イヌチャセンシダ Asplenium tripteropus  Nakai
  山地・着生シダ 兵庫県RDB Cランク種 チャセンシダ科 チャセンシダ属
Fig.1 (兵庫県姫路市・林道脇の崖地 2014.5/8)

山地の岩上、まれに山麓や路傍の石垣などに着生する常緑性シダ。チャセンシダより稀。
根茎は小さな塊状で、葉を束生する。鱗片は披針形、鋭尖頭、中心が暗褐色で辺縁は淡色、長さ約3mm。
葉柄は紫褐色で光沢があり、葉身よりも短く、中軸とともに両縁と背軸中央は膜質の翼となる。
古い枯れた葉の葉柄は残り、ときに中軸も残っていることがある。
葉身は線状披針形でチャセンシダよりやや大きく、1回(単)羽状複葉、やや革質、表面は濃緑色。
羽片はややまばらに20対前後が中軸につき、ごく短い柄があり、斜卵形または扇状楕円形、鈍頭または円頭、基部は広いくさび形。
胞子嚢群(ソーラス)は羽片に4〜8個つき、広線形、苞膜は側方が開く。
中軸にしばしば無性芽を生じる。染色体数2n=72の2倍体、144の4倍体がある。

チャセンシダA. trichomanes)は中軸両縁計2枚の翼がつき、無性芽は稀。各地にふつうに見られる。
ヌリトラノオA. normale)は羽片の基部は切形で、すこし耳状に前方に出る。無性芽を盛んにつくる。
シモツケヌリトラノオ(A. boreale)は羽片は広楕円形で基部は切形、無性芽を作らず、葉は直立する傾向がある。
アイチャセンシダA. trichomanes × tripteropus)はチャセンシダとの雑種で、島根と九州に記録がある。
近縁種 : チャセンシダヌリトラノオシモツケヌリトラノオテンリュウヌリトラノオカミガモシダ
        ニセヌリトラノオシモダヌリトラノオアイヌリトラノオエンシュウヌリトラノオ

■分布:本州(秋田・神奈川県以西)、四国、九州 ・ 朝鮮半島、中国(揚子江以南)、台湾
■生育環境:山地の岩上、まれに山麓や路傍の石垣など。主に暖帯域。

Fig.3 全草標本。(兵庫県姫路市・林道脇の崖地 2014.5/8)
  根茎は小さく、葉を束生する。葉柄は短く、古い枯れたものは残る。葉は1回羽状複葉。
  葉はあまり立ち上がらず、着生した壁面などに沿って広がる傾向がある。

Fig.4 羽片と葉軸。(兵庫県姫路市・林道脇の崖地 2014.5/8)
  羽片は斜卵形または扇状楕円形、鈍頭または円頭、基部は広いくさび形で、ほとんど無柄。
  葉軸(中軸)の両側が膜質の翼となるのはチャセンシダと同様である。

Fig.5 葉の裏面。(兵庫県姫路市・林道脇の崖地 2014.5/8)
  葉軸(中軸)背面中央には翼がつく。
  胞子嚢群(ソーラス)はふつう羽片に4〜8個つき、広線形、苞膜は側方が開く。

Fig.6 葉軸背面の拡大。(兵庫県姫路市・林道脇の崖地 2014.5/8)
  膜質の翼が見える。

Fig.7 葉先近くの葉軸に生じた無性芽。(兵庫県姫路市・林道脇の崖地 2014.5/8)

生育環境と生態
Fig.8 林道脇の湿った崖地に群生するイヌチャセンシダ。(兵庫県姫路市・林道脇の崖地 2014.5/8)
蘚苔類が覆うかなり湿度の高い崖に密生しているもので、無性芽によって広がったことが想像される。


最終更新日:23rd.Jun.2014

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