ニセヌリトラノオ | A. boreale × A. oligophlebium | ||
山地・岩上・着生シダ・雑種 | チャセンシダ科 チャセンシダ属 |
Fig.1 (兵庫県丹波市・岩壁 2013.4/11) シモツケヌリトラノオ(A. boreale)と カミガモシダ(A. oligophlebium)の推定種間雑種で、常緑性。 成熟した草体は両親種よりも大きくなり、長さ30〜50cmに達する。 葉身は長い披針形、1回(単)羽状腹葉、中軸に無性芽はつかず、先端まで正常に伸びる。 羽片は多数、開出し、互いにやや接近してつき、3角状長楕円形、紙質、やや光沢があり、シモツケヌリトラノオよりも柔らかい。 羽片基部の前側は耳状に出て、無柄、縁にはあらい鋸歯がある。 胞子嚢群(ソーラス)は線形〜長楕円形、苞膜はやや三日月形の長楕円形、中脈と縁の間に並ぶ。 シモツケヌリトラノオ(A. boreale)は羽片が長楕円形で、基部前側はほとんど耳状とならない。 ヌリトラノオ(A. normale)は羽片の形が似るが、葉身の先端近くの中軸に盛んに無性芽をつくり、葉身はその先から正常に伸びないことが多い。 テンリュウヌリトラノオ(A. shimurae)は無性芽をつけてもその先に伸び、数個の無性芽をつけ、静岡、紀伊半島、四国、宮崎に分布。 シモダヌリトラノオ(A. normale × A. boreale) はシモツケヌリトラノオとヌリトラノオとの雑種でほとんど無性芽をつけない。 アイヌリトラノオ(A. normale × A. oligophlebium)はヌリトラノオとカミガモシダとの種間雑種で、両種の中間的な羽片を持ち、無性芽を生じ、ソーラスは不完全。 近縁種 : シモツケヌリトラノオ、 カミガモシダ、 ヌリトラノオ、 テンリュウヌリトラノオ、 チャセンシダ、 イヌチャセンシダ、 シモダヌリトラノオ、 アイヌリトラノオ、 ニセヌリトラノオ、 エンシュウヌリトラノオ ■分布:本州(関東以西)、四国、九州(熊本県) ・ 中国南西部、ヒマラヤ ■生育環境:低山〜山地の半日陰〜日陰の岩上や岩壁で、シモツケヌリトラノオとカミガモシダの混生地。 |
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↑Fig.2 全草標本。(兵庫県丹波市・岩壁 2013.4/11) 雑種強勢で、成熟した個体は両親種よりも大きくなり、30〜50cmに達する。 葉質は紙質で、やや光沢があり、シモツケヌリトラノオよりも柔らかい。 |
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↑Fig.3 羽片。(兵庫県丹波市・岩壁 2013.4/11) 羽片はやや混み合ってつき、3角状長楕円形、あらく低い鋸歯があり、円頭。 羽片基部の前側は耳状に出て、シモツケヌリトラノオよりもヌリトラノオの羽片の形に似る。 |
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↑Fig.4 羽片裏面。(兵庫県丹波市・岩壁 2013.4/11) 胞子嚢群(ソーラス)は線形〜長楕円形、中脈と縁の間に並ぶ。 ソーラスは正常ではないように見えるが、時期的なものか・・・ |
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↑Fig.5 葉先。(兵庫県丹波市・岩壁 2013.4/11) シモツケヌリトラノオと同様、羽片は序々に小さくなる。 |
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↑Fig.6 両親種との羽片比較。(兵庫県丹波市・岩壁 2013.4/11) 左からシモツケヌリトラノオ、ニセヌリトラノオ、カミガモシダ。 ニセヌリトラノオは、シモツケヌリトラノオと比べると、羽片は3角状長楕円形となり、基部の前側は耳状に出ており、ヌリトラノオに似ている。 これに対してシモツケヌリトラノオは羽片が長楕円形となり、基部の前側はほとんど耳状とならない。 |
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↑Fig.7 両親種との葉の大きさの比較。(兵庫県丹波市・岩壁 2013.4/11) 左からシモツケヌリトラノオ、ニセヌリトラノオ、カミガモシダ。 雑種強勢で、両親種よりも大きく育つものが多く、葉の長さは2倍近くにも及ぶものも多い。 |
生育環境と生態 |
Fig.8 日陰の岩壁に群生するニセヌリトラノオ。(兵庫県丹波市・岩壁 2013.4/11) 照葉樹の大木とヒノキの植林地下にある日陰の岩壁で群生していた。 同じ条件の岩壁にはカミガモシダ、シシラン、トウゴクシダ、ベニシダ、セッコクの若い個体、ショウジョウバカマ、ツルアリドオシ、ウスノキが生育し、 片親のシモツケヌリトラノオはほとんど見られなかった。 シモツケヌリトラノオは同じ岩壁の日当たりよい、乾いた場所に点在している。 |
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Fig.9 植林地下の日陰の乾いた尾根筋に地上生するニセヌリトラノオ。(兵庫県丹波市・岩壁 2013.4/11) 葉は直立〜斜上し、大きくなるため、まるでタマシダのように見えた。 この場所は乾いているためか、同所的にヒトツバが生育していた。 |
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Fig.10 尾根筋の岩壁北面に混生するニセヌリトラノオ。(兵庫県丹波市・岩壁 2013.4/11) 画像中の中央右寄りのものがニセヌリトラノオで、他のものはシモツケヌリトラノオ。 このような半日陰地ではシモツケヌリトラノオも若干節間が長くなり、ニセヌリトラノオの小型のものと区別が難しくなる。 この岩壁では画像中のカミガモシダ、シシランのほか、シノブカグマ、サイゴクベニシダ、トウゴクシダ、稀少種のアツギノヌカイタチシダマガイや、 ヌカイタチシダマガイが生育していた。 |