ハリママムシグサ Arisaema minus  (Serizawa) J.Murata
  山地・林縁の植物 

  環境省絶滅危惧U類(VU)・兵庫県RDB Bランク種
サトイモ科 テンナンショウ属
Fig.1 (神戸市・林縁 2013.4/7)
丘陵〜山地の林縁や明るい林下に生育する多年草。兵庫県固有種。
地下には球茎があり、葉は2枚。葉柄基部は偽茎をつくり、偽茎は全高のおよそ1/2程度と短い。
偽茎基部を包む鞘状葉や葉鞘は淡茶褐色で色が薄く、多少透明感があり、多くは紫褐色の短い条線を散布する。
下葉は上葉よりも大形。葉軸はあまり発達せず、小葉は5〜9個、広披針形から楕円形。
花は3月下旬〜4月で、葉が展開するよりも先に開花する早咲き型(ナガバマムシグサ群の性質)で、葉面より上につく。
仏炎苞は多くは紫色を帯び、半透明で、指が透けて見え、白い条線が明瞭。舷部は短く、内側は平滑。
付属体は細い棒状で、淡緑色、先は少し太くなって棍棒状となり、筒口部から出る。

近縁種 : コウライテンナンショウホソバテンナンショウカントウマムシグサアオテンナンショウムロウテンナンショウキシダマムシグサ
        ヤマトテンナンショウヒロハテンナンショウセッピコテンナンショウ、 オオマムシグサ、 ミミガタテンナンショウムサシアブミ

■分布:本州(兵庫県)
■生育環境:丘陵〜山地の林縁、やや明るい林下など。
■花期:3月下旬〜4月

Fig.2 早咲き型のハリママムシグサ。(神戸市・二次林林床 2013.4/7)
  開花期は3月下旬〜4月と早く、葉が展開するよりも先に、花が開く。花は葉面よりも上に出る。
  このような性質はミミガタテンナンショウ、タカハシテンナンショウなどナガバマムシグサ群に共通する性質だという。

Fig.3 偽茎は全高のおよそ1/2程度。(神戸市・植林地林床 2013.4/7)
  偽茎は花茎とそれを取り巻く葉鞘、さらに外側を包む鞘状葉からなる。
  画像の個体は基部に、球茎上部に形成された子球から発芽したと見られる幼植物が見られる。

Fig.4 ムロウテンナンショウとの偽茎比較。(神戸市・二次林林床 2013.4/7)
  ハリママムシグサの葉鞘は色が薄く、ムロウテンナンショウのような白斑部がまとまったいわゆる「マムシ柄」は不明瞭。
  また、ハリママムシグサは短い紫褐色の条線を散布するものが多い。

Fig.5 鳥足状に展開した葉。(神戸市・林縁 2013.4/7)
  葉は成熟個体では普通2枚つき、第1葉は大きく、第2葉よりも上につき、葉軸はあまり発達しない。
  小葉は広披針形〜楕円形、葉縁は全縁〜鋸歯縁まで様々。また、中肋周辺に白い斑紋が出るものも多い。

Fig.6 仏炎苞。(神戸市・林縁 2013.4/7)
  仏炎苞は多くは紫色を帯び、半透明で、指が透けて見え、白い明瞭な条線が多数ある。舷部は短い。

Fig.7 付属体と舷部内側。(神戸市・二次林林床 2013.4/7)
  付属体は棒状で、先はややふくらんで棍棒状となり、淡緑色で、ふつう筒口部から長く突き出す。
  仏炎苞の舷部内側には乳頭状突起はなく、平滑で光沢がある。

Fig.8 果実形成期。(神戸市・植林地林縁 2011.5/30)
  草体は開花期よりもかなり大きくなり、花穂はふくらんで、多数の液果を密につけ、液果は熟すと赤くなる。

Fig.9 発芽後2〜3年の若い個体。(神戸市・二次林林床 2013.4/7)

Fig.10 基部付近から発芽した幼植物。(神戸市・二次林林床 2013.4/7)
  Fig.3と同様、球茎から分球した子球から発芽したものだと思われる。

生育環境と生態
Fig.11 二次林の林縁に生育するハリママムシグサ。(神戸市・林縁 2013.4/7)
林縁の被植の少ない場所に生育している。左がハリママムシグサで、右の筆状の芽を出しているのはムロウテンナンショウ。
周辺はコナラの多い二次林で、ハリママムシグサの周りではナガバノタチツボスミレ、アキノタムラソウなどが生育していた。

Fig.12 二次林の林床に生育するハリママムシグサ。(神戸市・二次林林床 2013.4/7)
二次林が発達した丘陵の谷の平坦部にハリママムシグサが点在していた。
ここでも被植は少なく、同所的に見られたのは、ナガバノタチツボスミレ、シハイスミレ、ウバユリ、ミツバアケビ、ノアザミなどの小型の草本や
若い個体ばかりだった。


最終更新日:11th.May.2013

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