ネッコイノデ | Polystichum tagawanum Sa.Kurata f.atrosquamatum (Sa.Kurata) Nakaike |
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低山・林床の植物 兵庫県RDB 要調査種 |
オシダ科 イノデ属 |
Fig.1 (兵庫県篠山市・植林地の林床 2014.7/15) 丘陵〜低山の林床に生育する中型の常緑性シダ。 イノデモドキの1型で、葉柄基部から中軸下部にかけて黒褐色の鱗片が混じるもので、品種とされる。 根茎は短く、直立〜斜上し、塊状となり、鱗片をつける。葉柄は葉身より短く、長さ10〜20cm、密に鱗片がある。 葉柄基部の鱗片は卵状披針形〜披針形、淡褐色のものと黒褐色のものが混じり、光沢はなく、草質、辺縁にはいちじるしく不斉な突起がある。 葉身は狭披針形〜披針形、先は細くなって尾状に伸びる。羽片は線状で、鋭尖頭。 中軸や羽軸の鱗片は線状披針形〜線形、辺縁には不斉な突起が多数あり、淡褐色で、中軸下部では黒褐色の鱗片が混じる。 小羽片は鈍頭〜鋭頭、丸みを帯び、先端は刺状。葉質はやや厚味のある草質、表面はやや光沢があり、淡緑色〜緑色。 ソーラスは小羽片の辺縁寄りにつき、小羽片の基部前側の耳片の上から優先してつく。 包膜はほぼ全縁か、不規則な短い突起がある。染色体数はn=82で4倍。 イノデモドキ(P. tagawanum)は黒褐色の鱗片は混じらないか、基部付近にごく稀に混じる。 イノデ(P. polyblepharum)は葉柄基部の鱗片は大きな卵形で、褐色、縁に毛状突起がある。ソーラスは中間〜やや辺縁寄りにつく。 カタイノデ(P. makinoi)は葉柄基部の鱗片は硬質、披針形で、黒褐色のものが混ざる。ソーラスは中間生。 アイアスカイノデ(P. longifrons)は葉柄基部の鱗片は狭披針形で、黒褐色のものが混ざり、ほぼ全縁。ソーラスは辺縁寄りにつく。 アスカイノデ(P. fibrilloso-paleaceum)は葉柄基部の鱗片は狭披針形で、全縁。中軸の鱗片は線形、全縁で、ねじれる。ソーラスは中間生。 チャボイノデ(P. igaense)はイノデモドキに似るが小型。葉は地表につくように低く開出。鱗片は全て褐色で乾くとねじれる。ソーラスは辺縁寄り。 近縁種 : イノデモドキ、 イノデ、 アイアスカイノデ、 チャボイノデ、 カタイノデ、 サイゴクイノデ、 サカゲイノデ、 ツヤナシイノデ、 ハコネイノデ(雑種)、 ハリマイノデ(雑種)、 フナコシイノデ(雑種)、 ナメライノデ(雑種) ■分布:本州、九州 ■生育環境:低山の林床など。 |
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↑Fig.2 地上部標本。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2014.7/15) 葉柄は短い。葉身は狭披針形〜披針形、先は細くなって尾状に伸びる。 葉質はやや厚味のある草質、表面はやや光沢があり、淡緑色〜緑色。 |
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↑Fig.3 葉柄基部の鱗片。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2014.7/15) 葉柄基部の鱗片は卵状披針形〜披針形、淡褐色のものと黒褐色のものが混じる。 |
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↑Fig.4 基部鱗片の拡大。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2014.7/15) あまり光沢はなく、草質、辺縁にはいちじるしく不斉な突起がある。 |
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↑Fig.5 中軸裏の鱗片。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2014.7/15) 中軸の鱗片は線状披針形〜線形、辺縁には不斉な突起が多数あり、淡褐色。中軸下部では黒褐色のものが混じる。 |
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↑Fig.6 葉先。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2014.7/15) 先は細くなって尾状に伸びる。 |
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↑Fig.7 羽片と小羽片。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2014.7/15) 羽片は線状で、鋭尖頭。小羽片は鈍頭〜鋭頭、最下の一対を除いて幅に対して長さは短く、丸みを帯び、先端は刺状。 ソーラスのつく場所は膨出する。 |
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↑Fig.8 羽片裏面。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2014.7/15) ソーラスは小羽片の辺縁寄りにつき、小羽片の基部前側の耳片の上から優先してつく。 |
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↑Fig.9 ソーラス。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2014.7/15) 包膜はほぼ全縁か、不規則な短い突起がある。 |
生育環境と生態 |
Fig.10 植林地の林床に生育するネッコイノデ。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2014.7/15) 植林地林床の湿った場所に他の多くのシダ類とともに混生していた。 リョウメンシダが優占し、イノデ、ジュウモンジシダ、キヨタキシダ、ヤマイヌワラビ、ハリガネワラビ、ミゾシダなどのシダ類のほか、 ミカエリソウ、ツルニガクサ、タチツボスミレ、シハイスミレ、ヤマトウバナ、ツルアリドオシなどが同所的に生育していた。 |