キシダマムシグサ (ムロウマムシグサ) | Arisaema kishidae Makino ex Nakai | ||
山地・林床・林縁の植物 兵庫県RDB Cランク種 | サトイモ科 テンナンショウ属 |
Fig.1 (神戸市・林縁 2015.4/29) |
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Fig.2 (神戸市・植林地の林床 2015.4/21) 山地の林縁や林下に生育する多年草。 葉は(1〜)2個で、5〜7(〜9)枚の小葉を鳥足状につける。 頂小葉は倒卵形または長楕円形で、鋭尖頭、長さ5.5〜25cm、全縁または鋸歯があり、しばしば中脈に沿って白斑が入る。 花柄は長さ4〜9cm。仏炎苞は葉より早く展開し、汚紫褐色、ときに細かい紫斑をつけ、口辺部は少し開出し、長さ14〜25cm、うち筒部は4〜8cm。 舷部は卵形、先はしだいに細まって糸状に伸び、筒部の2倍以上の長さになる。 付属体は棒状または棍棒状で、濃紫色〜紫褐色、長さ30〜70mm、先端の幅2〜6mm。付属体の先は筒口部から長く突き出る傾向がある(平均10mm)。 雌株では花梗(下葉の葉鞘口部から花柄上端)の長さが、葉柄(葉鞘口部から葉下端)に較べて短くなる。 近縁種 : ヤマトテンナンショウ、 アオテンナンショウ、 コウライテンナンショウ、 ムロウテンナンショウ、 オオマムシグサ、 カントウマムシグサ、 ヒロハテンナンショウ、 セッピコテンナンショウ、 ミミガタテンナンショウ、 ハリママムシグサ 、 ユキモチソウ、 ムサシアブミ ■分布:本州(東海〜近畿地方) ■生育環境:山地の林縁、やや明るい林下など。 ■花期:4〜5月 |
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↑Fig.3 基部の鞘。(神戸市・植林地の林床 2015.4/21) 基部の膜質の鞘は紫褐色を帯び、明瞭な濃色の模様(マムシ柄)がある。 |
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↑Fig.4 葉。(神戸市・林縁 2015.4/29) 葉は(1〜)2個で、5〜7(〜9)枚の小葉を鳥足状につける。頂小葉は倒卵形または長楕円形で、鋭尖頭。 |
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↑Fig.5 葉の変異:小葉の縁に鋸歯のあるもの。(神戸市・林縁 2015.4/29) |
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↑Fig.6 葉の変異:小葉の中脈に沿って白斑の入るもの。(西宮市・林縁 2015.5/24) |
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↑Fig.7 葉の変異:ごく細かいカスリ状の白斑を全面に散布するもの。(西宮市・林床 2015.5/24) |
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↑Fig.8 仏炎苞。(神戸市・林縁 2015.4/29) 仏炎苞は汚紫褐色、ときに細かい紫斑をつけ、舷部は卵形、先はしだいに細まって糸状に伸び、筒部の2倍以上の長さになる。 このような舷部の先が糸状に長く伸びるものは、近畿地方では他にアオテンナンショウがあるが、仏炎苞の色で区別がつく。 |
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↑Fig.9 横からの仏炎苞。(神戸市・林縁 2010.5/21) 口辺部は少し開出し、筒部の基部は粉白を帯びるものが多い。付属体の先は筒口部から長く突き出る傾向がある。 |
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↑Fig.10 舷部の内側。(神戸市・植林地の林床 2015.4/21) 舷部の内側は平滑で、白色の縦条が目立つ。 |
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↑Fig.11 付属体の上部。(神戸市・植林地の林床 2015.4/21) 付属体は棒状または棍棒状で、紫色の細かい模様が見られた。兵庫県産のものは先がふくらまない傾向がある。 |
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↑Fig.12 雌花序と雌花。(神戸市・植林地の林床 2015.4/21) 付属体の下端は少し広がる。付属体の柄や花序軸は濃赤紫色。子房は緑色で、柱頭には微細毛がある。 |
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↑Fig.13 小さな個体は雄株となる。(神戸市・植林地の林床 2015.4/21) |
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↑Fig.14 雄花序。(神戸市・植林地の林床 2015.4/21) 雄花はごく短い小花柄に合着した4個前後の葯が直接つく。葯は紫色。 |
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↑Fig.15 果実形成期。(西宮市・雑木林の林床 2014.10/19) |
生育環境と生態 |
Fig.16 植林地の林床に点在するキシダマムシグサ。(神戸市・植林地の林床 2015.4/21) 間伐や下刈りなどの管理の行き届いた植林地の林床にキシダマムシグサが点在していた。 兵庫県ではキシダマムシグサは六甲山地を中心として兵庫県南東部に自生地が点在しているのが特徴である。 この自生地では林床にアリマイトスゲが優占し、セリバオウレン、ヤブコウジ、アリマウマノスズクサ、ナガバモミジチゴ、クロモジ幼木、 ヒサカキ幼木が生育する環境で数株のキシダマムシグサが見られた。 |
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Fig.17 雑木林の林縁に生育するキシダマムシグサ。(神戸市・林縁 2015.4/29) 主に落葉広葉樹からなる雑木林の山腹の林縁から林床にかけて、多数のキシダマムシグサが生育していた。 河川に面した適湿な環境で、クマワラビ、オクマワラビ、ヤブソテツ、ハクモウイノデ、コタニワタリ、ミゾイチゴツナギ、チヂミザサ、 ニシノオオタネツケバナ、ヤブジラミ、ミツバ、コハコベ、ナガバノタチツボスミレ、アオイスミレ、ヤブヘビイチゴ、ヤマブキ、スイカズラ ムラサキケマン、アキチョウジなどとともに生育している。 |
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Fig.18 林縁斜面に生育するキシダマムシグサ。(西宮市・林縁 2015.5/24) 流紋岩質の転石の林縁斜面の下部で、5月下旬に開花しているキシダマムシグサが見られた。 転石間からはひんやりとした空気が流れ出ていて、タチツボスミレ、ニシノオオタネツケバナ、ヒメレンゲ、ムラサキケマン、ミヤマキケマンなどの 4月に開花の見られる草本類が未だに開花中で、冷たい空気のために開花がこの時期になったようだった。 周辺にはクマワラビ、オクマワラビ、ハクモウイノデ、トラノオシダ、カラクサシダ、オシャグジデンダ、アリマイトスゲ、イトスゲ、ホガエリガヤ、 コチヂミザサ、ミゾイチゴツナギ、ヌカボシソウ、セントウソウ、ヒメヨツバムグラ、オオバノヨツバムグラ、ナンバンハコベ、ナツトウダイなどが 生育しており、西宮市でもここだけにしか生育していない種が数多く見られる。 |