カントウマムシグサ
  (ムラサキマムシグサ・アオマムシグサ)
Arisaema serratum  (Thunb.) Schott
  山地・林床・林縁の植物  サトイモ科 テンナンショウ属
Fig.1 (兵庫県篠山市・植林地の林床 2014.5/20)

Fig.2 (兵庫県篠山市・植林地の林床 2015.5/8)

山地の林縁や林下に生育する多年草。形態的変異に富む。
葉は(1〜)2個で、偽茎は高さ30〜80cmで、葉柄部よりも長い。小葉は7〜17個、軸は湾曲または旋回する。
最大の小葉は卵状長楕円形〜長楕円形で、長さ10〜20cm、幅3〜10cm、全縁または鋸歯がある。
花茎は長さ10〜20cm、典型品では葉柄部と同長か長いが、特に雄株では短いものがかなり見られる。
仏炎苞は葉と同時か遅れて展開し、暗紫色〜緑色、長さ5〜6.5cm、白条があり、口辺部はやや広く反り返る。
舷部は卵形、長さ7〜12cm、前に曲がって筒口部を覆う。
付属体は棍棒状で、筒口部から突出し、帯紫色〜白色、先はふつう太くなって頭状となるが、その太さの程度には変異が多い。

近縁種 : オオマムシグサ、 ハリママムシグサミミガタテンナンショウコウライテンナンショウムロウテンナンショウ
        アオテンナンショウキシダマムシグサヤマトテンナンショウヒロハテンナンショウセッピコテンナンショウユキモチソウムサシアブミ

■分布:本州、九州
■生育環境:山地の林縁、林下など。
■花期:4〜6月

Fig.3 基部の鞘。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2015.5/8)
  基部の膜質の鞘は淡褐色、濃色の模様(マムシ柄)はやや不明瞭で、ほとんど模様の見られないものもある。

Fig.4 偽茎部。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2015.5/8)
  偽茎は高さ30〜80cmで、葉柄部よりも長い。
  林床に生育するものは偽茎の色が淡く、マムシ柄も弱いものが多いが、日当たり良い場所では紫褐色を帯び、模様もやや明瞭となる(Fig.8参照)。

Fig.5 葉。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2015.5/8)
  葉はふつう2個つき。小葉は7〜17個、鳥足状につき、葉軸は発達して湾曲または旋回する。
  最大の小葉は卵状長楕円形〜長楕円形で、長さ10〜20cm、幅3〜10cm、全縁または鋸歯がある。

Fig.6 小葉が鋸歯縁のもの。小型個体に多い。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2015.5/8)

Fig.7 開花直前の個体。花は葉と同時か遅れて展開する。(兵庫県篠山市・植林地の林縁 2013.4/25)

Fig.8 開花した雌株。(兵庫県篠山市・植林地の林縁 2013.5/13)
  花茎は長さ10〜20cm、典型品では葉柄部と同長か長いが、特に雄株では短いものがかなり見られる(Fig.2参照)。

Fig.9 仏炎苞。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2015.5/8)
  仏炎苞は暗紫色〜緑色、長さ5〜6.5cm、白条があり、口辺部はやや広く反り返る。
  舷部は卵形、長さ7〜12cm、前に曲がって筒口部を覆う。付属体は棍棒状〜頭状で、ふつう筒口部から突出する。

Fig.10 仏炎苞の色のバリエーション。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2015.5/8)
  仏炎苞の色は暗紫色のもの(ムラサキマムシグサ・タイプ)から、緑色のもの(アオマムシグサ・タイプ)まで様々である。

Fig.11 付属体のバリエーション。細いもの(左)から順に。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2015.5/8)
  付属体は帯紫色〜白色、先はふつう太くなって頭状となるが、その太さの程度には変異が多い。ここでは径4〜12mmの変異幅が見られた。

Fig.12 雄花序。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2015.5/8)
  雄花はごく短い柄に合着した3〜多数の葯が直接つく。葯はふつう紫色。仏炎苞が緑色のものでは、葯は黄白色となる。

Fig.13 雌花序。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2015.5/8)
  雌花は肉穂花序に多数が密につく。子房は緑色。柱頭には微細毛がある。

Fig.14 果実。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2014.10/24)
  果実は液果で、秋に赤橙色に熟し、中に数個の種子がある。果実期に訪れると、茎はすでに倒伏して林床に果穂が転がっていた。

Fig.15 若い個体。(兵庫県篠山市・林道脇 2015.5/8)

-------------------------カントウマムシグサの変異のバリエーション-------------------------
  カントウマムシグサは形質が安定していない物の寄せ集め的なところがあり、変異に富む。
  以下にそのような変異のバリエーションを列記してみた。
Fig.16 日当たりよい場所で群生するもの。(兵庫県篠山市・林道脇 2015.5/8)
  草体は80cmほどで大きく、偽茎はしっかりしており、葉状苞や偽茎の模様も明瞭なもの。

Fig.17 仏炎苞と付属体が強く赤紫色を帯びるもの。(兵庫県篠山市・林道脇 2015.5/8)

Fig.18 葉軸の旋回がいちじるしいもの。(兵庫県篠山市・林道脇 2015.5/8)

生育環境と生態
Fig.19 植林地の林床にムロウテンナンショウと混生するカントウマムシグサ。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2015.5/8)
間伐の行き届いた比較的明るい植林地の林床にカントウマムシグサとムロウテンナンショウが混生している。
林床は適湿でベニシダ、キノクニベニシダ、ホソバナライシダ、ホソバイヌワラビ、ヤマイヌワラビ、ミヤマカンスゲ、タチシオデ、ヤブミョウガ、ミヤマフユイチゴ、
ミヤマカタバミ、ハグロソウ、トチバニンジンが多く見られ、付近では比較的稀なエナシヒゴクサ、タマツリスゲなどが生育している。


最終更新日:27th.June.2015

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