サイゴクイノデ | Polystichum pseud-makinoi Tagawa |
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低山・山地・林床のシダ | オシダ科 イノデ属 |
Fig.1 (神戸市・落葉広葉樹林 2012.4/2) |
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Fig.2 (兵庫県篠山市・植林地林床 2013.5/9) 丘陵〜山地の林床に比較的普通に見られる常緑性シダ。 根茎は短く、直立〜斜上し、鱗片をつける。葉柄は長さ20〜40cm、密に鱗片をつける。 葉柄基部の鱗片は卵状披針形〜披針形、長さ6〜8mm、幅3mm以下、黒褐色のものが混じり、光沢がなく、辺縁の褐色部分の幅はやや広い。 葉身は2回羽状複生し、長楕円状披針形で鋭頭、長さ40〜60cm、幅15〜25cm。葉質は硬い草質、表面は黄色を帯びた淡緑色、光沢はない。 中軸の鱗片は披針形〜線形、褐色〜淡褐色、長さ約4mm、幅約1mm、辺縁にまばらに突起がある。 小羽片は長楕円形、鈍頭〜円頭、先端は刺に終わり、辺縁は浅く切れ込み、裏面には微小な鱗片がある。 ソーラスは小羽片の辺縁寄りにつき、小羽片の基部前側の耳片からつきはじめ、葉身下部中央から外に向けて順につく。包膜は全縁。 染色体数はn=82の4倍体。 葉面に光沢を持たないイノデ属のものに以下のものがある。 サカゲイノデ(P. retoroso-paleaceum) 夏緑性。基部鱗片は褐色。中軸の鱗片は広卵形で、下向きに圧着してつく。ソーラスは中間生。 ツヤナシイノデ(P. ovato-paleaceum) 夏緑性。基部鱗片は淡褐色、長卵形。中軸の鱗片は圧着せず、ソーラスは中間〜辺縁寄りで、小羽片の前側からつく。 トヨグチイノデ(P. ohmurae) 夏緑性。葉身は15〜23cmと小型。関東地方西部から中部地方の低山地に稀。 また、サイゴクイノデと近縁種による推定種間雑種に以下のものがある。 ミツイシイノデ(P. × namegatae) カタイノデとの雑種。 ヒトヨシイノデ(P. × hitoyoshiense) ナンピイノデとの雑種。九州。 キヨズミイノデ(P. × kiyozumianum) イノデモドキとの雑種。 スオウイノデ(P. × kuratae) イノデとの雑種。 ハコネイノデ(P. × hakonense) アイアスカイノデとの雑種。 ジタロウイノデ(P. × jitaroi) アスカイノデとの雑種。 ハリマイノデ(P. × utsumii) サカゲイノデとの雑種。 オンガタイノデ(P. × ongataense) ツヤナシイノデとの雑種。 以上の雑種のうち、キヨズミイノデ、ミツイシイノデ、ハリマイノデ、オンガタイノデの4種が兵庫県で記録されている。 近縁種 : イノデ、 サカゲイノデ、 ツヤナシイノデ、 アイアスカイノデ、 イノデモドキ、 ネッコイノデ、 チャボイノデ、 カタイノデ、 ハリマイノデ(雑種)、 ハコネイノデ(雑種)、 フナコシイノデ(雑種)、 ナメライノデ(雑種) ■分布:本州(関東地方、能登半島以西)、四国、九州 ・ 中国 ■生育環境:丘陵〜山地の林床。 |
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↑Fig.3 地上部標本。(兵庫県篠山市・林縁斜面 2013.2/25) 葉身は2回羽状複生し、長楕円状披針形で鋭頭。葉質は硬い草質、表面は黄色を帯びた淡緑色、光沢はない。 葉先や羽片の先はふつう急に狭くなる。 |
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↑Fig.4 葉柄基部の鱗片。(兵庫県篠山市・林縁斜面 2013.2/25) 淡褐色のものと、黒褐色のものが混じり、光沢がなく、辺縁の褐色部分の幅はやや広い。 |
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↑Fig.5 中軸裏面の鱗片。(兵庫県篠山市・林縁斜面 2013.2/25) 中軸の鱗片は披針形〜線形、褐色〜淡褐色、辺縁にまばらに突起がある。 |
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↑Fig.6 小羽片。(兵庫県篠山市・林縁斜面 2013.2/25) 小羽片は長楕円形、鈍頭〜円頭、先端は刺に終わり、辺縁は浅く切れ込む。 |
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↑Fig.7 裏面。(兵庫県篠山市・林縁斜面 2013.2/25) ソーラスは小羽片の辺縁寄りにつき、小羽片の基部前側の耳片からつきはじめ、葉身下部中央から外に向けて順につく。 |
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↑Fig.8 萌芽しはじめたサイゴクイノデ。(神戸市・落葉広葉樹林 2013.3/22) 中央部が黒褐色の鱗片がよく目立つ。 |
生育環境と生態 |
Fig.9 林縁斜面に生育するサイゴクイノデ。(兵庫県篠山市・林縁斜面 2013.2/25) 溜池に面した林道に沿った多湿で急な林縁斜面に、多数のサイゴクイノデが生育していた。 斜面にはまばらにネザサが生え、フユイチゴ、ヤマヤブソテツ、ジュウモンジシダ、ヤマイタチシダ、オオバノイノモトソウなどが見られた。 |
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Fig.10 落葉広葉樹林の斜面に生育するサイゴクイノデ。(神戸市・落葉広葉樹林 2012.4/2) 落葉広葉樹林中の破砕した緑色岩の斜面下部にヤブランとフッキソウ群落が形成されており、その間に点在している。 同所的にアオキ、マンリョウなどの小低木、ジャノヒゲ、セントウソウ、ユキワリイチゲ、ムラサキケマン、ナガバノタチツボスミレ、ヤマネコノメソウ、 ダイコンソウ、チヂミザサ、オモトなどの草本類、オクマワラビ、ベニシダ、トウゴクシダ、リョウメンシダなどのシダ類が生育している。 |