カミガモシダ | Asplenium oligophledium Bak. | ||
山地・岩上の植物 | チャセンシダ科 チャセンシダ属 |
Fig.1 (兵庫県丹波市・渓流畔の岩壁 2008.4/3) |
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Fig.2 (兵庫県丹波市・樹林下の岩上 2014.1/28) 岩上や林内に群生する常緑のシダ。 根茎は短く、斜上し、枯れた葉柄が残存する。葉は数個束生する。 ヌリトラノオに似るが、葉は濃緑色で、薄い草質、長さ20cm前後、羽片は長楕円形で、中〜深裂し、羽片の基部は前方に耳状に出る。 胞子嚢群は耳状の裂片の中に入り込むこともある。 【メモ】 兵庫県では古〜中生層のチャートを基岩とする山域に比較的普通に見られ、花崗岩などの風化しやすい基岩上には見られない。 ヌリトラノオ(A. normale)は羽片が3角状長楕円形で、基部前側はやや耳状に出て、あらく浅い鋸歯があり円頭。 テンリュウヌリトラノオ(A. shimurae)は葉身に無性芽をつけてもその先が伸び、数個の無性芽をつける。静岡、紀伊半島、四国、宮崎に分布。 シモツケヌリトラノオ(A. boreale)は乾いた岩壁に生育し、無性芽を作らず、葉は直立する傾向があり、羽片は長楕円形。 カミガモシダを片親とした推定種間雑種に以下のものがある。 アイヌリトラノオ(A. normale × A. oligophlebium)はヌリトラノオとの雑種で、両種の中間的な羽片を持ち、無性芽を生じ、ソーラスは不完全。 ニセヌリトラノオ(A. boreale × A. oligophlebium) はシモツケヌリトラノオとの雑種で無性芽をつけず、羽片は3角状長楕円形となり、基部の前側は耳状に出る。 近縁種 : ヌリトラノオ、 シモツケヌリトラノオ、 テンリュウヌリトラノオ、 チャセンシダ、 イヌチャセンシダ、 アイヌリトラノオ、 ニセヌリトラノオ、 シモダヌリトラノオ、 エンシュウヌリトラノオ ■分布:本州(愛知以西)、四国、九州、沖縄 ■生育環境:湿度の高い岩上や林床など。 |
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↑Fig.3 全草標本。(兵庫県丹波市・岩壁 2011.2/8) 根茎は短い。葉は束生し、葉柄はやや短い。古い葉柄または葉軸が残存する。 |
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↑Fig.4 葉。(兵庫県丹波市・岩壁 2011.2/8) 葉柄と中軸は細く硬いが、ややもろく、紫褐色、葉柄基部には少数の鱗片がつき、葉柄や中軸には糸状の褐色の鱗片がごくまばらにつく。 葉はヌリトラノオに似るが、色は緑色がより濃く、羽片は狭く、基部はより耳状に前方に張り出し、繊細に見える。 またヌリトラノオのような無性芽の形成は見ていない。 |
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↑Fig.5 葉柄基部の鱗片。(兵庫県丹波市・岩壁 2011.2/8) 披針形で長さ約1.5mm、紫褐色で縁は褐色。 |
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↑Fig.6 カミガモシダの羽片。(兵庫県丹波市・岩壁 2011.2/8) 羽片は長3角状、鈍頭。基部は耳状に前方に張り出し、縁には鈍い鋸歯が並ぶが、ときに鋭鋸歯となるものがある。 |
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↑Fig.7 羽片の裏面。(兵庫県丹波市・岩壁 2011.2/8) 胞子嚢群は長楕円形で小さく、耳状にでた裂片の中にも生じる。 |
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↑Fig.8 胞子嚢群。(兵庫県丹波市・岩壁 2011.2/8) 苞膜は淡黄白色、全縁、無毛。 |
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↑Fig.9 種間雑種ニセヌリトラノオとの羽片の比較。(兵庫県丹波市・岩壁 2013.4/11) 左からシモツケヌリトラノオ、ニセヌリトラノオ、カミガモシダ。 ニセヌリトラノオの羽片は両親種の中間的な形、ヌリトラノオに似た形となる。 ニセヌリトラノオは雑種強勢で、成熟個体の葉は30〜50cmと大型化する。 |
生育環境と生態 |
Fig.10 スギの古木の根際近くの樹幹に着生したカミガモシダ。(兵庫県丹波市・樹幹 2011.2/8) スギの古木の根際の樹皮が崩れて蓄積した場所に生育が見られた。 カミガモシダはヌリトラノオとともに見られる場所が多いが、ヌリトラノオよりも多少表土があるような場所を好む傾向がある。 |
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Fig.11 チャート岩塊上の着生シダ群落。(兵庫県丹波市・岩上 2011.2/8) チャートと基岩とする山塊の支脈の端の岩塊に着生シダ類が顕著な群落を形成していた。 上部の乾燥した場所ではヒトツバやマメヅタが見られ、樹木が張り付いた日陰となる場所ではカミガモシダ、シシラン、ヌリトラノオ、 下部の湿った部分にはウチワゴケ、コウヤコケシノブ、マメヅタが見られる。 カミガモシダは岩上の樹木の細根が絡み合った場所に、小型な個体が群生している。 |
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Fig.12 シシラン、ニセヌリトラノオとともに生育するカミガモシダ。(兵庫県丹波市・岩壁 2013.4/11) この岩壁では日当たりよい乾いた場所ではシモツケヌリトラノオが多産し、日陰ではカミガモシダが多産する。 両種の雑種であるニセヌリトラノオは日陰を好むようで、カミガモシダとともに生育していた。 |