ヤマトテンナンショウ Arisaema longilamanum  Nakai
  山地・林床・林縁の植物 サトイモ科 テンナンショウ属
Fig.1 (京都府・渓流畔の林床 2015.6/4)

山地の林縁や林下に生育する多年草。
偽茎は淡褐色で斑がある。葉は(1〜)2個で、7〜17枚の小葉を鳥足状につけ、葉軸は発達する。
小葉は披針形〜長楕円形で、鋭尖頭、全縁または鋸歯があり、しばしば中脈に沿って白斑が入る。
仏炎苞は葉よりいちじるしく遅れて展開し、葉よりも高い位置につき、筒部は4〜6.5cm、緑紫色を帯びた白色。
口辺部は狭く開出し、舷部は長3角形、濃紫色、長さ6〜15cm、やや下向きに真っ直ぐ伸び、内面の脈がいちじるしく隆起する。
付属体は細い円柱状で、黒紫褐色、先端の幅2〜5mm、上部は前に曲がる。

近縁種 : キシダマムシグサアオテンナンショウコウライテンナンショウムロウテンナンショウカントウマムシグサ、 オオマムシグサ、
        ヒロハテンナンショウセッピコテンナンショウミミガタテンナンショウハリママムシグサユキモチソウムサシアブミ

■分布:本州(長野、岐阜、愛知、三重、和歌山、奈良、京都)
■生育環境:山地の林縁、やや明るい林下など。
■花期:5〜6月

Fig.2 基部の鞘状葉。(京都府・渓流畔の林床 2015.6/4)
  基部の膜質の鞘は褐色、模様(マムシ柄)は見られない。

Fig.3 偽茎。(京都府・渓流畔の林床 2015.6/4)
  偽茎は褐色を帯び、マムシ模様がある。とくに第1葉の葉鞘が包む下方は顕著である。

Fig.4 葉。(京都府・渓流畔の林床 2015.6/4)
  葉は(1〜)2個で、7〜17枚の小葉を鳥足状につけ、葉軸は発達する。

Fig.5 小葉。(京都府・渓流畔の林床 2015.6/4)
  小葉は披針形〜長楕円形で、鋭尖頭、全縁または鋸歯があり、しばしば中脈に沿って白斑が入る。

Fig.6 横からの仏炎苞。(京都府・渓流畔の林床 2015.6/4)
  仏炎苞は葉よりいちじるしく遅れて展開し、葉よりも高い位置につき、筒部は4〜6.5cm、緑紫色を帯びた白色。
  口辺部は狭く開出する。舷部は長3角形、濃紫色、やや下向きに真っ直ぐ伸びるが、画像のもは先が反っていた。
  筒部下端の合わせ目の部分に隙間(送粉昆虫の脱出口)が見られ、この花が雄花であると解る。

Fig.7 舷部内側と付属体。(京都府・渓流畔の林床 2015.6/4)
  舷部の内側は筒部内面とともに、脈がいちじるしく隆起して特徴的である。
  付属体は細い円柱状で、口部から長く出て、黒紫褐色、先端の幅2〜5mm、上部は前に曲がる。

Fig.8 雄花序。(京都府・渓流畔の林床 2015.6/4)
  雄花は花序軸に直接付いているように見え、小花柄はごくごく短い。雄花は紫色の合着した葯4〜数個からなる。
  付属体の下端は「返し」のような構造となり、訪花昆虫がすんなりと出ることを妨げる。付属体の柄には紫条が見られた。

生育環境と生態
Fig.9 渓流畔の林床に生育するヤマトテンナンショウ。(京都府・渓流畔の林床 2015.6/4)
深い谷間に植林地が続く山間奥地の渓流畔の林床にヤマトテンナンショウがひっそりと生育していた。
例にもれず、ここでもシカの食害が激しいが、テンナンショウの仲間は食害に遭わずあちこちに点在していた。
この谷だけでもキシダマムシグサ、オオマムシグサ、ムロウテンナンショウ、ヤマトテンナンショウの4種が生育している。
京都府ではヤマトテンナンショウの自生地はこの周辺に限られ、絶滅寸前種に指定されている。
ここへは、お忙しく、かつ体調もあまり優れないところを、光田先生自ら阻道をハンドルを握られ案内して下さいました。
例年よりも開花がかなり早かったようで、ほぼ全ての花が枯れていて、諦めて帰りかけたところでこの個体が待っていてくれました。
暗くて風もあり、撮影のコンディションはあまり良くありませんでしたが、なんとか粘って細部を撮ることができました。
おかげで思い出深いページとなりました。案内して頂いた光田先生には感謝申し上げます。


最終更新日:8th.July.2015

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