ハリマイノデ Polystichum × utsumii (Sa.Kurata) Sa.Kurata
  低山・山地・林床のシダ(雑種) オシダ科 イノデ属
Fig.1 (兵庫県篠山市・植林地の林床 2013.6/17)

サイゴクイノデとサカゲイノデの推定種間雑種。県内では常緑。
葉の色や形はサイゴクイノデに似て淡緑色、やや硬い草質。
葉柄基部の鱗片は卵状披針形、黒褐色のものが混じり、わずかに光沢があり、辺縁の褐色部分の幅はやや広く、辺縁にまばらに毛状突起があり、捩れる。
中軸中部の鱗片は披針形〜狭披針形、淡褐色、辺縁に毛状突起があり、圧着気味に下向きにつく。
ソーラスは小羽片の辺縁寄りにつき、小羽片の基部前側の耳片からつきはじめる。包膜は全縁。

サカゲイノデP. retoroso-paleaceum) 夏緑性。基部鱗片は褐色。中軸の鱗片は広卵形で、下向きに圧着してつく。ソーラスは中間生。
サイゴクイノデP. pseud-makinoi) 常緑性。基部鱗片には黒褐色のものが混じり、中軸中部の鱗片は圧着せず、横向きにつく。ソーラスは辺縁寄りにつく。
ツヤナシイノデP. ovato-paleaceum) 夏緑性。基部鱗片は淡褐色、長卵形。中軸の鱗片は圧着せず、ソーラスは中間〜辺縁寄りで、小羽片の前側からつく。
オンガタイノデP. × ongataense) ツヤナシイノデとサイゴクイノデの雑種。基部鱗片には濃褐色の縞の入った広卵形の鱗片があり、
中軸鱗片は下向きにはならず、ソーラスはやや辺縁寄りにつく。本州、四国、九州。
アイツヤナシイノデP. × amboversum) サカゲイノデとツヤナシイノデとの雑種。中軸鱗片は下向きとなり、小羽片はサカゲイノデの影響を受け小さくなり、
ソーラスは中間生。本州、四国。
近縁種 :  サイゴクイノデサカゲイノデツヤナシイノデアイアスカイノデイノデイノデモドキネッコイノデ、 チャボイノデ、 カタイノデ、
フナコシイノデ(雑種)ハコネイノデ(雑種)ナメライノデ(雑種)

■分布:本州(中部以西)、四国
■生育環境:丘陵〜山地の林床。

Fig.2 地上部標本。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2013.6/17)
  葉身はサイゴクイノデに似ており、葉質は硬い草質、表面は淡緑色、光沢はなく、葉先は急に狭くなる。

Fig.3 葉柄基部の鱗片。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2013.6/17)
  卵状披針形で、淡褐色のものと、黒褐色のものが混じり、わずかに光沢があり、辺縁の褐色部分の幅はやや広い。

Fig.4 基部鱗片の拡大。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2013.6/17)
  辺縁にはまばらに毛状突起がある。

Fig.5 中軸中部裏面の鱗片。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2013.6/17)
  披針形〜狭披針形、淡褐色、辺縁に毛状突起があり、圧着気味に下向きにつく。

Fig.6 羽片と小羽片。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2013.6/17)
  小羽片には浅い切れ込みがあり、サカゲイノデの影響を感じさせる。

Fig.7 羽片裏面。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2013.6/17)
  ソーラスは小羽片の辺縁寄りにつき、小羽片の基部前側の耳片からつきはじめる。

Fig.8 ソーラス。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2013.6/17)
  包膜は全縁。

生育環境と生態
Fig.9 植林地と竹林の境界周辺で生育するハリマイノデ。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2013.6/17)
植林地と竹林、社寺林が接する植林地の湿った林床に20個体前後のハリマイノデが生育していた。
シダ類の豊富な場所で、ベニシダ、オオベニシダ、オクマワラビ、オオクジャクシダ、ヤマイタチシダ、イワガネゼンマイ、イノデ、ミゾシダ、
ヒロハイヌワラビ、ハリガネワラビ、シケシダ、シケチシダ、オオハナワラビ、モトマチハナワラビなどとともに両親種も生育している。
同所的にムロウテンナンショウ、ヤブラン、ジャノヒゲ、ミヤマナルコユリ、ホウチャクソウ、ウバユリ、シャガ、ナキリスゲ、ニシノホンモンジスゲ、
ミヤマカンスゲ、ハナタデ、ミズヒキ、コアカソ、ミヤマチドメ、オオバタネツケバナ、タチツボスミレ、ナガバノタチツボスミレ、ネコノメソウ、
ドクダミ、ナガバモミジイチゴ、フユイチゴ、ケヤブハギ、ガンクビソウ、フキ、ミズタビラコなどの草本類が見られた。


最終更新日:20th.July.2014

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