トウゴクシソバタツナミ Scutellaria laeteviolacea  Koidz.
 var. abbreviata  (Hara) Murata
  里山・林縁・林床の植物 シソ科 タツナミソウ属
Fig.1 (兵庫県三田市・雑木林の林縁 2008.5/25)

Fig.2 (兵庫県三田市・林縁の疎水脇 2013.6/2)

里山の雑木林の林縁や林床に生育する多年草。兵庫県のものはシソバタツナミの変種と考えられる。
茎は直立し、4稜あり、高さ5〜20cm、長い開出毛が密生し、ときに上向きに曲がるものが混じる。
茎の節間はふつう短く、葉は茎の下部に集まる傾向があり、上にいくにしたがって小さくなり、1〜3cmの葉柄がある。
葉身は卵形〜長卵形、裏面脈上と表面にあらい毛が散生し、ビロード様の感触があり、表面には紫斑の現れるものが多い。
葉裏は紫色を帯びることが多く、ふつう腺点は見られない。
花穂は短いものが多いがときに長いものもあり、花冠は紫色。
花後は萼が大きくなり、分果は長径1.4〜1.6mm、表面に先の丸い円錐形の突起がある。

【メモ】 母種シソバタツナミS. laeteviolacea)は茎には曲がった短毛が密に生え、葉裏に腺点がある。草体は多少小さい。
     ときに、シソバタツナミとトウゴクシソバタツナミの中間的な集団が見られることがある。
     本州西部や九州には変種で大型となるツクシタツナミソウ(var. discolor)が分布し、葉は長卵形で長さ2〜4cm、花穂も長いという。
近縁種 : シソバタツナミタツナミソウコバノタツナミホクリクタツナミソウイガタツナミオカタツナミソウ、 ホナガタツナミソウ、
      ヤマジノタツナミソウヤマタツナミソウ
関連ブログ・ページ 『Satoyama, Plants & Nature』 タツナミソウの迷宮

■分布:本州
■生育環境:里山の林縁、落葉広葉樹林の林床など。
■花期:6月

Fig.2 茎。(兵庫県三田市・雑木林の林縁 2011.7/3)
  茎は直立し、4稜あり、開出するやや長い軟毛が生える。

Fig.3 葉。(林縁の疎水脇 2013.6/2)
  西日本では葉脈に沿って紫斑の入るものが多いようだ。触るとビロード状の感触がある。
  web上では東日本のものは白斑が入っているものが見られる。

Fig.4 葉表の拡大。(兵庫県三田市・雑木林の林縁 2011.7/3)
  葉表にはあらい毛が生え、腺点はない。

Fig.5 葉裏の拡大。(兵庫県三田市・雑木林の林縁 2011.7/3)
  葉裏は紫色を帯び、裏面脈上には開出毛が多く、ふつうシソバタツナミに見られるような腺点はない。
  脈間はあらい毛がまばらに生えていた。

Fig.6 紫斑の入らない個体もある。(兵庫県篠山市・社寺境内 2013.6/4)
  このような葉を持つものは葉裏が紫色とならないものが多い。

Fig.7 花序。(兵庫県三田市・林縁の疎水脇 2013.6/2)
  花序には比較的密に花がつく。花は紫色、基部から直角に立ち上がり、下唇中央には紫斑がある。
  花の色や形態によって他種との区別はほとんどできない。

Fig.8 生育のよいものはときに多数の花をつける。(兵庫県三田市・林縁の疎水脇 2013.6/2)

Fig.9 花の拡大。(兵庫県三田市・林縁の疎水脇 2013.6/2)

Fig.10 種子の落ちた後の花序。(兵庫県三田市・雑木林の林縁 2011.7/3)
  すでに種子が熟して落ちた後の花序。夏になるとこうした花序をよく見かける。

Fig.11 分果。(兵庫県篠山市・林縁 2011.7/3)
  分果は扁楕円形、長径(1.3〜)1.4〜1.6(〜1.7)mm、褐色、表面には円錐形で先の丸い突起が並ぶ。

生育環境と生態
Fig.12 山麓を流れる疎水の脇に生育するトウゴクシソバタツナミ。(兵庫県三田市・林縁の疎水脇 2013.6/2)
疎水の流れる雑木林の林縁部に多くのトウゴクシソバタツナミが生育していた。
同所的にヤブヘビイチゴ、クサイチゴ、アオイスミレ、ナガバノタチツボスミレ、ジャノヒゲ、ヤマクルマバナ、ニガナ、タガネソウ、タチドコロなどが見られた。
コナラの実生が数多く見られるが、疎水管理のため草刈りされ、裸地〜草地環境が維持される。

Fig.13 林縁の斜面に生育するトウゴクシソバタツナミ。(兵庫県三田市・林縁 2013.6/2)
斜面の下には用水路が流れ、その脇にはシライトソウ、シハイスミレ、シラヤマギク、イヌトウバナ、ヤブタビラコが見られ、斜面の裸地部に生育していた。

Fig.14 社寺境内の石垣に生育するトウゴクシソバタツナミ。(兵庫県篠山市・社寺境内 2013.6/4)
苔むした湿った境内の石垣にタチツボスミレ、ナガバノタチツボスミレ、フイリシハイスミレ、ヤマジノホトトギス、小型のヤマイタチシダなどと生育。


最終更新日:27th.June.2013

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