チャセンシダ | Asplenium trichomanes L. | ||
里山・着生シダ | チャセンシダ科 チャセンシダ属 |
Fig.1 (西宮市・村落の石垣 2012.12/17) |
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Fig.2 (兵庫県篠山市・社寺の石垣 2011.2/10) 山地の岩上、里山の石垣などに着生する常緑性シダ。 根茎は小さな塊状で、葉を束生する。 葉柄は紫褐色で光沢があり、葉身よりも短く、中軸とともに両縁は膜質の翼となる。 古い枯れた葉の葉柄は残り、ときに中軸も残っていることがある。 葉身は線状披針形で長さ15〜25cm、1回(単)羽状複葉、やや革質、表面は濃緑色。 羽片はややまばらに20対前後が中軸につき、ごく短い柄があり、斜卵形または扇状楕円形、鈍頭または円頭、 基部は広いくさび形で、基部が切形となるヌリトラノオと区別される。 胞子嚢群(ソーラス)は羽片に6〜8個つき、支脈の大部分に伸び、広線形、苞膜は側方が開く。 稀に葉先付近に無性芽を生じることがある。 【メモ】 チャセンシダは深山というよりも多少人くさい場所に現れることが多い。 過去に西宮市内に記録はなかったが、北部の里山の石垣にまとまった集団を発見した。 イヌチャセンシダ(A. tripteropus)は中軸裏面にも翼がつき、計3枚の翼がつき、しばしば無性芽をつくる。チャセンシダより少ない。 ヌリトラノオ(A. normale)は羽片の基部は切形で、すこし耳状に前方に出る。無性芽を盛んにつくる。 シモツケヌリトラノオ(A. boreale)は羽片は広楕円形で基部は切形、無性芽を作らず、葉は直立する傾向がある。 近縁種 : ヌリトラノオ、 イヌチャセンシダ、 シモツケヌリトラノオ、 テンリュウヌリトラノオ、 カミガモシダ、 ニセヌリトラノオ、 アイヌリトラノオ、 シモダヌリトラノオ、 エンシュウヌリトラノオ ■分布:本州(宮城県以南)、四国、九州 ・ 北半球の温帯、ニュージーランド ■生育環境:平地から山地の樹幹、岩上、石垣など。温〜暖帯域。 |
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↑Fig.3 全草標本。(兵庫県篠山市・社寺の石垣 2011.2/10) 根茎は小さく、葉を束生する。葉柄は短く、古い枯れたものは残る。葉は1回羽状複葉。 |
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↑Fig.4 羽片と葉軸。(兵庫県篠山市・社寺の石垣 2011.2/10) 羽片は斜卵形または扇状楕円形、鈍頭または円頭、基部は広いくさび形で、ごく短い柄がある。 葉軸(中軸)の両側には膜質の翼となる。 |
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↑Fig.5 羽片の裏面。(兵庫県篠山市・社寺の石垣 2011.2/10) 胞子嚢群(ソーラス)は羽片に6〜8個つき、支脈の大部分に伸び、広線形、苞膜は側方が開く。 |
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↑Fig.6 葉軸の拡大。(兵庫県篠山市・社寺の石垣 2011.2/10) 膜質の翼が見える。 |
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↑Fig.7 フィドルヘッド。(兵庫県丹波市・社寺の岩壁 2011.4/29) 出芽当初は葉軸と葉柄は斜上する。 |
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↑Fig.8 新葉を展開した個体。(兵庫県篠山市・社寺の石垣 2014.5/27) 新葉は基物壁面を沿わずに、水平方向に伸びている。 これに対し、イヌチャセンシダは出芽当初はフィドルヘッドが斜上するが、伸びると基物壁面に沿うようになる。 |
生育環境と生態 |
Fig.9 社寺のやや湿った石垣に生育するチャセンシダ。(兵庫県篠山市・社寺の石垣 2009.4/3) 地衣類や蘚苔類の多く張り付いた社寺の石垣に多くの個体が生育していた。 石垣にはトキワイカリソウ、タチツボスミレ、ミヤマカタバミ、ハカタシダ、イヌシダなどが生育している。 |
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Fig.10 里山の人家の石垣に生育するチャセンシダ。(西宮市・里山人家の石垣 2011.4/18) 市内北部の里山の人家の向陽〜半日陰となるコケむした石垣の隙間に多数のチャセンシダが生育していた。 石垣の隙間にはススキ、オニタビラコ、ホトケノザ、ヨツバムグラ、ヤブソテツ、ノキシノブなどが生育していた。 |