シモダヌリトラノオ(?) Asplenium normale
   × A. boreale
  山地・岩上・着生シダ・雑種 チャセンシダ科 チャセンシダ属
Fig.1 (兵庫県篠山市・岩壁 2013.4/25)

ヌリトラノオ(A. normale)と シモツケヌリトラノオ(A. boreale)の推定種間雑種で、常緑性。
成熟した草体は両親種よりも大きくなり、長さ30〜50cmに達する。
葉身は長い披針形、1回(単)羽状腹葉、中軸に無性芽のつく頻度は低く、葉先は先端まで正常に伸びる。
羽片は多数、開出し、互いにやや接近してつき、長楕円形、紙質、やや光沢がある。
羽片基部の前側はやや耳状に出て、無柄、縁にはあらい鋸歯があり、円頭で、ヌリトラノオの羽片とほぼ同形。
胞子嚢群(ソーラス)は線形〜長楕円形、苞膜はやや三日月形の長楕円形、中脈と縁の間に並び、胞子は不稔。
*この個体は胞子嚢が弾けており、胞子形成期に周辺の同様な個体の胞子を調べる必要がある。
 両種の混生地にあり、しかも大型であるため、状況的にシモダヌリトラノオと考えられるが、一応(?)をつけて掲載した。


シモツケヌリトラノオ(A. boreale)は羽片が長楕円形で、基部前側はほとんど耳状とならない。
ヌリトラノオ(A. normale)は葉身の先端近くの中軸に盛んに無性芽をつくり、葉身はその先から正常に伸びないことが多い。
テンリュウヌリトラノオ(A. shimurae)は無性芽をつけてもその先に伸び、数個の無性芽をつけ、静岡、紀伊半島、四国、宮崎に分布。
ニセヌリトラノオ(A. normale × A. oligophlebium) はシモツケヌリトラノオとカミガモシダとの雑種で、羽片は三角状長楕円形で
前側基部が耳状に出て、無性芽をつけない。
アイヌリトラノオ(A. normale × A. oligophlebium)はヌリトラノオとカミガモシダとの種間雑種で、両種の中間的な羽片を持ち、無性芽を生じ、ソーラスは不完全。
近縁種 : ヌリトラノオシモツケヌリトラノオテンリュウヌリトラノオカミガモシダチャセンシダイヌチャセンシダ
        ニセヌリトラノオアイヌリトラノオシモダヌリトラノオエンシュウヌリトラノオ

■分布:本州(関東以西)、四国、九州
■生育環境:低山〜山地の半日陰〜日陰の岩上や岩壁で、ヌリトラノオとシモツケヌリトラノオの混生地。

Fig.2 全草標本。(兵庫県篠山市・岩壁 2013.4/25)
  雑種強勢で、成熟した個体は両親種よりも大きくなり、30〜50cmに達し、葉質は紙質で、やや光沢がある。

Fig.3 羽片。(兵庫県篠山市・岩壁 2013.4/25)
  羽片は互いにやや接近してつき、長楕円形、あらく低い鋸歯があり、円頭。
  羽片基部の前側はやや前に出て、ヌリトラノオの羽片の形とほぼ同形。

Fig.4 ソーラス。(兵庫県篠山市・岩壁 2013.4/25)
  胞子嚢群(ソーラス)は線形〜長楕円形、中脈と縁の間に並ぶ。
  胞子は不稔であるはずだが、胞子嚢は弾けており、胞子形成期に再訪して周辺の同様な個体の胞子を調べる必要がある。

Fig.5 葉先。(兵庫県篠山市・岩壁 2013.4/25)
  シモツケヌリトラノオと同様、羽片は序々に小さくなり、ほとんど無性芽をつけないが、1枚だけごく小さな無性芽を生じていた。
  無性芽がついているが、葉先は先端まで素直に伸びている。

生育環境と生態
Fig.6 日陰の岩壁の割れ目に生育するシモダヌリトラノオ。(兵庫県篠山市・岩壁 2013.4/25)
周辺は落葉広葉樹林の南向き急斜面で、シモダヌリトラノオは斜面途中の小岩壁の割れ目に生育している。
すぐそばに大きな垂直壁があり、上部にはシモツケヌリトラノオが生育し、中部以下ではヌリトラノオと、手の届かない場所にもシモダヌリトラノオらしきものが見られる。


最終更新日:6th.May.2013

<<<戻る TOPページ