イノデモドキ | Polystichum tagawanum Sa.Kurata | ||
低山・林床の植物 | オシダ科 イノデ属 |
Fig.1 (兵庫県篠山市・植林地の林床 2014.7/22) 丘陵〜低山の林床に生育する中型の常緑性シダ。 根茎は短く、直立〜斜上し、塊状となり、鱗片をつける。葉柄は葉身より短く、長さ10〜20cm、密に鱗片がある。 葉柄基部の鱗片は卵状披針形〜披針形、淡褐色、光沢はなく、草質、辺縁にはいちじるしく不斉な突起があり、ごく稀に黒味を帯びる。 葉身は狭披針形〜披針形、先は細くなって尾状に伸びる。羽片は線状で、鋭尖頭。 中軸や羽軸の鱗片は線状披針形〜線形、辺縁には不斉な突起が多数あり、淡褐色。 小羽片は鈍頭〜鋭頭、丸みを帯び、先端は刺状。葉質はやや厚味のある草質、表面はやや光沢があり、淡緑色〜緑色。 ソーラスは小羽片の辺縁寄りにつき、小羽片の基部前側の耳片の上から優先してつく。 包膜はほぼ全縁か、不規則な短い突起がある。染色体数はn=82で4倍。 品種のネッコイノデ(f. atrosquamatum)は葉柄基部から中軸下部にかけて黒褐色の鱗片が混じる。 イノデ(P. polyblepharum)は葉柄基部の鱗片は大きな卵形で、褐色、縁に毛状突起がある。ソーラスは中間〜やや辺縁寄りにつく。 カタイノデ(P. makinoi)は葉柄基部の鱗片は硬質、披針形で、黒褐色のものが混ざる。ソーラスは中間生。 アイアスカイノデ(P. longifrons)は葉柄基部の鱗片は狭披針形で、黒褐色のものが混ざり、ほぼ全縁。ソーラスは辺縁寄りにつく。 アスカイノデ(P. fibrilloso-paleaceum)は葉柄基部の鱗片は狭披針形で、全縁。中軸の鱗片は線形、全縁で、ねじれる。ソーラスは中間生。 チャボイノデ(P. igaense)はイノデモドキに似るが小型。葉は地表につくように低く開出。鱗片は全て褐色で乾くとねじれる。ソーラスは辺縁寄り。 イノデモドキを片親とする推定種間雑種に以下のものがある。 アマギイノデ(P. × mashikoi) イノデとの雑種。 ハタジュクイノデ(P. × hatajukuense) アイアスカイノデとの雑種。 カタイノデモドキ(P. × izuense) カタイノデとの雑種。 ヨコハマイノデ(P. × yokohamaense) アスカイノデとの雑種。 キヨズミイノデ(P. × kiyozumianum) サイゴクイノデとの雑種。 ナメライノデ(P. × okanum) サカゲイノデとの雑種。 ツヤナシイノデモドキ(P. × pseudo-ovato-paleaceum) ツヤナシイノデとの雑種。 以上の雑種のうち、カタイノデモドキ、キヨズミイノデ、ナメライノデ、ツヤナシイノデモドキの4種が兵庫県で記録されている。 近縁種 : ネッコイノデ、 イノデ、 アイアスカイノデ、 チャボイノデ、 カタイノデ、 サイゴクイノデ、 サカゲイノデ、 ツヤナシイノデ、 ハコネイノデ(雑種)、 ハリマイノデ(雑種)、 フナコシイノデ(雑種)、 ナメライノデ(雑種) ■分布:本州、九州 ■生育環境:低山の林床など。 |
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↑Fig.2 地上部標本。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2014.7/22) 葉柄は短い。葉身は狭披針形〜披針形、先は細くなって尾状に伸びる。 葉質はやや厚味のある草質、表面はやや光沢があり、淡緑色〜緑色。 |
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↑Fig.3 葉柄基部の鱗片。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2014.7/22) 葉柄基部の鱗片は卵状披針形〜披針形、淡褐色。 |
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↑Fig.4 基部鱗片の拡大。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2014.7/22) 鱗片は草質、辺縁にはいちじるしく不斉な突起がある。 |
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↑Fig.5 中軸下部裏面の鱗片。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2014.7/22) 中軸の下部鱗片は披針形〜狭披針形、辺縁には不斉な突起が多数あり、淡褐色。 |
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↑Fig.6 中軸中部裏面の鱗片拡大。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2014.7/22) 中軸中部の鱗片は線状披針形〜線形、やはり辺縁には不斉な突起が多数ある。 |
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↑Fig.7 葉先は長く尾状に伸びる。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2014.7/22) |
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↑Fig.8 羽片と小羽片。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2014.7/22) 羽片は線状で、鋭尖頭。小羽片は鈍頭〜鋭頭、最下の一対を除いて幅に対して長さは短く、丸みを帯び、先端は刺状。 ソーラスのつく場所は膨出する。 |
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↑Fig.9 羽片裏面。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2014.7/22) ソーラスは小羽片の辺縁寄りにつき、小羽片の基部前側の耳片の上から優先してつく。 |
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↑Fig.10 ソーラス。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2014.7/22) 包膜はほぼ全縁か、不規則な短い突起がある。 |
生育環境と生態 |
Fig.11 植林地の林床に生育するイノデモドキ。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2014.7/25) 植林地林床の渓流沿いのやや湿った場所にイノデモドキが点在していた。 同所的にリョウメンシダ、オオバノハチジョウシダ、イノデ、サイゴクイノデ、ベニシダ、ヤブソテツ、イワガネソウ、ヌリワラビ、シケチシダ、 ミドリヒメワラビ、イワヒメワラビ、シケシダ、コバノイシカグマ、などのシダ類、サンショウソウ、ミズタビラコ、ミヤマカタバミ、ナガバハエドクソウ、 マツカゼソウ、サワハコベ、ナガバジャノヒゲなどが生育している。 |
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Fig.12 寺院参道脇に生育するイノデモドキ。(兵庫県篠山市・参道の石垣 2014.7/25) 寺院参道脇の古い石垣や斜面にイノデモドキが点在していた。 同所的にイノデ、サイゴクイノデ、ヤマイタチシダ、ベニシダ、オオバノイノモトソウ、ゲジゲジシダ、ミゾシダなどのシダ類、ナキリスゲ、ヒカゲスゲ、 シャガ、ジャノヒゲ、シシウドなどが生育している。 |
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Fig.13 山腹の斜面に生育するイノデモドキ。(西宮市・山腹 2014.7/29) 転石の多い湿った山腹斜面にイノデモドキが点在していた。 同所的にイノデ、ベニシダ、トウゴクシダ、オクマワラビ、リョウメンシダ、ジュウモンジシダ、イワガネソウ、イヌガンソク、ヤマイヌワラビ、 アリマイトスゲ、チヂミザサ、ミズヒキ、ナガバモミジイチゴ、イボタノキなどが生育している。 |