮市・林縁 2010.6/14)
アカマツ−コナラ林が主体の低山川沿いの開けた裸地の半日陰となる林縁付近にかたまって生育しており、1日中日射の当たる場所には生育していない。
シソバタツナミの生育箇所はコガクウツギ、ウツギ、クロモジといった落葉低木、マルバアオダモの幼木が適度な日陰をつくっている。
同所的にタチツボスミレ、ミヤマナルコユリ、コメガヤ、ニガイチゴ、キランソウ、ニガナなどの草本が生育している。

Fig.13 薄暗い林床の細流脇に生育するシソバタツナミ。(西宮市・林床 2010.6/14)
アカマツ、ソヨゴ、タカノツメ、オオバヤシャブシによって日照が遮られる林下の細流脇に点在しており、いずれの個体も小型で、葉脈周辺は紫色を帯びている。
細流脇にはアリマイトスゲの群落が発達しており、そこにツルリンドウ、サルトリイバラ幼木、シハイスミレ、タチツボスミレ、フデリンドウ、アリマウマノスズクサ
などとともに見られた。

Fig.14 雑木林の林縁に生育するシソバタツナミ。(西宮市・雑木林の林縁 2013.5/31)
コナラ、クヌギ、ソヨゴなどからなる雑木林林縁部の、ネザサが刈り取られている場所にかたまって生育している。
同所的にナガバノタチツボスミレ、シハイスミレ、ツクバキンモンソウ、コチヂミザサ、タガネソウなどの草本のほか、アオツヅラフジ、スイカズラ、フジ、ミツバアケビ
などの籐本類の幼苗などが見られ、シソバタツナミソウの実生苗も多数発芽していた。
この場所は西宮市内でも最も北に生育しているもので、茎の毛がやや長く、葉裏に腺点がないなど、トウゴクシソバタツナミとの中間的な形質が見られる。


最終更新日:22nd.June.2013

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